お客様ニーズが見える ID-POS分析。
直近の記事、「巨人・大鵬・玉子焼き」商品視点から顧客視点への訳、「ゆでガエル」な私たち 〜 なぜ「忙しさ」は「儲け」に変わらないのか?で連続して「言葉の定義が大事」と書いた手前、「言葉の定義シリーズ」(続くのか?w)です。
今回は「属人化」についてです。
何故今回のテーマを「属人化」にしたのかと言うと、私の評価表には必ず部長から「属人化を廃して下さい。」という一言が入るからですw
・大谷翔平くんの変わりなんて、大谷翔平くんでも作れないよ!
・「〇〇くんが辞めたらそうするんだ」って?明日は明日の風が吹くだよ。大谷くんが居なくなってもドジャースは、そしてベースボールは続いてくってもんだ!
・ウチの課は属人化してるから儲かってるんだぞ?
・部長ったら属人化ってもんが分かってないよねぇ〜。
はて?何でもかんでも標準化できない事は確かですし、個の力が非常に大きい事も確かです。けれども同じように何でもかんでも属人化すれば良いって訳でも無いですし、標準化の力が大きい事も確かです。そりゃ「属人化を廃して下さい。」って書かれる訳だ!
部長も分かって無いかもしれないけれど、まず私が属人化の何たるかを分かってないよね?そういう経緯ですw
「言葉の定義」と言うよりも、どこからどこまでが属人化領域というような推論になるかとは思いますが、お付き合い頂ければ幸いです。
多分、私の考える「属人化」の仮定と、部長の考える「属人化」の仮定は食い違っていそうです。
となれば、私の考える「標準化」の仮定と、部長の考える「標準化」の仮定は食い違っています。
と言うよりも、二人ともきっちり仮定している訳では無く、あわあわだというのが実態だと思われます。(部長、ごめんw)
まず、取っ付き易そうな「標準化できるもの」について考え、その残滓を標準化できないもの=属人化領域と考えてみたいと思います。
仕事柄、標準化領域と言うと、設計書、引継書のような「残して行って欲しいもの」が思い浮かびます。
アクセス稼ぎ(どうせ大してアクセスされないw)みたいで嫌ですけど、私のイメージでは、飛び抜けた属人性の権化みたいな方なんで、そこから標準化できるものはあるのか?大谷翔平くんに残して行って欲しいものを題材に、思考実験をして行きましょう。
大谷くんそのものを組織として伝承して行く事はさしものドジャースでも出来ないにしても、私たちが大谷くんに残して行って欲しいものは何でしょうか?「サイ・ヤング賞」「ワールドシリーズ三連覇」といった偉大な記録?いやいやそういう事ではありません。この段階で言葉の定義を誤っています。
AIに「成績以外の大谷翔平の際立った特徴」を拾って来てもらい、実感が持てるよう、野球、試合、プレー ⇨ 仕事、チーム ⇨ 会社に置換し、赤入れしてもらいました。バットが折れて飛んで来た時のエピソードだけ、翻訳できないので割愛しました。それが以下です。
【人間性・振る舞い】
礼儀正しさ・謙虚さ:常に物腰が柔らかく、誰に対しても敬意をもって接する姿勢
ゴミ拾い
純粋な仕事愛と集中力
私生活でも仕事を中心としたストイックな自己管理を徹底「物欲がない」「運転免許を取る時間がもったいない」
仕事中の集中力が高く、切り替えが早い
【思考・自己管理】
目標達成への意識と準備:目標を細分化して行動計画を立てる「目標達成シート」
日々の日誌(仕事日誌)と自己分析、目標達成に向けてPDCAサイクルを回す
徹底したコンディショニング
最高のパフォーマンスのための睡眠時間や食事、健康管理に細心の注意
仕事以外の多様な関心:読書家
リラックスのための趣味
【仕事スタイル】
クリーンな記録達成
会社への貢献意識
何だか野球の時には美談と言おうか崇高な感じがしたものが、仕事に置換した途端に(野球も仕事であるにも関わらず)、変わった社員感が出て来るのが、何とも不思議ですw
これは失敗ですね。個人の際立った特徴を拾って来たので、それは属人的な事ばかりになります。属人的な事から標準化できる事は抜き出せないという間抜けな結論が分かりました。標準化で良く言われるベストプラクティスの横展開が、属人的領域では、強いてもほとんど成立しないであろう事が分かりました。ベストプラクティス集ならば、触発される人も多いと思いますので、ここはきっちり分けて考えなくてはならないでしょう。
