第13回新産業酵母研究会講演会

日時:平成29年5月12日(金) (14:00から)

会場:産総研:臨海副都心センター 別館(バイオ・IT総合研究棟)11階 会議室

  〒135‐0064 東京都江東区青海2‐4-7 電話:03‐3599‐8001 

プログラム

 14:00~15:00

「酵母由来界面活性剤ソホロリピッドの工業的生産と洗浄剤への応用」

  平田 善彦 (サラヤ(株)バイオケミカル研究所) 

当社は“自然派のサラヤ”として、1952年の創業以来、ヤシノミ洗剤など環境適合型の商品を展開している。2001年には酵母が産生する界面活性剤“ソホロリピッド”(SL)の発酵生産および製剤化に成功し、国内初のSLを配合した食器洗い乾燥機用洗剤(商品名:ソホロン)を商品化した。以降、産業利用の観点からSLの生産性向上および特性解明を続けている。本講演では、当社のソホロリピッド(ブランド名:SOFORO)の実用化について紹介する。 

 キーワード:ソホロリピッド,酵母,バイオ洗浄剤

High-Level Production and Application for Household Detergents of Yeast-based Surfactant “Sophorolipid” 

 15:00~16:00

「天然物創薬復権をめざして~ユネスコの文化遺産か?」 

  奥田 徹 ((株)ハイファジェネシス 代表取締役社長・CEO、 東京大学理学系大学院 植物園 客員共同研究員)

多くの企業が天然物創薬から撤退して久しい。抗体医薬全盛時代を迎え、再生医療の未来は輝かしいが、みんなが同じ方向に向くのを私は好まない。株式会社ハイファジェネシス(HGI)は、ニッチ分野の天然物創薬最上流を担うわが国でおそらく唯一のベンチャーである。だから儲かっていない。なぜ天然物創薬が時代遅れになったのか。生物多様性条約の名古屋議定書が2014年に発効し、わが国も間もなく批准する。海外生物資源アクセスが困難となり、2013年アメリカ特許庁の政策変更により、天然物の特許が認められなくなる可能性がある逆境の下、この分野にご興味をもつ方々に向けて天然物創薬の展望と技術的ノウハウを開示し、HGIの戦略とこれまでの微々たる成果についてご紹介したい。

 Natural product drug discovery, toward resurrection before inscription as UNESCO World Heritage 

 Toru Okuda (President & CEO, HyphaGenesis, Inc.、Visiting Scientist, Botanical Gardens, Graduate School of Science, the University of Tokyo)

  It has been long since withdrawals of natural product drug discovery (NPDD) by world-wide major pharmaceutical industry. Antibody drugs are in full bloom now and bright futures of regeneration drugs are awaited, however, I do not like the directions everybody seeks. HyphaGenesis, Inc. is probably the only company involved in the most upstream stages of this niche field in Japan. The company is therefore not profitable. Convention on Biological Diversity was signed in 1992. Japan will soon ratify Nagoya Protocol 2010 that entered into force in 2014, and the new patent policy on natural products by US Patent Office are challenging NPDD. I would thus like to discuss key issues and several tips for possible success in the earlier stages of NPDD for the scientists who are interested in this field. Strategies and results by HyphaGenesis will also be presented.  

 休 憩 

 【MINCYサロン】 

 16:20~17:20 

 「シトクロムP450の多様性とYarrowia lipolyticaのn-アルカン代謝におけるその機能」 

岩間 亮 (東京大学 大学院農学生命科学研究科 応用生命工学専攻、 現・東京工業大学 科学技術創成研究院 細胞制御工学研究ユニット)

シトクロムP450 (P450あるいはCYP)は基質に酸素原子一つを付加するモノオキシゲナーゼ活性を有する酵素であり、還元状態において一酸化炭素と結合することにより450 nmに吸収極大を持つ特徴的な吸収スペクトルを示すことから命名された。P450は生物界に広く保存されたタンパク質であり、非常に大きなスーパーファミリーを形成している。P450の生理機能は極めて多様であり、例えば、動物ではステロールや胆汁酸などの合成に関わるとともに、外来性異物の代謝にも重要な役割を果たしている。

種により数は大きく異なるものの、真菌類においても多くのP450を持つ種が多数見出され、これらのP450が一次代謝、多様な二次代謝に関与することが報告されている。我々はこれまで、n-アルカン資化性酵母Yarrowia lipolyticaに着目し、n-アルカン代謝経路を解析してきた。Y. lipolyticaは17種のP450を有するが、12種がCYP52ファミリーに属する。CYP52ファミリーのP450の一部がn-アルカン代謝に関与することが知られていたが、Y. lipolyticaにおける12種のP450のそれぞれがどのような機能を有するのか明らかにされていなかった。

本発表では、P450の機能と多様性について概説した後、Y. lipolyticaが持つ12種のP450の機能に関する我々のこれまでの研究成果を紹介したい。 

 17:20~18:00

「酵母Kluyveromyces marxianusの性質を利用した効率的な遺伝子操作法とその応用」 

鎗水 透 (農研機構 農業環境変動研究センター)

  酵母K. marxianusは、PCRで増幅されたDNA断片をそのまま導入するだけで組換え体が得られる。これは、非相同末端結合の活性によるものであることが示唆された。非相同末端結合とは、染色体を修復する機構の一つであり、DNA分子の末端同士を配列とは無関係に接続する。この性質を利用して、in vitroでのDNA分子の切断や接続の手間を減らし、in vivoで、手に入れたいDNA配列を効率的に作製・選抜する手法を開発した。さらに、この手法を応用して、酵母で機能の高い分泌シグナルとはどのような配列であるのかを調べた。 

18:00~18:20

総会

 講演会参加費:会員無料 非会員 一般2000円、学生1000円

(当日会員登録された方は無料) 総会終了後、同会場にて情報交換会を開催いたします(参加費2000円)。

連絡先:農業環境技術研究所 北本宏子・産業技術総合研究所(産総研) 森田友岳

mincy-ml@ml.affrc.go.jp 電話 029-838-8355

(メールにて参加申し込みして頂きたくお願いします。)

*入構登録のため〆切り2017年5月8日(月)正午厳守