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◆2020年12月26日
12月11日にパブリッシュされたnature foodに「Ultra-processed food and chronic disease」というタイトルの論文があります。
Ultra-processed foodという言葉が最近の論文でよく見かけるようになりましたが、まだ日本ではなじみが少なく、超加工食品と訳されるようです。
このUltra-processed food(以下UPF)は、FAO(国連食糧農業機関)が定義づけを行っており、たとえは炭酸入りソフトドリンク、スイーツ、脂肪分や塩分の多いスナック菓子、キャンディー、大量生産されたパン、クッキー、マーガリン、朝食用シリアル、エナジードリンク、ハンバーガー、インスタントスープなどが該当します。
Ultra-processed foods, diet quality, and health using the NOVA classification system
先ほど紹介したnature foodの論文では、UPFの大量摂取と非感染性慢性疾患の間に関連性のあることをメタアナリシスによって明らかにしています。具体的には、体重過多、肥満、メタボリックシンドローム、高血圧、乳がん、うつ病などと関連していました。
またJAMAに2019年2月11日にフランスから発表された「Association Between Ultraprocessed Food Consumption and Risk of Mortality Among Middle-aged Adults in France」という論文では、フランス人のUPF摂取と死亡リスクとの関連を調査しており、様々な交絡因子を調整した後、消費されるUPFの割合が増加すると、すべての原因による死亡リスクが高いことを明らかにしました(HR per 10% increment, 1.14; 95% CI, 1.04-1.27; P = .008)。
更にAmerican Journal of Clinical Nutritionに12月18日に発表された「Ultra-processed food consumption is associated with increased risk of all-cause and cardiovascular mortality in the Moli-sani Study」というイタリアからの論文では、食事中のUPFの割合が高いと、心血管疾患リスクが高くなり、死亡リスクの増加が認められました(HR:1.58; 95%CI:1.23、2.03 )。
このようにUPFの食事に占める比率が高い人は、様々な疾患リスクや死亡リスクが高くなるということが明らかになってきていますので、UPFの消費を減らし、自然食品または最小限に加工された食品の摂取を奨励していくための根拠づけになるでしょう。
◆2020年11月27日
ここ最近、新型コロナウイルスの予防にビタミンDを摂取するのが良い、という論文がいくつも出てきていますが、今回は「統計的有意差だけで効果を判断してはいけない」という話をいくつかの論文を見ながらお話します。
先日、イランから新型コロナウイルスの重症化を防ぐにはビタミンDが重要という内容の論文がされました。
Vitamin D sufficiency, a serum 25-hydroxyvitamin D at least 30 ng/mL reduced risk for adverse clinical outcomes in patients with COVID-19 infectionこの論文は、PLOS ONE誌から出されたものです。
内容は、イランのCOVID-19患者において血清VD30ng/mL以上であれば症状リスクは低下する、という結論でしたが、パブリッシュ後にPLOS ONEから「Expression of Concern(懸念の表明)」が追加されました。
内容は、利益供与の問題も含め複数あるのですが、最大のポイントは、ビタミンDレベルとCOVID-19感染の臨床転帰との因果関係を示唆する記述があるが、これはデータによって裏付けられていない、という根本的な部分を指摘しています。
現在、PLOS ONEの編集者がフォローアップしている状況です。
このように、著名な論文雑誌でもこのような初歩的な問題が生じています。
この論文がそうだとはいえないかもしれませんが、なんとしても有意差を出そうとして、統計処理を工夫し、数字のマジックでよい結論を導き出そうという風潮があるように思えます。
当初想定していた評価項目に効果があるかどうかを判定するために統計的処理を行います。
よく聞くのが、p値(Probability value) が0.05より小さければ有意差アリ、というものです。
統計処理というものは確率を求めているものであって、あくまでもどれだけの確率でその事象が起こるか、あるいは起こらないかを算出しているものです。
世界トップレベルのNEJM誌(New England Journal of Medicine)では臨床試験に関して、しっかりと手順を踏んでいない場合はp値は記載せず、推定値と95%信頼区間だけを記述するように、と明確に言っています。
つまりp値だけで判断してはいけないと警笛を鳴らしているといえます。
そのNEJMに昨年発表された以下のような論文があります。
Vitamin D Supplements and Prevention of Cancer and Cardiovascular DiseaseN Engl J Med. 2019; 380:33-44 発行日:2019年1月3日およそ26,000人に対し1日あたりビタミンDを2,000IU、オメガ3系脂肪酸1g摂取する群とプラセボ群とを無作為抽出により割り当てて3年間試験を実施したところ、ガンおよび心血管イベントの発生率に関して、摂取群はプラセボ群、両群に差はなかった、としています。
この論文では、p値だけを記載するのではなく、例えば、hazard ratio, 0.96; 95% confidence interval [CI], 0.88 to 1.06; P=0.47、といった記述をしており、両群に差はなかったと明確に結論付けることができます(CI: confidence interval 信頼区間)。
