研究公正に関する講演(記録)
私たちがお招きいただいた研究公正に係る講演会の記録です。開催がweb等で周知されたもの、および、研究機関内で実施されたもののうち公開をお許しをいただいたものを記録していく予定です。
2023年12月21日 FD研修会(東京医科歯科大学難治疾患研究所)
「研究公正の推進:オープンサイエンスと実験記録」田中 智之
実験記録の重要性にフォーカスをおいていただきたいという依頼を受けて、再現性がある質の高い研究を行うための基礎である実験記録の重要性についてお話しました。これに関連して、近年のRRIの一環としてのオープンサイエンスの推進の動きについても話題として取り上げました。電子ノートの導入のための準備が、即ちResearch Data Managementの実践ということで、研究者のインセンティブもこれまでよりは強くなっていくのではないでしょうか。
2023年4月16日 政策による科学のゆがみ・研究不正に関するシンポジウム(科学の健全な発展を望む会)
「生命科学領域の研究不正:社会への影響」田中智之
ほとんどの講演では研究公正を推進するポジティブな方向に重点をおいてお話しておりますが、今回は研究不正がいかに社会に影響を与えているか、そしてなぜ軽視されてしまうのかといったことを紹介しました。研究コミュニティが自浄作用を発揮する必要があるのはもちろんですが、研究公正を推進することに政策的なインセンティブを与えることや、メディアが監視することを通じて研究者と社会の間に一定の緊張感が維持されることも大切です。
シンポジウム概要:シンポジウムの主催者は、最近、放射線被曝を扱う論文が、不同意データを用いているという倫理的な問題を理由に撤回されながら、論文に含まれる科学的問題の多くが放置されたまま独り歩きし、除染指針や被ばく規制の行政的判断に影響を与えていることに着目し、科学的問題が正されないままにされる機序を明らかにする査読付き論文を発表しました。なぜ政策等に重大な影響を与えるテーマでこのような問題が起こるのか。そしてそれが知られないままになるのか。ここには、業績をあげる必要性や研究者個人の特性といった視点だけからは十分に捉えることができない、科学と政策や社会との関係の問題が存在します。科学と政策や社会との関係というと、真実を求める科学の中立普遍性とそれを歪める外的要因というかたちで捉えられがちですが、シンポジウム主催者らの論文では、研究コミュニティや学術情報流通メカニズム自体に内在する問題も明らかになっています。
特設ページはこちら(発表資料、動画があります)
2023年3月10日 研究倫理FD研修会(筑波大学)
「研究公正に資する研究環境とは?」田中智之
最近の研究公正の動向、研究評価のリフォーム、CUDOSについて取り上げました。FFPあるいはQRPの問題点をどのように社会に伝えれば良いか、研究評価の見直しは具体的にはどのような手段が考えられるのか、査読の新たな傾向は、といったご質問をいただきました。
2023年1月30日 研究倫理講演会(神戸学院大学薬学部)
「健全な研究活動について考える」田中智之
最近の研究不正、ハゲタカジャーナル、Paper Millといった事例を取り上げ、それらに対して研究コミュニティがどのように取り組んでいるかを紹介しました。また、JSTで進行中のプロジェクトを紹介し、研究者コミュニティで研究公正推進に取り組むことの重要性を訴えました。
2022年12月23日 FD研修会(東京医科歯科大学難治疾患研究所)
「研究公正:研究環境の大きな変化を考える」田中智之
最近の不正の事例、Paper Millなどを取り上げ、論文から不正が発覚する時代から、次第に研究不正が見つけにくくなっている現状について解説しました。後半はそうした現状に対する最近の動き(Slow Science、Open Science)およびScience Europeの"Agreement on Reforming Research Assessment"を紹介しました。研究者がもつ原初のモチベーションを活かすための研究環境を形成することが重要です。
2022年9月12日 コンプライアンス研修(同志社女子大学)
「真っ当な研究活動を推進するために」小出隆規
薬学部の教員および大学院生を対象として、久しぶりに対面ライブで講演ができました。
どんな人が、何のために、どういう風に、FFPやQRPをやってしまうのかについて考えてみました。
「ピッキングしたチェリーを、すばらしいピーチ(p値)とともに、ギフト(オーサー)にする」←これダメよ!など。
2022年3月8日 FD研修会(京都薬科大学)
「科学者の研究倫理 −研究不正の根絶に向けて−」小出隆規
演者自身の経験をふまえ、具体的な事例を参照しながら研究不正発生のメカニズムと対策が議論されました。オンライン開催であったため、参加者と演者との議論が深まるという機会がなく残念でした。
2022年1月24日 第1回共進化セミナー(JST-RISTEX)「研究公正とガバナンスのあり方を問う」
JST-RISTEX「科学技術イノベーション政策のための科学」研究開発プログラムによるセミナーです。各プロジェクトの紹介の発表、およびパネルディスカッションが開催されました。ポスター(PDF)
