2.1 アクティブ制御の概略
衝突噴流が幅広い分野で用いられてきた理由としては動力源の容量が比較的小さくて済む上,流量制御(レイノルズ数の制御)による熱・物質伝達率の微調整が容易であること,またノズルと伝熱面の距離(衝突距離)の調整により熱伝達率分布形状の操作が可能であるなどが挙げられる[2]-[7] .流量調節によるレイノルズ数で熱伝達率の制御はアクティブ制御というよりもむしろパッシブ制御に分類される.Gad-el-Hak [8] や笠木[9] によればアクティブ制御とは対象とする系の作動中に系と外界との間でエネルギーや物質の授受を必要とする方法を指す.つまり外部からエネルギーを流動場へ注入する場合の制御をアクティブ制御(能動制御)と呼ぶ.さらに笠木によればセンサによって乱流場の情報を取り込み,それらを基にコントローラによって最適な制御入力値を求め,アクチュエータを作動させて所定の制御入力を流動場へ加えるような,高度に知的な制御のことをスマート・コントロール-Smart Contol-(アクティブ・フィードバック制御)と呼んでいる.本レビューでは単純に流動場へ外部からエネルギーを注入して衝突噴流熱伝達を制御しているものをアクティブ制御と定義する.
2.2 励起による噴流のアクティブ制御
励起による噴流のアクティブ制御励起による噴流のアクティブ制御励起による噴流のアクティブ制御励起による噴流のアクティブ制御 緒言で述べたように衝突噴流熱伝達のアクティブ制御の研究例は圧倒的に励起によるものが多い.そこで, 励起衝突噴流の乱流構造変化を述べる前に,励起した自由噴流の乱流構造変化についてまとめておく. 噴流を励起することには2 つの物理的意味がある.1 つは励起により噴流せん断層の発達を早めることで, 噴流の半値幅や乱れ度などを増加させて,混合促進などを図る工学的な側面である.もう1 つは物理的な側 面である.自然噴流中には秩序渦が噴流軸に対して対称に発生する対称モードと交互に発生する逆対称モー ドが存在し,励起を行わないとこれら2 つのモードが時空間的に混在してしまうために,噴流中の渦構造の 発達過程などの詳細解明が困難となる.しかし各モードの自然渦発生周波数(=基本周波数)で励起することで, それぞれのモードの再現性を高めることができ,秩序渦の合体・崩壊といった乱流構造の解析を容易にする ことができる.しかし,励起噴流の乱流構造が非励起時の構造と同様であるかは保証されないので注意しな ければならない.
自由噴流を励起した研究例としては,初期のものに はSato(1960) [10] ,Crow&Champagne(1971) [11] ,Hussain et al.(1980, 1981) [12,13] ,近年ではThomas&Goldschmidt (1986) [14] ,蒔田ら(1988, 1991, 1992, 1993, 1994, 2000, 2001) [15-22] , Hsiao&Huang(1990) [23] ,Husain&Hussain (1995) [24] ,Cho et al. (1998) [25] がある.過去の研究例よ り噴流を励起すると噴流のせん断層の発達が促進され て,噴流半値幅や噴流中央における乱れの増加率が非 励起噴流に比べて増大することが良く知られている. Sato [10] は二次元噴流中に上述した対称モードと逆対称 モードがあることを発見した.またCrow&Champagne [11] は軸対称噴流を励起し,流れ場へ導入したかく乱が 最大増幅されるときの周波数-プリファード・モード (preferrd mode)-を発見した.蒔田らは放物線出口速度 分布を有する二次元噴流中の渦構造解明に重点を置き 噴流を励起している.またHusain et al.は音波励起に おけるサブハーモニック波の影響について調べている. また励起衝突噴流場の乱流構造を調べた研究には,二 次元衝突噴流では榊原ら(1996) [26,27] ,Sakakibara et al.(2001) [28] が,軸対称衝突噴流では Didden&Ho(1985) [29] や土方・三松(1987) [30] ,Sergey et al.(1997, 2001) [31-33] などがある.
3.衝突噴流の能動制御の研究例
3.1 励起による熱伝達制御
これまでの研究より衝突噴流熱伝達においては,衝 突壁面が平板の場合,熱伝達率分布はよどみ点で最大 値を取り半径方向(流下方向)に漸減する.またよどみ 点熱伝達率はノズル-平板間距離により変化し,ノズ ル直径(またはノズル幅)の約6 ~8 ?の距離のときに熱 伝達率が最大となる.これは噴流せん断層において発 生した離散渦が移流に伴い成長し,噴流コアへ侵入し てくるため,よどみ点付近にはある頻度で渦が衝突す ることになる.その結果,壁面垂直方向の運動を誘起 させ境界層を刷新することにより,低温の流体塊が衝 突壁面に到達する界面更新現象が起きているためであ ると考えられている.噴流を励起することにより以上 のような壁面近傍における乱流構造に変化が起こり, 熱伝達の制御ができるのではと期待されている.
