第15回新産業酵母研究会講演会

日時:平成30年5月11日(金) (14:00から) 

会場:産総研:臨海副都心センター  

別館(バイオ・IT総合研究棟)11階 会議室 

〒135‐0064 東京都江東区青海2‐4-7 電話:03‐3599‐8001

プログラム 

14:00~15:00

「メタノール資化性酵母Ogataea minutaによるタンパク質生産技術開発」

千葉 靖典((国研)産業技術総合研究所)

世界の医薬品市場において、ブロックバスター医薬品の半数ほどを抗体医薬品が占めるが、治療用抗体のみならず、サイトカインやワクチン、さらには低分子抗体や抗体代替分子などの様々なタンパク質医薬品が検討・利用されている。酵母はウイルスフリーであり、タンパク質生産能も比較的高いことから、ワクチンの生産などに利用されてきた。今回、我々は民間企業との共同研究により、メタノール資化性酵母Ogataea minutaを宿主とした医薬品用タンパク質の生産系を構築した。本研究で開発された酵母は低メタノールでタンパク質を発現できることから、生産現場においても防爆設備を必要とせず、非常に安全な宿主である。本発表では、宿主の改良に関するこれまでの知見について紹介したい。

15:00~16:00

「黒穂病菌由来の担子菌酵母の有性世代解明とその発展的利用法の可能性」

田中栄爾(石川県立大)

黒穂病菌とは、様々な植物の子房や葉などに黒い粉状の胞子を形成する植物寄生菌である。近年、分子系統解析の発展により黒穂病菌の分類も大きく変化してきた。また、担子菌酵母として知られていた種の一部が黒穂病菌の系統群に含まれることもわかってきた。このような担子菌酵母は、一部の黒穂病菌の無性世代が腐生生活を行うようになったものと考えられる。担子菌酵母として知られていた種の多くはスクリーニングで分離されて有用物質生産などに利用されてきた。もし担子菌酵母の有性世代である黒穂病菌が明らかとなれば、有用な担子菌酵母の菌株を効率的に得られる可能性がある。演者は、野外のイネ科植物に寄生する黒穂病菌類を採集し、黒穂胞子を発芽させて無性世代を分離培養してきた。分子系統解析と生理学的性質を解析した結果、カゼクサの黒穂菌Macalpinomyces spermophorusとイヌビエのMoesziomyces属の黒穂病菌の無性世代が、それぞれ、Pseudozyma tsukubaensisP. antarcticaに相当することが明らかとなった。すなわち、これら2種の黒穂病菌はP. tsukubaensisP. antarcticaの有性世代である。これら有性世代から得られた胞子から増殖した菌株も担子菌酵母として知られていた菌株と同等の有用物質を生産していた。このことから、遺伝的に多様なP. tsukubaensisP. antarcticaの菌株をスクリーニングに頼らずに得ることができるようになった。さらに、このような結果を考えると、これまで担子菌酵母としては知られていなかった黒穂病菌の無性世代も、有用な微生物資源として利用できる可能性が考えられる。

休 憩

MINCYサロン

16:20~17:05

「粗グリセリンからのエリスリトール発酵生産を目指したMoniliella酵母の育種戦略」

東田英毅 ((株)ちとせ研究所 研究開発部、日本技術士会 生物工学部会部会長、 東京工業大学 情報生命博士教育院 産業界若手センター 特定准教授)

Moniliella megachiliensisはグルコースを原料に工業レベルでエリスリトールを生産できる担子菌系酵母の一種である。われわれはホワイトバイオテクノロジーへの展開を図り、原料を廃グリセロールに転換するための技術開発を、菌株の育種改良と培養条件検討の2つのアプローチから進めている。微生物を用いた物質生産において経済性が伴うプロセスの開発には高いハードルがある。このため現時点の試算で最低でも250 g/L以上のエリスリトール生産が可能な菌および生産条件の開発を目指して、戦略的創造研究推進事業ALCAの助成を受けて進めている。

17:05~17:50

「きのこ類の発酵能とそれを利用した発酵食品製造の現状」 

本間 裕人(東京農業大学 応用生物科学部醸造科学科)

発酵食品の製造に利用される微生物は伝統的な食経験により安全性が保証されているが、その種類は、乳酸菌類、麹菌類、そして醸造用酵母などごく一部の菌に限られている。一方、食用きのこ類も古くから食経験があるため安全性が高く、その種類は日本国内に産するものだけでも100種を越え、広い多様性を有している。そのため菌により高いアミラーゼ生産性やプロテアーゼ生産性を持ち、さらにはアルコール発酵が可能な種も存在している。近年、これらきのこ類の発酵能を利用した発酵食品製造の研究が盛んに行われているので、その現状について紹介させて頂く。

17:50~18:15 総会

講演会参加費:会員無料

非会員 一般2000円、学生1000円 (当日会員登録された方は無料)

総会終了後、同会場にて情報交換会を開催いたします(参加費2000円)。

連絡先:農研機構 北本宏子・産業技術総合研究所(産総研) 森田友岳

mincy-ml@ml.affrc.go.jp 電話 029-838-8355

(メールにて参加申し込みして頂きたくお願いします。)

*入構登録のため〆切り平成30年5月7日(月)正午厳守