設立趣旨

「新産業酵母研究会」の設立趣旨

酵母は微生物利用産業において主要な役割を果たしてきました。特にSaccharomyces属の酵母は酒類醸造など食品産業において広く用いられてきました。さらにS. cerevisiaeおよびSchizosaccharomyces pombeは真核生物のモデル細胞としても遺伝学、分子生物学などの研究対象として生物学の発展に大きく貢献してきました。一方、Saccharomyces属以外の酵母については現在までに約100属余が報告されており、それらの中には例えば油脂生産酵母、界面活性剤生産酵母、生分解性プラスチック分解酵母など産業利用の可能性が高い有用形質を有するものも多く見られ、さらに今後も新種とそれに伴う有用形質の発見が期待されております。

一般に酵母は世代の大部分を単細胞ですごすため他の真核微生物に比べゲノム解析、遺伝子操作が容易であることから逆遺伝学的研究が可能であり、そのため改良育種しやすいなどの大きな利点あります。さらに遺伝子組換えの宿主としてもタンパク質輸送系のオルガネラが発達しているため異種タンパク質の分泌生産に適するなどの原核微生物には見られない優れた特徴を備えております。また培養に際しても細菌に比べウィルス汚染が少ない、細胞が比較的堅牢である、菌体を回収しやすいなどの長所があります。このような多くの特長をもつ酵母を駆使した有用物質生産によって環境、エネルギー、医療等が抱えている課題を解決するための基礎から応用までの幅広い研究が求められております。

そこでこれらを背景に此の度「新産業酵母研究会」を設立することとなりました。本研究会では産業利用に大きな可能性をもつ酵母について多方面からの会員相互の情報交換と産業利用への展開を主な目的としております。すなわちゲノム解析およびプロテオーム解析を機軸にして、特にいわゆるnon-conventional yeastsについては有用形質の探索とその発現機構の解明と高度利用に、またSaccharomyces属については例えばバイオプラスチック用乳酸の生産に見られるような異種遺伝子発現のツールとした有用物質の生産に、ひいては微生物利用産業の次世代を築く礎となることを目指しております。

本研究会の趣旨をご理解いただき酵母をはじめ微生物利用に関心をお持ちの研究者、技術者の多数のご参加をお待ちしております。

平成23年5月12日

発起人代表:高木正道(新潟薬科大学長)

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