東京新聞への要望書

「チェックTPP Q&A」

≪経緯≫

2013年3月18日付の東京新聞「チェックTPP Q&A」との記事について、3月28日付にてFSINから訂正を求める要望書を提出しました。

その後、東京新聞から面談のお申し出をいただき、2013年5月7日、編集局経済部ご担当記者とFSIN会員3名とで面談しましたのでご報告します。

≪FSINからの要望書≫

2013年3月28日

東京新聞 編集局長殿

食品安全情報ネットワーク(FSIN)

http://sites.google.com/site/fsinetwork/

3月18日「チェックTPP Q&A」の記事に関する要望書

食品安全情報ネットワーク(FSIN)は、食品の安全に関する必要な情報を収集し、科学的な立場からこれを検証し、自らも科学的根拠がある情報発信をすべく日々活動している、学識経験者、消費者、食品事業者、メディア関係者等の有志による横断的なネットワーク組織です。

貴紙3月18日、「チェックTPP Q&A 安全基準低下のおそれ」という記事を拝見しましたが、誤った説明がございますので、情報提供および訂正の要望をさせていただきたくご連絡いたしました。

記事では、TPP交渉で予想される争点として、遺伝子組み換え食品、残留農薬、食品添加物基準を例にあげ、このうち、遺伝子組み換え食品については表示制度を安全基準の具体例として挙げて、「日本は遺伝子組み換え食品の身体への影響が読み切れないので、この技術を使った食品の表示を義務付けている」と説明されておりますが、これは事実ではありません。

遺伝子組み換え作物は、安全性評価が義務付けられていて、安全性が確認されていないものは、そもそも流通してはならないことになっています。遺伝子組み換え食品の表示制度は、安全性が確認された遺伝子組み換え作物について、流通する際に消費者の選択や情報提供のために設けられている制度で、安全性の基準とは異なります。

遺伝子組み換え食品の食品としての安全性については、国連食糧農業機関(FAO)・世界保健機関(WHO)の合同食品規格委員会(CODEX委員会)によって示された国際評価基準に基づいて評価されています。米国をはじめ各国もこの基準に基づいて安全性評価を行っております。日本ではこの基準に基づき、内閣府の食品安全委員会が食品としての安全性を評価し、厚生労働省が認可しております。

安全性評価においては、導入された遺伝子と、その遺伝子が作るタンパク質は、胃や腸内で速やかに消化、分解され、体内に蓄積して慢性的、長期的に毒性を及ぼしたり、アレルギーの原因にならないことが確認されています。安全性評価で人体に影響がないと認められた遺伝子組み換え作物だけが、市場に流通することが認められています。

また、食品添加物について、「日本では約八百種類しか使用が認められていないが、米国では三千種類も使うことができる」とありますが、食品添加物の定義や範囲が異なるものを比較して数の違いだけを強調するのは誤解を与えます。認められている数が多いから安全性の基準が緩いということではありません。

FSINでは、過去にも貴紙2011年11月19日「交渉参加TPP Q&A⑤」、2012年9月24日「こちら特報部 食品表示一元化へ」と題する記事で、遺伝子組み換え食品に関連して、今回と同様の解説記事があったことから、編集長宛てにレターをお送りし、情報を提供し、問題を指摘させていただきました。今回のような報道は、安全かどうか分からないものを、消費者自身が表示を見て判断して選ばなければならないかのような誤解と不安を読者に与えるものだと考えます。紙面において訂正し、正しい情報を提供していただきたいと考えます。

貴社のお考えやご対応をぜひお聞かせ願いたく、4月10日までにご回答をいただければと存じます。何卒よろしくお願いいたします。

なお本状は、FSINのホームページ等でも公開いたしますので予めご了承ください。また、情報の公開性を担保するために、貴社のご対応についても公開したいと考えていることも予めお伝えいたします。

なお、NPO法人「くらしとバイオプラザ21」が先ごろ、遺伝子組み換え食品、食品添加物、農薬について、報道関係の皆様に知っていただきたいことを冊子にまとめておりますので、ご参考まで同封させていただきます。

以上

≪記者との面談≫

2013年3月28日にFSINから要望書を送付した結果、東京新聞から面談のお申し出をいただき、2013年5月7日、編集局経済部ご担当記者とFSIN会員3名とで面談しました。

面談では、FSINの活動の趣旨について説明するとともに、先方からのご質問を踏まえ、先に要望書でお伝えした内容のうち、特に①食品添加物の定義や範囲が異なるものを比較して数の違いだけを強調するのは誤解を与えること、②遺伝子組み換え食品は、国際基準に基づき国が法律に基づき評価する仕組みが整備されており、表示制度は選択や情報提供のためで安全性に疑念があるから行われているものではないこと、の2点について詳しく説明し、意見交換を行いました。

①については、問題点をより明確にするため、報道の根拠となった数字を確認していただければ、FSINとしてもそれを踏まえてさらに情報提供する旨お約束しました。

②についてはこちらからの説明内容について了承いただきました。

FSINは3月28日にお送りした要望書において、3月18日付け記事の訂正を依頼しておりましたが、掲載から時間も経過しており訂正は難しいものの、今回FSINが情報提供した内容については今後の参考とするとのご説明をいただきました。

また、面談の時間をつくって誠実に対応してくださったことに感謝し、これからは、必要に応じて専門家を紹介したり、コメントを提供したり、FSINからも協力することを、お約束しました。