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これからの商品業務を真剣に考えてみよう
プレゼンあんちょこ】

当日会場にお越しになれない方(と発表者である私と説明員の予習)向けのプレゼンあんちょこです。

画像化したスライド(全18枚)にそれぞれに対して喋る内容を添えてあります。

書庫からスライドPDFもダウンロードして頂けます。

会場にお越しになられる方は是非私の顔でも見に来て下さいw

【売れ筋主義 から 利用メリット主義 へ】
これからの商品業務を真剣に考えてみよう
品揃え、棚割、チラシ、クーポンで来店、利用を増やすID-POS事例

人口減少の時代、謂わば利用客数減少の時代です。

パイ自体が減って行くこの時代を勝ち残って行く為に、流通業は ”商品視点から顧客視点へ”、お題目では済まされない本気のパラダイムシフトが求められます。

これは端的には「売れ筋主義」から、「利用メリット主義」へのシフトでもあります。

ここでは商品視点のPOSでは無く、顧客視点のID-POSを用いた、これからの商品業務の在り方について、事例を混じえてお話させて頂きます。

■ 顧客から見た「何故?」の答えはシンプルなのに。。。

「何故来店してくれないのか?」

「何故売場/商品を利用してくれないのか?」

皆さんそれぞれにを悩ませている事かと思います。

しかし、この答えは”消費者としての自分”を振り返って頂ければ、案外シンプルなものだったりします。


皆さんがお住まいの近所にあるのに利用していない店、滅多に利用しない店って無いでしょうか?


何故利用しないのでしょうか?


それは

「自分にとって利用メリット無い/他店比で劣るから」

では無いですか?

ここではおいそれとは変えられない外的要因では無く、流通業共通のテーマであり、現場で改善可能な部門/カテゴリー/単品を含んだ”商品”について、

「顧客は何を利用目的、来店動機としているのか?」

皆さんと一緒に考えて行きたいと思います。


例えば「寿がきや味噌煮込みうどん」を来店動機/インスタント麺売場の利用目的としているような一定数の顧客が存在していますが、それはPOSからは「絶対に」分からない事です。

ID-POSは単純に言って、個々の顧客が「自分はどんな人間であるのか」日々POSレジを介して表明し続けているアンケート用紙のようなものなのですが、それですら殆どが、顧客の希望とは無関係な用途(年代、ロイヤル、リピート等レガシーな分析)にしか利用されていないというのが現状です。

商品業務のこれからの常識「利用を増やす為には、利用メリットを知る事」

「利用を増やす為には利用メリットを知る事」

が当然必要となって来ます。

顧客の価値観は様々です。
その証拠に、例えばお年寄り好みの商品の、若者の利用者率が0%になる事も、その逆もほぼありません。

当然、誰もが/どの売場においても「”売れ筋”を利用目的としている」なんて事もありません。
単品で見れば、”超売れ筋”のもやしや牛乳ですら、利用者率は10〜20%程度、互いの併買者率が10%あれば多い方です。

様々であるからこそ”品揃え”が必要なのです。

顧客が売り場に求めている利用メリットが何なのか?」を知らないまま業務を進めれば、一部の人たちにとっての来店動機/利用目的を売場から、いとも容易く消滅させる事ができちゃいます。

その現状を敢えて言えば、地雷原を歩くような「有り得ない状態」訳ですが、少なくとも人口減少時代のこれらからの商品業務においては、利用メリットを知る事が”常識”なって行くべきだと私たちは考えています。

顧客の利用メリットを知る事はマーケティングに通じます。

ID-POSから顧客にとっての利用メリットをどのように知る事ができるのか?
まずは簡単にその理屈をご説明させて頂きます。

・ 利用メリット認識の違いを政策に活かす = マーケティング

マーケットとは、売り手が規定した商品群と、そこに参加する顧客群との”接点”と定義されます。

接点として商品は固定でも、そこには様々な価値観を持った顧客が参加して来ますから、「その商品を利用する事で得られるメリット」をどう捉えているかは人それぞれです。

「人それぞれ」の利用メリット認識を類型化する事でマーケットを分割したものが「マーケット・セグメンテーション」で、セグメンテーションのメリットを政策に活かす事がマーケティングです。

図では簡単の為、商品A、Bの二品から構成されたマーケットを仮定しています。

まず大きく利用か未利用か、すなわち利用するメリットを感じるか否かで顧客が別れます。
「マーケット参加者」は利用者の方ですので、利用者の分割が「マーケット・セグメンテーション」になります。