私たちも8時間労働という大分仕事を中心とした生活を送っていますし、仕事日誌(日報)も、半期目標も書いていますけど、これには「やらされている(望んで就職した会社ではありますがw)」事と「望んでやっている」事という大きな違いがあります。「やらせる」事が標準化と言うならば、それが標準化なんでしょうが。。。多分、ここにも標準化=会社がやらせる事/会社にやらされる事という仮定の誤りがあります。
間抜けなりに3点(ほぼ2点)導き出せましたので、メモっておきます。
1.属人領域から標準化すべき事は導き出せない。
2.属人領域のベストプラクティスは、横展開する性質のものでは無く、参考書である。
3.会社がやらせる事/会社にやらされる事 が標準化という訳ではない。
大谷翔平くんの中に参考にできるものはあっても、標準化できるものはありませんでした。すなわち属人化領域というのは明らかに存在するという事です。となれば、標準化領域というのはこの外、すなわちドジャース、私たちで言えば会社に求める事が出来そうです。
一応整理しておきます。中=個人(私たち)、外=会社 です。
今度はAIに「ドジャースが一軍登録選手に行っている事」を拾って来てもらいました。ドジャースは、大谷翔平選手を含めた一軍登録選手のパフォーマンスを最大化するため、最先端の技術と手厚い専門チームを投入した組織的なアプローチを行っています。大谷選手個人の属人的な努力のリスト(前章)と違い、このドジャースの施策リストは全てが標準化、すなわち選手全員に提供される「舞台装置」や「楽屋」です。その証拠に、置換では意味が通らなくなるような、プロフェッショナル領域の専門用語が多い為、そのまま掲載します。かと言って野球に興味が無い方が見ても意味不明でしょうから、どなたでもざっと概観頂けるように、折りたたみ式のリストにしてみました。興味のある方は、一つづつ展開しながら御覧ください。
1. 科学的分析・データ活用
* 最先端のパフォーマンス分析施設「The Lab」の活用。
* 投球・打撃のフォームを分析するモーション・トラッキング技術やラプソードなどの分析機器を導入し、数値に基づいた指導を行う。
* 個別化されたトレーニングプログラムの実施。選手の動作効率やスイング軌道などを数値化し、最適な改善点を特定する。
* パフォーマンス科学グループを中心とした専門家による分業制。テクノロジーを活用して選手ごとの課題を可視化し、指導者にフィードバックする。
2. コンディショニング・リカバリー体制
* 理学療法士、アスレティックトレーナー、ストレングス・コンディショニング専門家などのエキスパートによる手厚いメディカルサポート。
* 怪我の予防とリハビリ、パフォーマンス向上を専門的にサポートする体制。
* リハビリ・リカバリーのための専用スペースを設け、個別化された治療を受けられる環境。
* ウェアラブルセンサーなどを活用し、怪我の予防と練習量の適切な管理を行う。
3. 栄養管理・ウェルビーイング
* 専門の栄養士とシェフによる食事の提供。選手個々の体調やトレーニング内容に合わせた栄養バランスの取れた食事で体調管理をサポート。
* 最高のパフォーマンスのための睡眠環境の整備とサポート。
4. 練習設備
* 最新のトレーニング施設への大規模な投資。
* 高性能な打撃・投球ケージ、高解像度ビデオボードなどを導入し、選手が最高の環境で練習できる設備を整える。
開いてみて頂ければ分かると思いますが、日本人の指導者大好きな「指導」という文字が入るのは、「分析機器を導入し、数値に基づいた指導」だけ、管理者大好きな「管理」という文字が入るのは、「怪我の予防と練習量の適切な管理」だけで、あくまで黒子に徹しており、選手に「やらせる」のでは無く、選手のパフォーマンスを一貫してサポートするのがドジャースの仕事のようです。
そのサポートの中には、「徹底したコンディショニング」、「最高のパフォーマンスのための睡眠時間や食事、健康管理」と、大谷選手個人の属人的な努力のリスト(前章)の中にあった、属人化領域に迄踏み込んだサポートまで含まれていますので、気になった方は今からでも開いてご覧になってみて下さい。
さて、これを選手⇨社員、ドジャース=会社に置換してみましょうか?大谷翔平くんの時と同じように、また変わった会社感が出て来るのでしょうか?w
「社員に『やらせる』のでは無く、社員のパフォーマンスを一貫してサポートするのが会社の仕事」
あれ?なんだかとっても良い会社じゃ無いですか? 「甘ったれるな!」って怒られちゃいますかね?
