080 別れ1 -決意-
(2001-04-06頃作成、2004-03-16, 2015-06-02頃修正)
あなたと一緒にいるのは苦痛。
そして…、
会話後も、やりきれない想いが残り、
どうしようもない疲労感が心と身体を苛む。
いつからだろう…。
そんなふうになったのは。
昔はあなたの言葉は輝いていた。
下手な比喩かもしれないけれど。
律動的な言葉。凛とした声色。不思議な韻。
あるときは頑なな心のわだかまりを蕩けさせ、
あるときは眠りかけた頭をも瞬時に覚醒させる。
それは御伽噺にでてくる魔法。
限りなく毒舌の時もある。
くらくらとするほどその言葉で私をからかうときもあった。
あるときは身体が痺れるような。
あるときはキュゥと胸が締めつけられるような。
人の言葉が心に影響を与えるのは理解できるけど、
身体にこんなに影響があるなんて
あなたと会うまでは気が付かなかった。
流麗な言葉、そして絶妙の間、
そして伏線か、そうではないのか
分からないほどの妖しげで豊富な話題の数々。
あなたの話を聞いて、いつも笑っていた気がする。
時にはお腹を抱えて笑い、
周りの目がとっても恥ずかしいときもあった。
そう、頬を赤らめて何も言えずに黙ってしまうくらい…。
昔は、そうだった。
今は、…今はどうだろう。
あなたの言葉はあなたの意図に関わらず私を呪う。
あなたの呪詛は数十秒で、
暖かくて、ほのぼのしてのんびりとしてゆるやかな気持ちの良い世界が、
白々しく偽善的なものにシフトする。
空気が重苦しい、そんな感覚、それが比較的近い。
後ろを振り向く、腕を動かす、脚を動かす、それだけでも抵抗がある。
ねっとりとした液体の中でもがくような抵抗感。
見えない束縛が私の周りに張り巡らされる、そんな感覚。
自己を苦しめる束縛でも人は時にそれを失いたくないときがある。
束縛がなければ自分の輪郭が朧気になってしまうからだろうか。
だから敢えて、あなたと別れようと思う。
逃避ではない、新たな一歩を踏み出すために。