毎日新聞北九州版のファクトチェック
《北九大、ソーセージを共同開発 トマトで無添加着色》
対象言説
着色剤や防腐剤などを一切使わず、地場産トマトで着色した無添加ソーセージ「トマトウインナー」を、北九州市立大と畜肉加工メーカー「ヤギシタ」(八幡西区)が共同開発した。色の悪さが無添加製品の難点だったが、トマトに含まれる天然の着色成分に注目。試作を重ねて全国でも珍しい商品化にこぎつけた。
研究に携わった同大国際環境工学部(若松区)の森田洋教授(食品工学)によると、ソーセージやハムなど加工肉には色味や日持ちを良くするため添加物が使われるのが一般的。一方、世界保健機関(WHO)の研究機関は2015年、添加物入り加工肉の発がんリスクを指摘し、添加物削減は加工肉製造の課題となっている。
日付 2019年10月24日
媒体 毎日新聞北九州版
見出し 大学キラリ・学びシティ!北九州:北九大、ソーセージを共同開発 トマトで無添加着色
総合評価
誤解を読者に与える記事です。
評価項目①「科学的根拠が適切か」
問題あり
「世界保健機関(WHO)の研究機関は2015年、添加物入り加工肉の発がんリスクを指摘し、添加物削減は加工肉製造の課題となっている。」との記述がありますが、これは事実とは異なります。
2015年10月26日、WHOの一機関である国際がん研究機関(IARC)は加工肉を「グループ1」(人に対して発がん性がある)に分類することを発表しました。しかし、食品添加物については同発表内で触れていません。
さらにIARCは同日、「レッドミート」(牛肉、豚肉等を含む全ての哺乳類の肉)を「グループ2A」(人に対して恐らく発がん性がある)に分類しています。
日本の内閣府食品安全委員会は、これらのIARCによる評価について、《「肉に含まれる成分が、発がん性と関連がある」、または「赤肉・加工肉の過剰摂取が、発がん性と関連がある」と解釈されるべき》と述べています。
従って、IARCの発表をもとに「添加物入り加工肉の発がんリスクを指摘」されたとすることや、「添加物削減は加工肉製造の課題となっている」と述べることは誤りです。
評価項目②「事実関係に誤りがないか」
問題あり
「トマトで着色した無添加ソーセージ」が開発されたことを紹介する記事となっていますが、着色用途でトマトを使用する場合、一般飲食物添加物として食品添加物とみなされるため、これを無添加と称することは食品表示法に違反することになります。
一般飲食物添加物とは、一般に食品として飲食に供されている物であって添加物として使用されるものを指します。着色用途は添加物としての使用とみなされます。例えばトマトジュースを着色用途で使用した場合には一般飲食物添加物に該当することが消費者庁の通知により示されています。
従って、このソーセージには「着色料(トマト果実)」等と記載するのが適切と考えられます。
評価項目③「見出しは適切か」
問題あり
前述の理由で「トマトで無添加着色」との見出しは間違いです。
参考資料
「レッドミートと加工肉に関するIARCの発表についての食品安全委員会の考え方」内閣府食品安全委員会
https://www.fsc.go.jp/fscj_message_20151130.html「国際がん研究機関(IARC)による加工肉及びレッドミートの発がん性分類評価について」農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/meat.html「一般に食品として飲食に供されているものであって添加物として使用されている品目リスト」公益財団法人日本食品化学研究振興財団
(名称:野菜ジュースのところにトマトジュースが記載されています。)http://www.ffcr.or.jp/tenka/list/post-14.html?OpenDocument食品表示基準Q&A
(加工-278において、添加物を使用した食品に「無添加」と表示することが表示禁止事項にあたることが示されています。)https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms201_191016_01.pdfFSINから毎日新聞社への訂正要望、及び毎日新聞社による訂正文
https://sites.google.com/site/fsinetwork/katudou/tomato_mutennka公開日:2019年11月9日
訂正履歴:2019年12月7日 参考資料に「FSINから毎日新聞社への訂正要望、及び毎日新聞社による訂正文」を追加