「そんなぁ〜大好きなベストプラクティスの横展開で、是非とも真似して下さいよぉ〜」ねぇ、みなさん☆
閑話休題 ー さて、前章「内」から分かった事と、「外」から分かった事をまとめてみましょう。大分間抜け感が無くなり、強気な感じになって来ましたw
1.仕事の役割分担 仕事には「属人化すべき領域(個人の領分)」と「標準化すべき領域(会社の領分)」の二種類がある。
2.ベストプラクティスの扱い 属人領域の成功例は、再現性が低く「参考書」に留まる。 対して標準化領域(環境・設備)の成功例は、再現性が高く、競争力強化のために即座に「横展開」すべきものである。
3.標準化の再定義 標準化とは、社員に何かを「やらせる」ことではない。 社員のパフォーマンスを一貫してサポートするという、「会社の仕事(責務)」そのものである。
さて、この強気さに多くの人が首を傾げているのでは無いでしょうか?読了時間を短くする為に、若干の丁寧さの欠如も否めません。
「ドジャースはたんまり儲けてるんだろ?でも、ウチは日本の中小企業だ。ましてやプロ野球チームでもねぇ。」
「大谷翔平は特別だ。俺たちはしがない普通のサラリーマンだ。(私もね☆)」
分かります。その違和感、私も当初そう感じたのですから。そしてその反論こそが、私たちが「標準化」と「属人化」を切り分けられていない最大の原因だった事も分かりました。
では、代表的な反論4つに絞って、反論タイムです。
反論1:「大谷選手だって、拘束時間やルール(標準化)に縛られているじゃないか!」
「彼だって試合時間には絶対にいなきゃいけないし、サインプレーなどのルールに従っている。これは標準化じゃないのか?」
回答:それは「標準化」ではなく、「契約条件(ルール)」です。
プロ野球選手も当然仕事ですから、義務拘束時間はあります。参考までにドジャースの選手の試合日の推論拘束時間とその内訳を、図1に掲載します。
これは会社が作った枠組み、すなわち選手の内では無く外にあるものであり、選手はその枠組に同意しています。但し、選手が試合に出る、ユニフォームを着る、これは「標準化」では無く「契約」であり、MLBの「ルール」です。これを守らなければ仕事では無い事は、私たちと何ら変わりはありません。
一方で、私たちが議論している「標準化」とは、同じ会社が作った枠組みでも、「会社の仕事」のことです。
図1.ドジャースの選手の試合日の推論義務拘束時間(トータル約9時間)
食事や治療・コンディショニングといったサポートが義務拘束時間に含まれ、それが契約や属人化を挟み込むように配置されている。
ドジャースが選手に提供している「栄養管理」や「移動のロジスティクス」等が「標準化」です。 一方で、日本の一般的な企業で行われている「標準化」は、属人性の範疇(内側)である「ピッチングフォームやバッティングフォーム」に、あたかもそれが「契約条件」に入っていたかのように介入する行為です。
契約(ルール): 時間、場所、コンプライアンス。
標準化(舞台): 雑務の排除、ツールの提供、環境整備。
属人化(パフォーマンス): 創意工夫、接客、分析(BiZOOPe)。
この3つを混同して、「属人化領域」にまで介入するのであれば、社員はパフォーマンスを落とし、選手であれば怪我に繋がります。
これは売り物を自ら毀損する自傷行為です。
反論2:「それは彼らがスーパースターだから特別なんでしょ? 2軍選手にも同じことしてるの?」
「ドジャースだって2軍選手はバス移動だろ? 結局、特別扱いできるのは稼ぐ奴だけじゃないか。俺たち凡人にコストはかけられないよ」
回答:掛けるコストの「大きさ」は違いますが、何にコストを掛けるのか?という「論理」は全く同じです。
工場で考えてみましょう。 「1台10億円の特殊大型機器(大谷翔平の例)」と、「1台400万円の汎用機器(新人の例)」があったとします。 10億円のマシンには、専用の空調と専属のメンテナンス部隊をつけます。 一方、400万円のマシンにはそこまではしません。
しかし、ここからが重要です。
「安いマシンだからといって、メンテナンスをせずにサビつかせたり、本来の用途以外に(例えば給湯機やリンゴの皮むき機として)使ったりしますか?」
しませんよね。 安いマシンであっても、定期的に油を差し、本来の仕事だけをさせ、故障しないように扱います。なぜなら、それを怠ると、パフォーマンスを落として工場全体の生産性に影響を及ぼしたり、壊れて買い替えコストがかかるからです。