参考までに、この臨床試験に用いられた被験食は、ビタミンDはファーマバイト社のもの(おそらくネイチャーメイド)、オメガ3系脂肪酸はOmacor というEPAエチルエステル460mgとDHAエチルエステル380mgを含んだ医薬品でした。
統計処理を行った結果、p値が0.05以下かどうかということだけでその試験自体の、また試験に供された栄養素やサプリメントの効果を判断するのではなく、論文を読む側もその試験内容をしっかり理解することが今まで以上に重要になってきているとともに、論文を発表する側もよい結果を出すことを目的にするのではなく正確な情報を提供していただきたい、と感じます。
そうすることで、今まで以上に栄養素やサプリメントの有用性を明確にしていくことができるのでしょう。
私たちもこの視点を肝に銘じて、論文の内容を精査したうえで情報提供していきたいと思います。
◆2020年11月20日
日本でも第3波が訪れている状況ですが、アメリカでは1日あたりの新規感染者数が約16万人となりました。
このような状況のなか、11月10日にNatureから以下のような論文が発表されました。
Mobility network models of COVID-19 explain inequities and inform reopening
この論文では、アメリカにおける新型コロナウイルスの感染リスクが高い場所は、レストラン、フィットネスセンター、カフェ、ホテルなどで、これら施設が従来通りの営業を行えば、更に感染が増えるという結果を示しています。
基にしているデータは、アメリカの携帯電話データを利用して数百万人の人々がどこからどこに移動したかを示すマップを作成し、新型コロナウイルスの伝播モデルとを組み合わせてシミュレーションした、ということです。
更にこのモデルでは、低所得者がより混雑している場所、限られた場所(例えば食料品店など)に出入りしており、感染リスクを高めたことが明らかにされています。
このモデルを構築したことで、各施設の営業再開方針を立てる手助けとなる、ということです。
例えば、利用客を最大収容人数の20%に制限した場合、新規感染者数は80%以上減るが、施設を利用する回数は42%の減少で済む、という風に具体的な方針を立てることが可能になるということです。
またGoogleが、今後28日後までの新規感染者予測について日本版とアメリカ版をWEB上で公開しました。
日本:https://datastudio.google.com/u/0/reporting/8224d512-a76e-4d38-91c1-935ba119eb8f/page/4KwoB
アメリカ:https://datastudio.google.com/u/0/reporting/52f6e744-66c6-47aa-83db-f74201a7c4df/page/r4voB?s=ou-b6M0HXag
このデータは、AI技術と疫学的データを組合せ、機械学習させて予測値を導き出しています。
11月20日現在、アメリカの今後28日間の新規感染者予測数は約650万人(1日あたり約23万人)、日本は6万人(1日あたり約2,200人)と出ており、実際の数値(アメリカ17万人、日本2,200人 11月19日時点)に非常に近い値です。
日本でも、Yahooが混雑レーダーというサイトを公開しており、現在のその場の混雑度合いがおおよそ知ることができます。
https://beta-map.yahoo.co.jp/congestion?lat=35.68160711035938&lon=139.72407985805694&zoom=12&maptype=basic
第3波、第4波と継続して感染者数が増加するのはまず間違いのないことだと思われますので、三密を避け、マスク、手洗い、消毒はもちろんですが、今回発表された論文のように、日本でもどのような場所がどのような時間帯でリスクが高いかをもう少し具体的に示し、感染者数を抑える方針を明確に打ち出すことができれば、経済活動との共存ができるのではないかと思います。
◆2020年11月15日
BMJにマルチビタミンおよびマルチミネラルサプリメントの摂取に関するアメリカでの横断研究の結果が掲載されました。
これらのサプリメントを利用している4,933名と利用していない16,670人を対象に健康状態に関する自己申告調査および健康診断結果のアンケートをもとに調査をしています。
その結果、これらサプリメント利用者は、臨床的に測定可能な健康診断結果には非摂取群との間に明らかな差が認められませんでしたが、全体的な健康状態が改善したという自己申告が30%有意に多いという結果となりました(調整済みOR 1.31; 95% CI 1.17 to 1.46; false discovery rate adjusted p<0.001)。
論文の結論としては、成人におけるマルチビタミンの使用は、自分の健康に関して個人の肯定的な期待の結果である可能性がある、としています。
つまり、マルチビタミンサプリメントを摂取する人たちは、より健康に気を配り、またサプリメントのおかげで自分は健康的だと感じている、ということかと思います。
この結果から感じることは、対象となった人たちがどんな内容、成分、配合量のサプリメントをどのくらいの期間摂取していたのかが明らかではない、ということです。
良い商品、そうではない商品をひっくるめて、マルチビタミンサプリメントの摂取は意味がない、というのはちょっとミスリードしてしまうような気がします。
必要な人に必要な量の栄養素を高品質なサプリメントで効率よく摂取する、ということは選択肢としてあってよいと個人的には思いますし、そういった内容の研究をしていってほしいと思います。
この論文の調査のもとになっているのは、National Health Interview SurveyというアメリカCDCが実施しているデータを利用しています。非常に参考になりますので、お時間あるときにご覧になってください https://www.cdc.gov/nchs/nhis/index.htm。