DSDでライン出力

勢いで・・・

単にイージーに音が確認できるからという理由でDE0のポート出力でヘッドフォンを駆動する実験を始めた訳だが、予想に反して意外なほどマトモな音が聴けたので調子に乗ってライン出力にもトライすることにする。

大きな理由として、やはりシングルエンドのアンバランス信号でないと外部のパワーアンプと接続したり、オーディオ特性を測定する際にバランス入力のものを使わないといけない不便があるためである。

設計方針について

アンバランスパッシブ版:

無電源ながら、それなりの低い出力インピーダンスで音声信号を得るためにはCとRにだけよる積分回路ではダメで、LとCがメインの回路構成とすることで目的を達成する。

一般的なLとCによるL型のフィルター回路でLPFを構成している、ただヘッドフォンのページの定数だとQが高く高域端にピークを生じるため定数を見直し、さらに適切な負荷抵抗をつけることで最大限にフラットな周波数特性もめざします。 Lは空芯がベストなのかもしれませんがスピーカーを鳴らすほどの電流も必要ないので、小型のマイクロインダクター等で十分だと思います。しかし0.047uFのコンデンサーは高誘電率のセラミック等は避けてください、ここは直接音色に響くので充/放電/電荷保持の特性に優れたマイラーコンデンサーやポリエステル、ポリカーボ等のフィルム系コンデンサーを使うのが望ましい。 注意する点として、電源オン時に100uFのカップリングコンデンサーにチャージされるまでの間は正側に出力のDCが揺れるので、「ボコン」という音からスピーカーを保護するため、電源オン時にパワーアンプ側でミュート機能が働くものを選んでほしい。

パッシブ版ライン出力回路:

擬似バランス版:

ヘッドフォンでの実験結果から、1ビット系DACは電源電圧の変動やPDM波形の品質、使用部品の精度に非常にシビアだということが判ってきたのと、偶数次の歪み成分が多かったという経験から、システムレベルの設計方針として、バッシブ素子でDSDビットストリームを受けるところまでは同じだ、しかしながらライン出力の場合、ヘッドフォーンと違って直流的にシャーシーから浮いていると様々な問題や事故になりかねないため、今回は簡易的な方式でS/N的には不利だが、DC的バランスとスイッチングに伴う残留ノイズの低減だけを目的にして、リファレンス電圧PDMと音声PDM波形を差動アンプで受けることで、アナログGND基準のシングルエンド出力に変換することで同時に低インピーダンス化した。部品精度により僅かにDCがシフトする可能性があるので心配な人はRCAピン出力にバイポーラのコンデンサーを追加しておいたほうがいいだろう。 いきなりOpアンプでPDM信号を受けない理由は能動領域外の信号成分が素通りしてしまい差動アンプとして正常に動作しなくなるのに加えて、ライン出力に大量のノイズを素通しで流してしまうからである。

擬似バランス版ライン出力回路:

バランス入力部の10kΩ抵抗は薄膜の抵抗モジュール集合抵抗などを使うと簡単に精度のよい物を作ることができる。

オペアンプの電源電圧は高いに越した事はないが、今回は±5Vで十分だろう。簡単にVBUSからマイナス電源を得るには

DC−DCコンバーターMAU106などを使うのが簡単。

測定結果:

アクティブ版ライン出力回路:

CRやLとCで構成される簡単なシングルエンド回路で受けたDSDストリーム±と、常にデジタルゼロを出力し続ける仮想グラントの差を差動アンプで受けることで電源電圧の変動による悪影響と歪み特性を改善し、同時にデジタル系のノイズを低減することをめざしています。

手持ちの部品で近い値のものを使ったので、ややハイ上がりのオーディオ特性になっているが約20kHzで帯域制限されビットシェーピングに伴う高域のノイズ上昇は十分に押さえられているのが判る。 一通り特性をチェックしてみた結果から言えることとして、仮想グランドとの電位を基準にしただけではデジタル残留ノイズは低減できても2次歪みは改善できない。PDM信号を差動出力化しバランス受けすることでさらに特性を改善できないかトライしてみる必要を感じる。

今後の課題

性能を向上させるためには各DSDストリームそのままの信号パルスと、極性を反転させた信号パルスとの二つをそれぞれ独立したパッシブの積分回路に通すことで2つの位相が反転した アナログ出力を得ることができるが、こうして得られた2つの信号を差動アンプで受けることで偶数次の歪特性を改善し、さらに残留ノイズの量も 1/√2(約3dB)以上改善することが期待できるはずなので今後のチャレンジを予定しておこう。

信号処理系のブロック図:

最終段にExORを追加し、それぞれ異なる論理と演算することで位相が反転したPDM信号が得られるようにしている、非反転側も敢えて排他的論理和を演算する理由は両者のタイミングを完全に一致させるためなので、この部分に限っては最適化処理を施してはならない。(回路が省略されてしまうから) 差動で受けるアナログ回路については上の擬似バランス版と同じ回路を使えるが、オペアンプの非反転入力側のインピーダンスが約20kΩと反転側の2倍になるので10kΩを2本直列にしたものをパラって正負ともにアナログLPFの負荷インピーダンスを合わせる必要がある。 非常に基本的なことなのだが、まれにメーカー製の市販品でさえ揃えてない設計に遭遇したことがある・・・。 ちなみに上の擬似バランス版では非反転側では2回路が並列になるので合成インピーダンスは半分となって、LCフィルター回路側から見た負荷インピーダンスは、反転入力側と同じ値となっている。