マーケット参加者は大きく商品AとBを利用する事で得られるメリットを「似たようなもの」と捉えている顧客群と、「全然違うもの」と捉えている顧客群の二つに別れます。

前者はID-POSの非同時の併買という「選択的利用行動」から知る事ができます。
このような人たちが多い場合、商品AとBは「代替可能商品」、或いは「ライバル商品」と見做す事ができます。

後者は更にID-POSの非併買という利用行動から「A派」と「B派」に、同時併買という利用行動から、シーン別利用派(平日はA、週末にB)或いは世帯内個人別利用派(お父さんはA、私はB)に分ける事ができます。

例としては矮小ですが、「ライバルであるという事=顧客にとって代替可能であるという事」という定義も見えて来ましたので、商品Bへのブランドスイッチという政策を考えてみましょう。

・言葉通り②の顧客をBの顧客へとひっくり返すという一切足掛かりが無い価格頼みの政策

・①の顧客にBの優位性を明確にアピールするという政策

・④の顧客に「実は平日もB/お父さんもBにすればお得なんですよ!」のようなキャンペーンを仕掛けるといった政策

・③の顧客に浮気させない政策

と、マーケティングコストも手段も全く異なった、セグメント数分の政策が考えられます。

それに対して、マーケットをセグメンテーションしない政策(≠マーケティング)は、日々のジャーナルデータから「私には利用メリットが無い!」「私は断然A派!」と表明している顧客に対しても、無神経にBを「安いよ!」「お得だよ!」とやっている状態と言えます。

【参考】ザ・ゴール2作中でのゴールドラットの定義

参考までにかつてのベストセラー「ザ・ゴール2」の作中で、著者ゴールドラット博士はマーケティングの事を「マーケット・セグメンテーションのメリットを活かす事」、セグメンテーションを、意訳すれば「互いにカニバリゼーションを起こさない境界線」と定義しています。

マーケットには多くの商品と人が参加しているからー

商品A、Bの例のように、マーケットというものは相対的な形で理解されますが、一般的にマーケットを二品で定義するという事は極めて稀でしょう。

その為、実務的にはマーケットを規定する全商品の間で、遠いと思っている参加者の割合=距離を計算し(商品間距離行列表)、クラスター分析に掛けます。

そこから「並び順」や、カニバリゼーション必至の”近い”利用メリットの塊であるセグメントn(near)、カニバリゼーションの境界線である”遠い”利用メリットの塊、セグメントf(far)を得る事ができます。

クラスター分析の結果であるこの図表を「デンドログラム」と呼びますが、これはマーケット構造(=商品−顧客間の利用メリット分類)を現しています。

マーケットはデンドログラムをカットする位置次第で、2〜商品数迄、任意の数にセグメントする事ができます。

図ではマーケットを3つにセグメントした時に、それぞれのセグメントの持つ利用メリットを代表する商品を抜き出し、順位付けする方法を示しています。

これをセグメント数=2〜商品数迄順に計算して行ったものが「採用順」で、POS分析の売上順や点数順と異なり「売り場を利用する多くの顧客にとってよりかけがえのない商品から順番に採用されて行く」のがです。

特にマーケット・セグメント(セグメントf)を代表する利用メリット(超最低品揃え)にはレコメンド=1st、セグメントnを代表する利用メリット(最低品揃え)にはレコメンド=2ndを振っています。

5大要素を商品業務全般に活かせます

ここまでのマーケット・セグメンテーションから得られた要素、セグメントf、セグメントn、並び順、採用順、レコメンドを、業務に使える形にまとめたものが図の帳表になります。

セグメント、並び順は棚割やチラシ紙面といった商品のレイアウト全般に使えます。

採用順上位でレコメンドが立っている商品は、販促ならチラシやエンド、定番ならマグネットに使うのに好適である事を示し、売り場を利用する顧客に対して、最低限完備すべき利用メリットである事を示唆しています。

逆に採用順下位でレコメンドが立っていない商品については、絞り込み時のカット候補と見做して問題ありません。

例として図のセグメントf=f3は「さきいか系」という顧客にとっての利用メリットの存在を示唆していて、配下のセグメントn=n3&n4はそれが、顧客の中では小容量と大容量という2つの利用メリットで構成されている事を示しています。