「ライフサイエンスにおける誠実さの概念を共有するための指針の構築」田中智之 https://youtu.be/_-m4Aw6v-RI
パネルディスカッション:モデレーター:山縣然太朗、パネリスト:上河内茂樹、高柳元雄、飯室聡、中村征樹、田中智之
(前半) https://youtu.be/_-m4Aw6v-RI (後半) https://youtu.be/EGSTDWnQt_w
2021年12月16日 FD研修会(東京医科歯科大学難治疾患研究所)
「研究評価のあり方と研究不正」田中智之
今回は研究評価のあり方の見直しやオープンサイエンスの潮流を取り上げて、研究公正の推進についてお話してまいりました。膨大なデータが要求される「ビッグサイエンス」の問題、査読者が見つからないという過剰な論文の問題について、ご質問いただきました。研究機関のレベルではなかなか解決できないことばかりではありますが、ライフサイエンスはこのままでは立ち行かないという危機感は国際的にも広がっています。
2021年11月26日 研究公正シンポジウム「各研究分野から研究公正の課題を考える」(主催:科学技術振興機構)
「ライフサイエンス領域における研究公正の課題」田中智之
文部科学省の研究公正推進事業の一環として毎年開催されている研究公正シンポジウムに登壇する機会をいただきました。リンク先で発表資料が公開されています。研究慣行は学問領域により異なることから、研究倫理のあり方にも、それぞれの研究領域の特徴があります。一方で、そうした相違に左右されない研究活動に共通した行動規範もあります。ここでは、人文系、生命科学系、理工系からそれぞれ演者が講演し、各分野の特徴および課題を述べました。パネルディスカッションでは、JST社会技術研究開発センター長/大阪大学COデザインセンター特任教授である小林傳司先生をモデレーターとして、今後望まれる研究公正の取り組みについて、様々な観点から意見交換が行われました。オンライン開催でしたが、予想を上回る参加者にお出でいただいたとのことで、研究公正に対する関心が高まっていることを認識しました。
「各研究分野から研究公正の課題を考える」Webサイト
研究公正ポータルの取材リポート
2021年10月7日 FD講演会(北海道大学大学院薬学研究院)
「研究倫理についてみんなで考える」田中智之
北大薬学部の中川真一先生にお声かけいただき、表題の講演と、その後同じくらいの時間でディスカッションがありました。やや、生物系よりになってしまったかもしれませんが、具体的な事例についても意見交換できたことは良かったと思います。学生、大学院生にどう伝えれば良いか、難しい問題ですが、こうした場での議論は研究室での指導にも反映するものと期待しております。The LABの知名度が低かったので、普及活動をしてまいりました。
2021年9月14日 特別講演会(東海大学健康科学研究科看護学専攻およびFD委員会による合同開催)
「研究不正とその背景にあるもの〜研究者・指導者として求められる姿勢とは〜」小出隆規
対面ライブでディスカッションできることを期待していましたが、コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が延長されたため、急遽オンラインでの実施となりました。健康科学研究科看護学専攻、保健福祉学専攻、医学部看護学科、健康学部健康マネジメント学科、医療技術短期大学の教員ら約50名の教職員の方々を対象にFFP,QRPおよびそれらを誘発する要因となる研究者の数値評価などについて話題提供を行いました。看護や福祉にかかわる研究は、ラボでの実験系の研究とは異なる部分も少なくないですが、オーサシップ問題や、生データの保存、研究成果の帰属など、共通する部分も見つかりました。実験系ライフサイエンスでの研究不正に関する経験を発端とした私たちの活動が、看護や福祉分野の先生方にも注目いただいたことは、有難いと思う反面、いやそれ以上に、立ち向かう問題が大きく、それが特定の研究分野に限局されたものではないということに気づきました。
本講演については、同専攻のHP (http://mnwm.ihs.u-tokai.ac.jp/)にも記事が掲載されています。
2021年2月19日 「オープンサイエンス時代の新しい学術出版の動向と研究公正について」(2020年度日本薬学図書館協議会学術シンポジウム)
「学術出版における研究公正の動向について」田中智之
日本薬学会第140年会のシンポジウムが誌上開催となったことを受けて、日本薬学図書館協議会でシンポジウムを企画していただきました。近年の研究不正とその監視、また不正の背景にある研究環境の問題についてお話しました。東京大学の生長幸之助先生の講演を拝聴して、同じ薬学ですがプレプリントの受け止め方にも異なるところがあって興味深かったです。ライフサイエンス領域だとプレプリントでプレスリリースが出るとちょっと警戒してしまいますが、化学の領域だとむしろ早い情報としてウェルカムとのことでした。
2020年12月17日 FD研修会(東京医科歯科大学難治疾患研究所)
「真っ当な研究を考える〜研究(者)をどのように評価すべきか〜」小出隆規
