第19回新産業酵母研究会講演会

第19回新産業酵母研究会講演会

日時:2021 年 5 月 14 日(金)(14:00 から)

Zoom によるオンライン配信

講演会参加費: 無料

プログラム

14:00~15:00

「菌と植物の共生・共存に関する分子 –マコモタケとフェアリーリング–」

  河岸洋和 (静岡大学グリーン科学技術研究所)

 私は「天然物化学」を専門にして菌類特にキノコの研究を行ってきた。本講演では,2つの例を紹介する。

1)マコモタケ

イネ科の植物マコモ(Zizania latifolia)に黒穂菌の一種Ustilago esculentaが感染すると茎が肥大化する。その共生(共存?寄生?)体は「マコモタケ」と呼ばれ,アジアの諸国では食用として用いられてきた。最近で は,我が国においても栽培されるようになってきた。我々のマコモタケに関す る多方面からのアプローチを紹介する。

2)フェアリーリング

 芝生が輪状に周囲より色濃く繁茂し、後にキノコが発生する現象をフェアリーリングという。西洋の伝説では,妖精が輪を作りその中で踊ると伝えられている。その妖精の正体(芝を繁茂させる原因)は謎であったが,我々はその正体(植物成長促進物質)を明らかにした。その発見の経緯とその後の研究の進展について紹介する。

   

Molecules related to symbiosis or coexistence of fungi and plants –makomotake (Zizania latifolia infected with Ustilago esculent) and fairy rings– 

Hirokazu Kawagishi(Research Institute of Green Science and Technology, Shizuoka University)

15:00~16:00

「耐浸透圧酵母によって生産されるエリスリトール中の不純物分析」

𠮷川 潤(東京農業大学 応用生物科学部 醸造科学科)

エリスリトールは四炭糖の糖アルコールであり、虫歯の原因とならない非う蝕性で、インスリンの分泌を刺激しないうえ、0 kcal/gの表記が認められている機能性糖類である。その甘味度は砂糖の約75 %ですっきりとした切れの良い甘さを示し、様々な食品用途で利用されている。エリスリトールの生産は耐浸透圧酵母によって高濃度グルコース条件下でなされ、演者が所属していた日研化学株式会社ではTrichosporonoides (現Moniliella) megachiliensisを用い、1990年に世界で初めて工業生産に成功した。演者は事業の終盤に入社し、エリスリトール製品ならびに精製過程における不純物の分析に関する業務を主に担当していた。したがって本講演では、検討した不純物の検出と除去に関する話と共に、その検討過程で偶然発見したエリスリトールの異性化反応についても紹介する。

Impurity analysis in erythritol produced by osmotolerant yeast.

Jun Yoshikawa

(Department of Fermentation Science, Faculty of Applied Bio-Science, Tokyo University of Agriculture)

休憩 (16:00~16:15) 

MINCYサロン 

16:15~17:00

「糸状菌(麹菌)におけるゲノム編集事情」

織田 健(独)酒類総合研究所 醸造微生物研究部門)

麹菌は、広く産業利用されている糸状菌であるが、交雑が出来ない、多核など の形質から従来の有用育種が適用しにくい。我々は、麹菌に Cas9 をはじめとす る近年のゲノム編集技術を適用し、RNP として直接導入する系及び共ゲノム編集 系を開発した。さらに麹菌の有用 2 次代謝物であるコウジ酸をモデルとして 2 次代謝物生産制御系を構築した。また、さらなる安全性の担保を目指して、大規 模な 2 次代謝クラスター欠失系の構築を図った。本講演では、これらの開発を 通じて麹菌におけるゲノム編集育種での問題点及び糸状菌における最近のゲノ ム編集研究事情をご紹介したい。

Genome editing in filamentous fungi (Aspergillus oryzae)

Ken Oda (National Research Institute of Brewing, Brewing microbiology div.)

17:00~17:30

「CRISPR/Cas9 を利用した担子菌系酵母 Pseudozyma antarctica の高効率相同 組換え」

田中 拓未(農研機構 農業環境変動研究センター)

担子菌系酵母Pseudozyma antarcticaは産業上有用な酵素や糖脂質を生産するが、遺伝子導入時の相同組換え効率が低く、遺伝子操作の難易度が高かった。 ゲノム編集技術CRISPR/Cas9を利用することで、P. antarctica を高い相同組 換え効率で形質転換することが可能となり、担子菌酵母の遺伝子操作における ゲノム編集の有用性が示された。

Efficient homologous recombination in basidiomycetous yeast Pseudozyma antarctica by CRISPR/Cas9

Takumi Tanaka (National Agriculture and Food Research Organization, National Institute for Agro-Environmental Sciences、NARO)

17:30~17:45 

総会

申し込み:(参加申し込みにはメールアドレスが必要です)

下記のアドレス宛に、メールにて、下記の情報をご記入の上、参加申し込みをお願いします。

(参加者氏名、ご所属、電話番号、講演会招待状(URL 等)配送用メールアドレス)

連絡先:

農研機構 北本宏子・産総研 森田友岳

mincy-ml@ml.affrc.go.jp

電話 029-838-8355

〆切 2021 年 5 月 10 日(月)正午厳守