2 ・2 節で述べたようにスピーカー等による励起は自 由噴流の乱流構造変化をもたらすことから拡散・混合 促進などにも積極的に用いられている.また衝突噴流 場においても熱伝達促進を図るために適用されており, 衝突噴流熱伝達のアクティブ制御の中では最も古典的 かつ基本的な方法となっており,二次元衝突噴流また は軸対称衝突噴流を励起して熱伝達制御を試みた例と しては,以下のものが挙げられる.
片岡ら(1987) [34] ,Kataoka et al.(1988) [35] は軸対称衝突 噴流を励起し,その熱伝達率特性を調べている.彼ら によれば噴流を励起しても最大熱伝達率に変化はない が,最大熱伝達率を得るノズル-衝突平板間距離(H/B) は非励起時に比べて短くなることが示されている.
栗間ら(1993) [36] は軸対称噴流を微小かく乱したとき の渦輪の挙動に着目し,渦輪の成長が大きい場合は H/D =6 付近の熱伝達率が低下することを示した.
Liu&Sullivan(1995) [37] も軸対称衝突噴流を励起して 励起周波数が壁面近傍の流動構造および熱伝達分布に どのような影響を与えるか議論している.その結果, 励起周波数を自然渦発生周波数にすると壁面噴流領域 で熱伝達促進を,サブ・ハーモニック周波数(自然渦発 生周波数の半分)にすると熱伝達が抑制されることを 示した.またスモークワイヤ法による可視化より以上 の熱伝達促進・抑制は励起周波数に依存した壁面近傍 の渦構造により引き起こされることを明らかにした. 小幡ら(2001) [40] は軸対称ノズルの外側から音波によ るかく乱を導入して流動構造および平板上の熱伝達特 性を調べている.過去の研究にあるように励起噴流は非励起噴流よりも発達が早まる結果,衝突距離が短い 場合(H/d<4)のときに最大9 %程度の熱伝達促進が得ら れることを確認している.
Hwang et al.(2000, 2001) [38,39] は軸対称衝突噴流をス ピーカーにより励起した場合と,ノズルの外側に設け たスリットより吹き出し・吸い込みを行った場合 (secondary flow control)の熱伝達特性を比較している(3 ・ 2 節参照).St=0, 1.2, 2.4, 3.0, 4.0 の場合を比較し,スモ ークワイヤ法による可視化よりSt=2.4, 3.0 では渦の合 体が阻害されるため渦はノズル近傍で形成された大き さのまま流下するため,ポテンシャルコアの長さが伸 び噴流の発達が遅れる.そのため衝突距離が短いとき には非励起噴流に比べ熱伝達が抑制されるが,衝突距 離が大きくなると熱伝達は促進されることを示してい る.逆に噴流の発達が早められるSt=1.2, 4.0 では衝突 距離が短い場合に熱伝達率が大きくなるが非励起噴流 に比べて促進はされていない.
これまでの結果は軸対称噴流を励起した熱伝達特性 を見たものであった.二次元噴流を励起した研究例と しては榊原ら(1996) [26,27] , Sakakibara et al.(2001) [28] があ る.榊原ら(1994) [41] は非励起二次元衝突噴流のよどみ 域において高い熱伝達率を生み出す機構をPIV ・LIF に よる速度・温度同時計測より明らかにしている.非励 起における知見を基に彼らは同様のシステムを用いて 励起に次元衝突噴流のよどみ域における熱伝達機構を 調べている.
3.2 副噴流(Sub Jet)による熱伝達制御
噴流中の渦動構造の発達は,ノズル近傍におけるせ ん断層の時空間的な発達と密接な関係がある.励起に よりせん断層の発達を早める方法もあるが,同軸円形 噴流を用いる方法もある.通常の円形噴流に比べて同 軸円形噴流では環状噴流の周囲流体や同軸円形噴流へ の拡散・混合を促進することが出来るため,古くから バーナ火炎の安定化や化学反応促進に用いられてきた. 社河内らやHwang et al.は円形ノズルの外側に環状に もう1 つ副噴流を設置して主噴流との速度比を変化さ せることで,せん断層の発達過程を操作し熱伝達制御 を試みている.
