◆講師:熊谷達也(直木賞・山本周五郎賞作家)
◆コーディネーター:池上冬樹(文芸評論家)
◆ゲスト:金子亜規子(角川書店)
あき あゆむさん『アマゾーン陥穽の罠』
門間伸吾さん『擦れ違う愛情』
大槻佳宏さん『等級零 面接官』
今回の講師は仙台在住の直木賞作家の熊谷達也先生でした。
(真剣に話される熊谷先生)
ゲストは角川書店編集部の金子亜規子さん。
まずは、金子さんが担当された2冊の本の紹介から始まりました。2月に文庫化された新世代の戦争小説『群青に沈め』(角川文庫。解説は池上冬樹氏)と、同じく『群青に沈め』路線の戦争文学『翼に息吹を』(角川書店3月刊行)で、熊谷さんも書いていて手応えを感じた会心の作品とのことです(講座終了後にさっそく買わせていただきました)。
(本の紹介をされる金子さん)
熊谷さんといえば、バンド活動も有名です。マイク片手に、新刊紹介のあとは、5月21日に行われるライブの宣伝でした。小説と同じくらい、音楽が先生の中で重要な位置にあるのでしょう。
今回のテキストは、以下の三編でした。
『アマゾーン陥穽の罠』(あき あゆむ さん)
ホテルを舞台とした支配人の座を争いの話。職業小説として面白いが短い、魅力的な登場人物がいるのにあまりでておらず勿体ないという評価がありました。この話の中一番の問題として話題に上がったのが視点です。この作品では十数回視点の転換があり、読みづらさの原因となっています。海外小説では多い書き方ですが日本では気をつけたほうがいいようです。
『すれ違う愛情』(門間 伸吾 さん)
結婚して二年間、夫によって家に監禁されている妻の話。設定として現実的な話ではないのではないか、妻が夫の異常性を意識していないのではないかといった受講生の意見がありましたが、先生方からはヒロインである妻こそ異常(夫のDVにより感覚がおかしくなっている)。ヒロインの異常さや心理状態をもっと書くべき、という話がありました。
(作品の長所や欠点を指摘される池上先生)
『等級零 面接官』(大槻 佳宏 さん)
長編の一部(八分の一くらい)。事実を書いた自伝的小説。長編の一部だったせいか話が掴みづらいものでした。経験をただ書くのではなく読ませるようにするための加工が必要。フィクションとして作りこむ部分を出していく必要がある、とのこと。また作品内に伏せ字が多い点に関しては、仮名を使い物語を膨らませるべきとのことでした。
休憩を挟み、熊谷先生は視点についてさらに詳細に講義してくださいました。一人称一視点、三人称一視点、三人称多視点をカメラに例えて説明くださいます。視点の整理がされていないと読者がついていけなくなります。小説を書く際、誰のどういった視点で書くかを決めることは重要な作業の一つだと思います。それぞれの特徴を理解し、作品にあった視点を決めることがいかに大切かということをあらためて考えさせられました。
(視点について、図で解説される熊谷先生)
ところで熊谷先生のライブは5/21にパークスクエアで行われるそうです。
念のため、再度宣伝を☆(ルポ担当=N・K)
※大震災の影響で、講座ルポの掲載が遅れました。お詫びします。