月刊TIMES 2018年8月号「TPP11の成立で加速する 遺伝子組み換え食品の恐怖」

2018年9月5日

月刊TIMES 編集人
香村 啓文 様
食品安全情報ネットワーク(FSIN)

月刊TIMES 2018年8月号「TPP11の成立で加速する 遺伝子組み換え食品の恐怖」
と題した記事についての意見書

 食品安全情報ネットワーク(FSIN)は、食品の安全に関する情報を収集し、科学的な立場からこれを検証し、自らも科学的根拠がある情報発信をすべく日々活動している、学識経験者、消費者、食品事業者、メディア関係者等の有志による横断的なネットワーク組織です。

 貴誌「月刊TIMES」(2018年8月号)に掲載された山田正彦氏へのインタビュー記事「TPP11の成立で加速する 遺伝子組み換え食品の恐怖」おいて、下記のような記載があります。しかしこれは事実ではありません。

「遺伝子組み換え作物には、BT毒素を出し、虫がコロッと死んでしまうのがある。葉っぱや花粉まで、BT毒素を出し昆虫が死ぬ。昆虫の腸に穴を空け、虫を殺すと考えられている。そうしたものを人間が食べて、人間の腸は大丈夫か、というとそうではない。腸疾患と遺伝子組み換え作物の作付面積は比例している。腸がやられると頭もやられる。アメリカでは既に3人に1人ぐらいが発達障害だという。日本も10人に1人ぐらいだ」

 遺伝子組み換え作物は、日本でも米国でも安全性評価が義務付けられていて、安全性が確認されていないものは、そもそも流通してはならないことになっています。
 遺伝子組み換え食品の安全性については、国連食糧農業機関(FAO)・世界保健機関(WHO)の合同食品規格委員会(CODEX委員会)によって示された国際評価基準に基づいて評価されています。米国をはじめ各国もこの基準に基づいて安全性評価を行っております。日本ではこの基準に基づき、内閣府の食品安全委員会が食品としての安全性を評価し、厚生労働省が認可しております。 

 安全性評価においては、導入された遺伝子と、その遺伝子が作るタンパク質は、胃や腸内で速やかに消化、分解され、体内に蓄積して慢性的、長期的に毒性を及ぼしたり、アレルギーの原因にならないことが確認されています。

 土壌細菌Bacillus thuringiensis (BT)が作る殺虫タンパク質(BTタンパク質)は酸性にすると分解されます。虫の腸はアルカリ性なのでBTタンパク質は分解されずに作用しますが、ヒトの胃は酸性であるためBTタンパク質は消化されてしまいます。また、ヒトの腸にはBTタンパク質が結合するレセプターがありませんので、たとえ一部が消化されなかったとしても、ヒトで作用することはあり得ません。実際に、BTタンパク質がヒトに対して活性を示したというデータは存在しません。

 最も新しく、かつ包括的な安全性に関する報告書として、全米科学アカデミー、全米技術アカデミー、全米医学研究所は2016年5月17日、遺伝子組み換え作物の安全性を再確認する結論を発表しました。世界中の約900におよぶ試験や研究論文を厳密に検証し、20人以上の科学者、研究者、農業関係者からなる専門家が2年がかりで動物実験結果、アレルギー性についての研究結果に加え、北米およびヨーロッパのヒトの健康に関するデータを精査したものです。全米科学アカデミー、全米技術アカデミー、全米医学研究所による報告書の結論の概要は以下の通りです。

  • 商業栽培されている遺伝子組み換え作物と従来作物の間でヒトの健康リスクに差があるという証拠は認めらない
  • 遺伝子組み換え作物が、自閉症、肥満、がん、胃腸や腎臓の疾患またはアレルギーなどの健康被害となる証拠は認められない

 日本は年間約1,600万トンの遺伝子組み換え作物を輸入、消費しており、トウモロコシについては世界第2位の消費量ですが、1996年から20年以上にわたる輸入において、健康被害は確認されておりません。

 なお、記事では日本の遺伝子組み換え作物の承認件数について「政府の承認件数が309件になっている。TPPを批准してから急速に増えた。アメリカでさえ197件です。日本が世界一の遺伝子組み換え作物の承認大国になっている」とありますが、承認件数の違いは、スタック(掛け合わせ)品種ごとの承認要否や国内での栽培試験の要否など、国による承認までのプロセスの違いによるものです。利用可能な遺伝子組み換え作物の数の違いを意味するものではありません。TPP批准で承認件数が急激に増えたという事実もありません。大事なことは承認件数の多少ではなく、承認された作物はすべて安全性が確認されているという事実です。

 読者に遺伝子組み換え作物の安全性について誤った情報を与えるものですので、貴誌において正しい情報を提供していただくことを要望いたします。
 

 本レターは、FSINのホームページ等において公開しますので予めご了承ください。また、メディア記事を読み解き、判断する上で有用な情報として広く共有を図りたく、貴社のご対応についても公開させていただきます。

以上
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