セグメントfは、f3の「さきいか系」の中で例えばマークダウンを行っても、f2「あたりめ系」や、f4「姿揚げフライ系」には何ら影響を及ぼさない事を意味しています

セグメントnは、例えばn3の中、n4の中それぞれでカニバリゼーションが起きている事、マークダウンのインパクト次第では、相互に影響が及ぶ可能性がある事を示唆しています。

このセグメントf3の中から商品を一品採用するのであれば、1stレコメンドである小容量の「ソフトさきいか23g」を、二品選択するのであれば、2ndレコメンドである大容量の「ソフトさきいか56g」を、一品カットするのであれば採用順が最も下位の「こがねさき20g」をカットすれば良いという事が分かります(「こがねさき20g」の利用ID数はセグメントf3内で二番目ですが、顧客にとっては「ソフトさきいか23g」と限りなく利用メリットが近い=代替性が高い事が、並び順からも伺えます)。

例えば来店を逃さない品揃え

マーケット・セグメンテーションを業務に活かす例として、図では帳表を採用順で昇順(採用すべきもの順)に並べ替えてみました。

私たちが時に遠くの他店を利用するのは、多くの場合「その店にしか無い利用メリットを求めて」です。

何故「その店にしか無い」のかと言えば、これまた多くの場合「あまり売れていない」からです。

売れていない商品は往々にして、市場でより売れているような商品と、差替られてしまいます。

ところが市場で売れている上位の商品同士のは多くは、互いに利用メリットが被っています(ex.キャノーラ油1000g)。

こう言った意思決定によって、品揃えは一部の利用メリットに極端に偏り、競合同士似通って行き、顧客にとっての特段の来店動機は売場からどんどん失われて行きます。

みなさんも消費者として

「自分のお気に入り商品ってすぐに売場から無くなっちゃうんだよなぁ〜」

なんて思う事はありませんか?

お気に入りと言いつつ

「そう言えば年一回位しか買わないかなぁ?」

なんて商品ありませんか?

ほとんどの商品の利用顧客の優に50%以上が、年に一度しかその商品を利用しない事を考えれば、短期のリピート重視は利用メリットが偏り勝ちで、顧客に対しても性急に過ぎます。

マーケット・セグメンテーションをすれば、売上至上主義/リピート至上主義からは決して得られない顧客の利用目的が見えて来ます。

一方で「あまり売れていない」事もあり、利用目的が必ずしも全店で品揃えされている訳では無い事も見えて来ます

これは来店そのものを規定します。

このような商品を全売り場から炙り出し、全店で品揃えをし、欠品をケアすれば、大いなる来店の改善が期待できます。

事例のご紹介(クーポン、棚割、チラシ)

それでは、マーケット・セグメンテーションによるマーケットドリブンな販促、MDの事例を紹介して行きましょう。

クーポン、棚割、チラシの三つの例をご紹介させて頂きます。

主要ご契約企業さま

まず事例についてはこの中の一部企業さまとの取組事例となります。

信憑性は出したいんですけど、明言は控えたいというヤツです。

以降の図表も実際に実施した部門、カテゴリー、商品とは敢えて異なるものを掲載していますので、お察しください。

クーポン対象顧客の抽出(セグメント)

前述の最低品揃え商品を売場に置いたとしても、置いただけではなかなか「無い」と思い込んでいる顧客に、「あったんだ!」と気付いてもらい、来店してもらうに迄は至りません。

そんな時にクーポンは有効な手段です。

単品クーポン、アイテムクーポンは利用者の来店回数増に繋がる事が分かっていますが、チラシノリの単なるバラマキでは紙の場合は印字コストが、アプリの場合は掲載枠が無駄になるばかりか、大多数の利用メリットを感じない顧客(単品クーポンなら80%以上)からすれば、寧ろ逆効果のSPAM行為を仕掛けているようなものです

マーケット・セグメンテーションの定義上、クーポンの効く境界線、要は喜んでもらえるであろう顧客の上限は分かっている訳ですから、セグメントfの顧客を上限に、各メーカーの予算と政策に応じてセグメントnの顧客、単品の顧客のいづれかをクーポンターゲットとする事で、クーポンを顧客よし、メーカーよし、小売よしの”三方よし”の政策に昇華させる事ができます。