ドジャースも同じです。 彼らはマイナー選手にも、プライベートジェットこそ出しませんが、栄養管理された食事や、データ分析による育成プログラム(標準化された舞台)を提供しています。 なぜか? 彼らを早く1軍に上げ、稼げるマシンにするため、そして「怪我(資産の毀損)」を防ぐためです。
掛けるコストの多寡の問題ではありません。 重要なのは、「リソースのパフォーマンスを最大化するための『標準化』を(その競争力に合わせて)行っているのか?」 という唯一点です。
私たち、しがない普通のサラリーマン(400万円のマシン)も、ドジャースの2軍選手と同じ、バス移動で結構ですw しかし、いくら私たちが400万円のマシンだからと言って「本職でお金を生み出す事に集中するための、最低限のシステムや環境」も与えられずに、お茶汲みさせたり、リンゴの皮むきをさせたりするのは、「資産管理の放棄」と同じです。
反論3:「彼らは野球だけやってればいい。俺達は『色々』やらなきゃいけないんだ!」
「野球選手なんて、野球だけやってればいいから楽でいいよな。俺達は営業もやって、導入打ち合わせにも出て、クレーム処理もして、経費精算もしなきゃいけない。彼らとはやらなきゃならない事の『幅』が違うんだよ」
回答:その「幅」こそが、私たちの稼ぎ(生産性)を下げている原因ですorz
「野球しかしていない彼ら」と、「色々やらされている私たち」。 稼ぎ(付加価値)が高いのはどちらでしょうか? 圧倒的に前者です(「俺は違うよ」って方、放っといて下さい(涙))。
なぜでしょうか? 「色々できる(何でも屋)」というのは、器用で便利に見えますが、経済合理性の観点から見れば「機能が純化されていない(何者でもない)」状態です。 ネジも作れて、箱詰めもできて、掃除もできる機械……一見凄そうですが、そんな機械、実際の工場には要らないでしょ?「ネジ作り」に特化し、それを超高速・高品質でこなす機械が、「高付加価値な資産」として重宝されているのです。
「プロフェッショナル」とは、何でもできる人のことではありません。 最も価値を生む「たった一つ」のために、それ以外を「捨てた(標準化に任せた)」人たちのことです。
ドジャースは、選手を「野球のプロ」、「高付加価値な資産」とするために、プレー以外の野球に関わる全て(移動手配、食事管理)を会社が引き受け、選手に捨てさせています。選手、会社共にプロフェッショナルであり、プロフェッショナル同士の関係なのです。
一方、私たちの組織は、社員を「プロ」にする事よりも、「何でも屋」の方に付加価値を感じています。日本のサラリーマンの代表的挨拶とも言える「お疲れ様です」が、忙しい事、疲れている事に価値を感じる風潮を端的に表しているように思えてなりません。
そんな価値観と風潮の中、「あれもこれも俺に回って来る、あ〜っ!忙しいッ!」などというのは、自ら「プロでは無い」と言っているようなものです。
それよりも、冒頭の大谷選手個人の属人的な努力のリストを見返して下さいよ。一点集中の凄味を感じませんか?「野球選手なんて、野球だけやってればいいから楽でいいよな。」なんて、口が裂けても言えませんよね?プロ中のプロとは、こういうものです。
反論4:「彼らは個人事業主だから。。。」
この反論には、従業員側の「諦め」と、経営者側の「思惑(?)」が混在しています。両者の言い分を見てみましょう。
【従業員側の言い分】 「彼らは契約で仕事が決まっているプロだ。契約外のことは『No』と言える。 でも、俺たちは正社員だ。会社に守られている代わりに、業務命令には逆らえない『定額使い放題』のサブスクリプションだ。雑用だろうが何だろうが、言われたらやるしかないんだよ……」
【経営者側の言い分】「個人事業主は成績が悪ければ翌年クビにできる。リスクは限定的だ。 一方、正社員は簡単にはクビにできない『固定費』だ。中には、作らせたものを全部別の人に作り直させなければならない『マイナスの工数』しか生み出さない奴だっているんだぞ! そのリスクを会社が負っている以上、その分働いてもらって、元を取らなきゃ割に合わない!」
回答:やれやれ。。。「甘ったれるな!」というヤツだぜ。
まず、経営者さんに問います。 「マイナスの工数(破壊)」を生み出す社員がいる?