オンラインで実施しました。問題ある研究行為(QRP)の中でも、ギフトオーサーによる業績水増しの問題の根深さについて話しました。また、現役研究者を評価することの難しさと、IFなど数値指標の偏重の弊害についても考えました。QRPを含む研究不正を防止するためには、不正へと駆られる研究者のインセンティブを理解することが重要です。
2020年12月4日 「質の高い研究活動の実施に向けて〜研究者が今、取り組むべきこと〜」(第43回日本分子生物学会年会 フォーラム)
オーガナイザー:池上徹(東京大学)、原田英美子(滋賀県立大学)
「なぜ不正行為に及ぶのか?:メトリクス偏重の弊害」田中智之
Zoomを用いたオンライン企画ですが、60名ほどの参加者がありました。研究不正の動機とはいったい何かということで、近年の状況に続いてメトリクス偏重の研究評価についてお話しました。インパクトファクター、引用数、論文数、こうしたものを大きくしたいというところで無理をすることが不正の要因です。新谷歩先生(大阪市立大学)はアビガンの臨床試験における政治と科学の問題を、松澤孝明氏(AMED)は国際的な研究公正の動きの中の日本の状況を、それぞれ講演されました。興味深い内容で、フロアの方との意見交換の時間が僅かであったことが残念でした。
2020年1月12日 「研究不正と歪んだ科学:STAP細胞事件を超えて」出版記念シンポジウム(大阪大学中之島センター)
主催:一般社団法人カセイケン(科学・技術と政策研究室)、講演:粥川淳二(県立広島大学)、中村征樹(大阪大学全学教育推進機構)、榎木英介(一般財団法人カセイケン)、(コメント)田中智之(京都薬科大学)
出版記念シンポジウムにお招きいただき、「生命科学研究者の目から見たSTAP細胞事件」というタイトルでお話いたしました。研究者育成の問題、シニア研究者の責任、注目されなかった研究不正、「特権的」な研究者の存在、研究機関による調査の限界、という5つのトピックを取り上げました。
2020年1月6日 環境研究倫理特論 特別講演会(滋賀県立大学)
「社会との関係を基盤とした研究活動・研究室運営」安井 裕之
研究活動は研究室という閉じた環境の中で行われているように見えますが、本来は社会とのつながりをベースとした活動であるはずです。社会と研究活動との関係からクローズアップされる研究倫理についてお話しました。
2019年12月16日 FD研修会(東京医科歯科大学難治疾患研究所)
「Good Research Practiceを考える」田中智之
昨年に引き続き、科学研究の再現性問題、学位審査、不正調査に関する話題を取り上げ、研究公正の推進のために有効なラボでの実践についてお話しました。
2019年11月22日 FD講演会(薬学・歯学研究科合同)(愛知学院大学)
「健全な研究活動(Good Research Practice)とは?」田中智之
研究室の主宰者、および若手研究者を対象に、近年のミスコンダクトの事例、研究者のあるべき姿勢、研究室における有効なディスカッションの方法、などについて話題提供しました。
2019年9月19日 サイエンスⅡ特別講義「研究倫理」(京都府立洛北高校、第4期SSH指定校)
「健全な研究活動とは何か?」安井裕之
SSH活動(高大連携)の中で、自ら実験や観察をする高校2年生を対象に、正しく誠実な研究活動を進めるために知っておくべき研究倫理や科学研究のルールについて講演しました。
2019年8月30日 日本薬学会環境・衛生部会、衛生薬学・環境トキシコロジー若手研究者の会(京都薬科大学)
若手研究者へのメッセージ「社会とアカデミアの関係を基盤とした研究活動と研究室運営」安井裕之
将来、ラボを運営するPIを目指す若手研究者を対象に、科学教育と人間教育の伴う指導と支援の両立が大切であることについて講演しました。研究公正はこの中でも重要なトピックのひとつです。
2019年7月17日 学部講義(静岡大学:浜松キャンパス、静岡キャンパスにはネット中継)
「科学者の研究倫理」小出 隆規
研究室配属前の学部学生に対して、あるべき研究とダメな研究について是非知っておいてほしい事柄をお話ししました。青本の章末問題についても一緒に考えました。
「グレーゾーンの研究活動:研究者の責任とは」田中 智之
2019年4月からAPRINの寄付講座として信州大学では公正研究推進講座が設置されています。CITI Japanの時代から研究公正の活動の中心であった信州大学における公開授業にお招きいただきました。研究公正をめぐる様々な話題が各演者から提供されたので、大学院生は消化することが大変だったかもしれません。
2019年6月24日 大学院講義(大阪薬科大学)
「科学者の研究倫理」(薬学倫理特論Ⅰ) 小出 隆規
QRPに重点を置きつつ、どのようなラボは不正が起こりにくく、どんなラボが危険なラボかについて考えました。
「教えて!研究倫理のコモンセンス」(コーディネーター:池上徹(東大医科研)、中田亜希子(東邦大)、掛谷英紀(筑波大))
「健全な研究活動のために:科学者の研究倫理」田中 智之
QRPの事例を取り上げて、研究活動の根幹にある研究者の態度について議論いただく機会としました。