[裏03]鳥になりたい。

ハトですこんにちは。わかります。鳥の生活いいですよ。ぽぽーって歩いているとゴチサルがパンくずとかくれるし。おなかいぱい。あゴチサルってのは僕らにパンくずをくれるサルのこと。ご馳走さまの敬意を払ってこう呼んでるんだけど、ばれてないか心配だ。そんなお気楽ハトの世界にももちろん勝ち組はいます。ちょっと昔は頭にかっこいい羽とか付けてると最高の勝ち組でした。まぁ飾りがイマイチだと結婚できないとかそれなりに厳しいこともあったようだけど、うまくやった連中はそれはもう至福の毎日だったってじっちゃんが言ってた。え、伝書鳩? あいつらは負けでしょ。そら普段は食べ物に困らないだったみたいだけどねぇ。足に何かぐるぐるまきつけられて「それ!」とかいきなり厳しい大自然に放り出されて家に帰るまで自給自足とかわけわからん。ああいうことするのはゴチサルとはたぶん種類が違う。ニンゲンにも何種類かいるんだろう。

昨今の流行りは象牙の塔。ここはいいらしいよ。やっぱりね。ワイルドに暮らしていると大変なこともあるわけすよ。カラスとか犬とか猫とか襲ってくるし。雨だとゴチサルもあんまりこないし。それが象牙の塔にはゴチサルがうようよいるし、雨風も防げる。気のせいか、雨の日のほうがゴチサルが多いような気すらするよ。その上、万が一のときに身を守ってくれる柵もある。万全完璧。まぁ大空を飛ぶことはできないけど、そんなの小さい小さい。君らだってあれだろ? 三食昼寝つきなら家でゴロゴロしてたいでしょ? おんなじおなじ。せっかく鳥になるなら、ここら辺を狙ってみてはどうでしょう。

もっとも象牙のゴチサルたちはときどき意地悪をするのが玉に瑕。空腹の時をねらってボタン付きの箱に押し込めるんだよね。これがなかなか分かりにくくて、うまい具合にボタンをつつくと食べ物が出てくるんだけど、まちがえると何もくれない。ゴチサル連中は僕らがパズルが解けなくて困るのをみて喜ぶんだよ意地悪。もっとも老鳩連中は、ゴチサルは鳥になりたいから僕らのことを調べているんだって言うけど、どうかなぁ。それも一理ありそうか。鳥って最高だからな。

前に象牙に住む友鳩から教えてもらったのは、大きい丸があったら左、小さい丸だったら右のボタンをつつくってパズル。左右が逆だったかもしんないが細かいことだ気にすんな。それだけならもち簡単ハト舐めるなって話なんだけど、途中から丸の周りにぐるっと他の丸が並べられるんですよ。ゴチサルたちは海老の家とか呼んでるパズルらしいんだけど、この周りに並んだ丸がまぎらわしいんだよなぁ。大きい丸がグルっとしてあるとさ、真ん中の丸がどうしたって大きく見えてくるでしょ鳩的に。それでつい「大きい」ボタンをつついちゃうとぶぶー、食べ物もらえませーん。ああゴチサルが喜ぶ姿がまぶたに浮かぶ!くやしい!

こないだはゴチサルが自分たちで海老の家パズルやってるの見たよ(Witt et al., 2012)。丸い穴を地面にほってさ、まわりに丸をぐるっと並べるの。あれはなんなんだろ。光で丸を描いていたみたい。ああいうハイテクはゴチサルの得意とするところだよね。鳥になるならああいったステキガジェットは諦めてもらう必要がある。そこら辺の覚悟の上で鳥になってくださいね。あいつらクチバシないからボタンをつつけないんで、代わりにちっこいボールをその穴に転がして入れてた。穴が大きいだったらボールを入れて、小さいだったら入れないわけです。せっかく神様がクチバシの代わりに手をくれたのに、わざわざ棒でボールをひっぱたいて転がすあたりがゴチサルの意味不明なとこだが気にしない。どんな動物にだって、その動物なりの事情があることくらいハトだってわきまえてますともええ。きっと手でボールに触ると死ぬとか思ってるんだ。でも悔しいのが海老の家パズルですよ。さすがに自分で作ったパズルだけあってね、連中は周りの丸が大きい時にちゃんと外すの。僕らハトみたいに周りの丸が大きいからって真ん中も大きいなんて勘違いはしない。むしろ真ん中が小さいと勘違いしてるんじゃないかというくらいなんだけど、ハトには検定がないから分かりません。その上最近、イルカとかヒヨコがゴチサル並みにうまくやるって噂があって、ハトのプライドはずたずたですよ。まぁでもヒヨコなんて良くて唐揚げ悪けりゃフライドチキンの将来なわけで、海老パズルができたからってドヤ顔されてもね。やっぱ鳥になるなら鳩が最高でしょう!

「左の赤い丸のほうが大きく見えるでしょ!でも実は2つとも同じなんでしたー ( ̄ー ̄)」(ハト談)