第9回新産業酵母研究会講演会

第9回新産業酵母研究会講演会

日時:平成27年5月15日(金) (14:00から)

会場:産総研:臨海副都心センター

別館(バイオ・IT総合研究棟)11階 会議室

〒135‐0064 東京都江東区青海2‐4-7 電話:03‐3599‐8001

連絡先:

(独)農業環境技術研究所 北本宏子・渡部貴志

mincy-ml@ml.affrc.go.jp

電話 029-838-8355

(メールにて参加申し込みして頂きたくお願いします)

入構登録のため 〆切り2015年5月8日(金)厳守

プログラム

14:00~15:00

「クリプトコッカスによる酵素生産技術」

正木和夫、家藤治幸(酒類総合研究所)

酒類総合研究所で単離された担子菌酵母クリプトコッカス sp. S-2(Cryptococcus sp. S-2; 以下S-2株) は、生デンプンを分解するアミラーゼを分泌生産する酵母として単離された。その後、それぞれの条件下で好酸性キシラナーゼ、好酸性セルラーゼ、リパーゼ(プラスチック分解酵素:Cutinase like enzyme (CLE))など多様な酵素を生産することがわかった。どれもユニークな性質を示すが、特にリパーゼ(CLE)はクチナーゼ様の配列、立体構造を有しており、ポリエステルの分解、合成に利用可能であった。我々は、これら酵素研究を通して新規酵母の魅力について紹介する。

次に、この酵母S-2株を用いた新規の遺伝子組換えタンパク質生産の宿主としての開発についても紹介する。これまでにいくつもの遺伝子組換えタンパク質の生産システムが開発されているが、万能なタンパク質生産システムは確立していない。これは、生産されるターゲットのタンパク質またはその遺伝子と宿主酵母細胞との相性によるものだと解釈されている。この相性問題の原因は一つでは無いため、それぞれのケースで個別の解決策が必要である。さらに、発現の難しいタンパク質については、常に解決できる問題ではない。そのような現状において、新たな属種の酵母を用いることで、目的タンパク質発現における相性問題を解決できるのであれば、新規の遺伝子組換えタンパク質生産システムを開発する意義は大きい。ここでは、S-2株を用いた、異種タンパク質生産の可能性について紹介する。

最後に、魅力的な酵素を生産する酵母の育種技術として,上記2つの技術を合わせたS-2株のセルフクローニング技術についても紹介したい。

15:00~16:00

「浴室のカビ汚染実態と煙の力を利用した防カビ製品の開発」

山岸 弘 (ライオン(株)リビングケア研究所)

住環境の中でも、浴室はカビ汚染を受けやすい場所であり、カビは浴室の汚れの中で生活者が最も気にしている汚れである。我々は、カビ掃除に対する生活者の最大の不満である「掃除をしても、すぐに生えてくる」を解消するために、浴室のカビ汚染の原因である「天井のカビ」を対処する効果的な防カビ製品を開発した。

本講演では、浴室のカビに対する生活者意識と汚染の特徴、新しい防カビ技術とマーケティング開発、市場での展開について紹介する。

休 憩

MINCYサロン

16:20~17:05

「担子菌酵母Cryptococcus sp. S-2を用いた診断薬用酵素の組換え生産」

歌島 悠 (東洋紡(株))

臨床検査における「生化学検査」では、血液や尿などの検体由来成分から化学反応、若しくは、酵素反応によって分析が行われる。臨床検査における酵素反応に広く用いられている西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)は、現在その多くが植物から抽出・精製されている。HRPの組換え生産については、さまざまな宿主ベクター系で検討されているが、その生産量は非常に低いことが報告されている。HRPの組換え発現宿主として、担子菌酵母Cryptococcus sp. S-2に注目し、異種組換え発現を検討した。

検討の結果、「コドン最適化」がmRNAのORF内部でのpolyA付加を抑制し、完全長のmRNAの転写において重要であることが判明した。さらに、「シグナル配列の最適化」と「流加培養」により、酵素の生産量を大幅に向上させることが可能となった。発表では、その他のタンパク質発現に関しても紹介したい。

17:05~17:50

「バイオ燃料生産酵母の探索とその特性評価」

谷村あゆみ (京都大学大学院 農学研究科)

植物バイオマス等を原料に作られるバイオ燃料として、バイオエタノールおよびバイオディーゼルが知られている。演者らは、バイオ燃料生産実用化に貢献することを目指し、自然界から分離した酵母の探索を行っている。酵母を用いたバイオ燃料生産では、同時糖化発酵(SSF)による生産技術、特に、グルコースの高効率変換に注目が集まっている。これは、グルコース高発酵性のSaccharomyces cerevisiaeが使用されていることに起因する。一方、基質の分解と糖の発酵の両方が可能な高性能な酵母が獲得できれば、SSFの発展型である一貫バイオプロセス(CBP)を介した低コストバイオ燃料生産が視野に入る。本発表では、高温度帯でグルコースおよびキシロースをエタノールに変換する酵母、Lipomyces starkeyiよりも多くの脂肪酸を蓄積する酵母、多糖からCBPでエタノールや脂肪酸を生産する酵母等について概説する。

17:50~18:10 総会

講演会参加費:会員無料

非会員 一般2000円、学生1000円 (当日会員登録された方は無料)

総会終了後、同会場にて情報交換会を開催いたします(参加費2000円)。