将来的には来店向上の切り札として、このような取組を、全メーカーと恒常的に行えるようなしくみを作ってみたいと考えています。

定番棚割(セグメント、並び順、レコメンド)

最低品揃えが為され、クーポンで売場に呼び込む事が出来ても、売場に来た顧客が実際にそれを探し出せなくては意味がありません。

また普段から、気付かない/探せない事による買い逃しは他店利用の機会=自店の客数減に繋がります。

先程来申し上げました通り、帳表の項目=セグメント、並び順はゾーニングや陳列に使えます。

ほとんどの棚割ソフトがJANと任意の親を読み込ませ、色分けする機能(私どもの「棚パワー」で言えば「ハイライト分析」)を持っていますので、棚割ソフトにJANとセグメントfの組み合わせを読み込ませて色分けし、ゾーンを同一色で整えます。

次いでJANとセグメントnの組み合わせを読み込ませて色分けし、ゾーンを同一色で整えます。

これにより、ドライグロサリーの定番平均で1%の売上増を実現しました。

売上増の理屈としては、同一利用メリットが集積する事によって、自分にとっての利用メリットの存在が遠目に目に入り易く(セグメントf)、近づいて選び易く(セグメントnなる為と考えられます。

更には上下左右で「並び順」も意識して陳列を行えば、関連性の高いものが近くに並ぶ事で、あれもこれもという形で手に取り易い売り場となる事が期待されます。

ID-POSと言うと、どうしても飛び道具的なイメージがありますが、チラシもクーポンも、呼び込むだけ呼び込んで、結局利用メリットの無さを顧客に再認識させる道具となってしまっては元も子もありません。

何はさておきまずは良い売場あっての事です。

チラシ商品選抜(採用順、レコメンド) ⇨ 紙面構成(セグメント、並び順、レコメンド)

全く来店していない人に対しても、自分にとっての利用メリットの存在に気付いてもらえる可能性がある事が、チラシの他にはないメリットです。

チラシ紙面は、往々にして”売りたい商品”で占められ勝ちですが、本来、限定された紙面の限られた商品を使って、様々な価値観を持った人の目を惹き付け、来店を促す事が目的です

そこで、まずチラシ商品の選抜を「採用順」と「レコメンド」に委ねる事で、偏りなく幅広い人々の価値観に訴えかける事としました。

商品の紙面配置は、選抜済商品だけでクラスター分析をかけ、棚割と同様、「並び順」による関連性を見ながら、おおよそセグメントfの単位毎に、ライフスタイルが想起されるような紙面作りを行いました。

その結果、この手法採用前の同一チラシ枠(同一商品数)と比較して、枠比で常時140%超の利用増を記録し続けています。

その他の活用方法

ここまで見て来た通り、マーケット・セグメンテーションは”売り物”のレイアウト全般に使える手法です。

事例は全て単品によるものですが、部門や小分類を分析対象とすれば、フロアレイアウトからゴンドラレイアウト、その売り場に引き込む為のエンドのレイアウト迄、全ての商品政策が一気通貫で「より多くの人の異なる価値観に響く」「利用を増やす」来店を増やす」ものに統一されます。

ご参考

最後に今回使ったツールのご紹介です。

今回利用ツール

今回使った分析は、小売業さま向けのID-POSサービス「ビズープ」もしくは、ベンダー、メーカーさま向けのID-POSサービス「テンポラリーテイパァ」で行って頂く事ができます。

いづれも記載の通り、非常に安価にはじめて頂く事ができますので、興味のある方は是非お問い合わせ下さい。

ありがとうございました

価格含め、記載のホームページにあらゆる事を掲載させて頂いております。
本資料のダウンロードもできるようになっていますので、是非覗いてみて下さい。

さて、マーケティング、ID-POSをこれからの流通の意思決定の常識にしようと、日々一生懸命やらせて頂いている訳ですが、これは冒頭でもお話させて頂きました通り、一種のパラダイムシフトですので、ご理解頂き、実際に業務に落とし込み、最終的に企業の常識に迄して行くのは、正直時間にせよ労力にせよ、なかなかのものが御座います。。。

とは言え、そこを乗り越える事は競合他社にとっても同様に困難な事であり、これ即ち差別化、競争力の源泉足り得ます。

これをお聞き頂いたみなさまの中から、一人でも多くの方に、この取組の同志となって頂けましたら、この上ない幸せです。

以上、ご清聴ありがとうございました。