流体力学の分野でも有名な定理をいくつか残していますが,ウィリアム・トムソンは非常に有名な人です.特に熱力学の分野で有名ですね.
何でかって?温度の単位って知ってますか?摂氏ではなくて,絶対温度の単位です.
そう!ケルビンです!
実は意外と知られていませんが,ケルビン卿とウィリアム・トムソンは同一人物です.熱力学に詳しい人でも,結構知らない事実だと思います.
まぁ,ケルビン先生の業績は左の業績一覧をご覧いただくとして,ここではウィリアム・トムソンさんがどのような人生を送って,最終的にロード(爵位)の地位を得るまでに至ったかを書きたいと思います.
ウィリアム・トムソン,1824年にアイルランドのベルファストに生まれました.研究者一家で,お父さんはグラスゴー大学の数学教授,お兄さんは同じくグラスゴー大学の工学部教授を勤めていました.お兄さんの業績では,水の三重点,水の氷点降下などの発見が知られています.
ところで,ウィリアム.非常な天才で,10歳のときにグラスゴー大学に入学が許可されています.その後ケンブリッジ大学で学び,な・な・なんと!!22歳のときに母校グラスゴー大学の物理学教授に就任しています.恐るべし天才!
時代が下って1904年,つまり死ぬ3年前に大学の総長に推されました.ちなみにバロン(爵位)を受けたのは1892年です.彼の膨大な業績に対して贈られました.
このケルビン紹介の文を書きたかったのは,次のエピソードを皆さんに伝えたかったからです.それというのは,なぜ"ケルビン"という名前にしたか,ということです.
上に書いたように,トムソンは22歳のときからグラスゴー大学の教授を勤めてきました.そのグラスゴー大学の構内に小川が流れています.その名前が"ケルビン".というわけで,トムソンはその小川の名前にちなんでケルビン卿と名乗ったわけです.
とりあえず,22歳で教授に就任するというだけでも,僕にとっては神様のように思えますが,ケルビンの研究分野というのは熱力学にだけ限ったものではないのです.当時のあらゆる分野の科学について,ほぼ全分野に研究領域が及んでいました.
今こうして,熱エネルギーを使えるのも,こうした偉大な先達が偉大な業績を残してくれたからです.改めて感謝の念を抱きますね.
ジュール・トムソン効果(1851年)
圧力の低い場所に気体を噴出すると温度が下がり,圧力の高い場所に気体を噴出すると温度が上がるという効果.簡単な例でいうと,満員電車(人から受ける圧力が高い)からホームへ降りると,(つまり圧力の低い所に行くと)温度が下がったように感じる.(分かったでしょうか?)
絶対温度目盛の導入(1848年)
原子の振動も止まる温度を絶対零度に置いた温度目盛.ケルビンの業績を称えて,単位はK[ケルビン]である.
熱力学第2法則の定式化(1851年)
カルノーサイクルの理論の一般化を試みて,定式化した.彼の第2法則の表し方は,温度の決まったただ1つの熱源から熱を受け取って,それを全部仕事に変え,それ以外に何の変化も残さないような過程は実現不可能である.
ケルビンの渦定理
流体を完全流体であると仮定すると,渦は不生不滅であり,渦糸・渦管の強さは不変.また渦糸に端はない,など完全流体中の渦に関する定理.