檜和田ら(1995) [42] は同軸2 重円形噴流を用いて外側 と内側の噴流速度比,衝突距離を変化させて熱伝達特 性を調べている.その結果,局所・平均ヌセルト数分 布は速度比よりも衝突距離に大きく影響を受けること を示した.特に衝突距離が短い場合(L/d<7)に流れ場・ 熱伝達特性が異なることを明らかにしている.社河内 ら(1995, 1996) [43,44] はH/d=2(d:ノズル直径)と比較的短 い衝突距離において実験と数値計算を行った結果,副 噴流を用いることでせん断層部分における乱れが増加 し,それにより衝突平板上での伝熱促進につながるこ とを示した.またHwang et al.(2000, 2001) [38,39] は副噴 流と音波励起による熱伝達特性を比較し,副噴流によ る制御では速度比が正(=吹き出し)でも負(=吸い込み) でも熱伝達の促進が見られた.特に吸い込みの場合は 熱伝達率が最大となる位置が非励起時に比べて遠くな り,吹き出しの場合は逆に近くなった.
3.3 衝突壁面の加振による熱伝達制御
通常平板に衝突する噴流の熱伝達の研究では衝突壁 面は固定されている.しかし実際の熱機関等で衝突噴 流により冷却する際は衝突対象物がサイクル(ガスサ イクル・蒸気サイクル)による熱力学的状態および流体 力学的状態変化に対応して振動している.一宮ら (1999) [45] は二次元衝突噴流熱伝達におよぼす衝突面の 加振効果を調べた結果,衝突距離が短い場合は伝熱促 進を,衝突距離が大きい場合は伝熱抑制を引き起こす ことを示し,壁面の加振により衝突壁面上での乱流構 造の変化がもたらされるためであると結論付けている.
※文章中の[]の数字は参考文献番号を指す.なお参考文献については,以下を参照.
参考文献
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■励起による噴流のアクティブ制御
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[18]蒔田秀治・他2 吊, 二次元噴流の遷移過程(第2 報, 多線式煙線法による可視化写真と速度ベクトル図の 比較), 機論B, 58-555 (1992), 3237.
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■励起による熱伝達制御
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[35]Kataoka, K. et al., Unsteady aspects of large-scale coherent structures and impingement heat transfer in round air jets with and without controlled excitation, Int. J. Eng. Fluid Mech., 1 (1988), 365.
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[44]社河内・他3 吊, 円形衝突噴流の流動と伝熱特性 (同 軸環状副噴流による制御), 機論B, 62-593 (1996), 248.
■衝突壁面の加振による熱伝達制御
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作成日:2001年8月24日
2.衝突噴流の能動制御の概略
衝突噴流はよどみ点において高い熱・物質伝達率が得られることから物体表面の加熱・冷却・乾燥やガラスの焼きなまし,紙の乾燥,ガスタービンブレードの冷却,電子デバイスの温度制御等様々な分野に用いられている.近年のエネルギー問題や地球環境問題の解決の1 つの方策として,上記のように様々な分野に応用されている衝突噴流熱伝達の制御が注目を浴びている.既報[1] でも述べたように,一般的に乱流制御には音波励起のように流動場へエネルギーを注入するアクティブ制御(能動制御)と,ノズルの形状変化や流動場への物体の挿入などエネルギーを注入しないパッシブ制御(受動制御)の2 つがある.アクティブ制御の場合は注入したエネルギーに見合うだけの制御効果が得られなければ,エネルギーの無駄遣いに終わってしまうというデメリットがあり,パッシブ制御の方には一度流動場等の条件を決めてしまうと変更できず,流動場の情報から制御出力を決定する等のインターアクティブな制御が出来ないというデメリットがある.
第1 報においては衝突噴流熱伝達のパッシブ制御についてまとめた.第2 報では衝突噴流熱伝達のアクティブ制御の研究を紹介していく.これまで行われている衝突噴流熱伝達のアクティブ制御のほとんどは,スピーカー等を利用した励起による制御である.これは,自由噴流のアクティブ制御では励起による混合促進などの制御あるいは渦構造の解析を行ったものが多いため,自由噴流場での研究結果を衝突噴流場へ適用することが比較的容易であるためと考えられる.励起以外では円柱や角柱を流動場へ挿入し流れの縮流を利用したり,それを振動させることで渦構造変化を利用したものがあるが,その数は少ない.よって本レビューでも励起による衝突噴流熱伝達の制御に重点を置いて説明していく.第2 章では始めにアクティブ制御の概略について述べ,その後それぞれの研究についてまとめていく.
Keywords:Impinging Jet Heat Transfer, Heat Transfer Control, Active Control
1.緒言
Abstract
目次
1.緒言
2.衝突噴流の能動制御の概略
2.1 アクティブ制御の概略
2.2 励起による噴流のアクティブ制御
3.衝突噴流の能動制御の研究例
3.1 励起による熱伝達制御
3.2 副噴流(Sub Jet)による熱伝達制御
3.3 衝突壁面の加振による熱伝達制御
参考文献