まず最初に、そのリソースを選定し、長期保有資産として購買(採用)したのは誰ですか?会社です。返品(解雇)できないことを嘆いても始まりません。 そういった事が今後起こらないような、標準化を進めるのが、せめてもの責任の取り方ってもんではないでしょうか。
現に今も「マイナスの工数(破壊)」が生み出し続けられているのであれば、あなたはそのリソースの脅威に、別の長期保有資産であるリソースを晒したまま放置している事になります。これは「標準化とは、社員に何かを「やらせる」ことではない。 社員のパフォーマンスを一貫してサポートするという、「会社の仕事(責務)」そのものである。」という標準化の定義に反しています。「現場で何とかしろ!教育が足りん!」では無いのです。何故私が「購買(採用)」にも標準化という言葉を使ったのか、今ならお分かり頂けるのでは無いでしょうか。
個人事業主やレンタルの機械は、契約が終われば去っていきます。しかし、正社員(長期保有リソース)は残ります。 彼らが日々の業務で得た「経験」「知識」「顧客/取引先との関係」。これら「属人化領域(内)の資産」は、時間が経てば経つほど、複利のように積み上がって行きます。
ですが、彼らをそこ一点だけに集中させ、複利を生み出し始めるのを待たず、「誰にでもできる雑務(お金も成長も生まない仕事)」ばかりさせていたらどうなるでしょう?複利によるレバレッジを捨て、ただ年齢と給与だけが上がっていく負債を敢えて抱えるようなものです。それもリソースの問題では無く、あなたのリソースの使い方の問題なのです。「誰にでもできる雑務(お金も成長も生まない仕事)」を徹底的に引っ剥がし、「コア」に一点集中させること。 それによってのみ、あなたの抱える「固定費」は、将来莫大なリターンを生む「優良資産」へと化けるのです。(と、かちょー如きが口幅ったくすみませんorz)
そして、働く仲間の皆さん。「正社員だから仕方ない」と、思考停止して雑務に甘んじるのはやめ、できれば『No!』と言いましょう。
自らを「メンテナンス不要の安物機械」へと貶める事は、私たちにとっても、会社にとっても良いことではありません。
雇用形態や解雇規制を言い訳にして、言葉の意味も定義も知らないまま、やれ「属人化を廃せ!」だ、やれ「標準化!」だ、やれ「AI自動〇〇」だ、「現場のせいだ!」「会社のせいだ!」と思考停止している、ゆでガエルな働く仲間たち(経営者さんと私たち) 。よくよく考えて頂きたいものです。その「経営と現場、双方の怠慢」「リソースそのものの劣位では無く、リソースの使い方/使われ方の劣位」こそが、日本の生産性を下げている元凶です。
さて、不毛な反論タイムは終了です。 私たちは「属人化(ユニークな価値創造)」こそが競争力の源泉であり、それを阻害する雑務を徹底的に引き剥がすべきだという結論に達しました。
しかし、ここには現実的な壁が立ちはだかります。 「理屈は分かった。でも、ウチには社員一人ひとりをサポートするような人も居なければ、金もない。現に現場で実施できない理論は、机上の空論だぞ。」と。
その通りです。 私たちはドジャースではありませんし、大谷翔平(超高額資産)でもありません。一人ひとりに合わせて「この人は朝型だから」「この人は移動が苦手だから」と個別に環境をチューニングしていたら、管理コストだけで会社が潰れますし、そんな事されてしまったら、私たちにしても「穴があったら入りたいw」ってもんです。
では、どうするのか? リソース=個人では無く、リソース=「機能(貢献目的)」の単位で保護すればいいのです。
1.「箱(ユニット)」を用意する
「営業」「商品開発」「店舗運営」。 同じ一つの機能(貢献目的)を持つリソースを束ねて、一つの「ユニット(箱)」として扱います。 この箱は、ユニットメンバーが思う存分「属人化(プロの仕事)」を発揮し、暴れ回るためのステージです。
2.ユニットから雑務を一括で「排除」する
ステージを守るため、ユニット全体に対して、徹底して機能(貢献目的)に該当しない「雑務の排除」を行います。 例えば「営業ユニット」ならば、「売る人が売ることに」集中できるよう、「旅費精算」「日報作成」「在庫確認」といった一切のノイズを、ユニット単位で一括して引っ剥がしてしまいます。引っ剥がす為のコストを厭わないで下さい。専任の事務スタッフを雇ったり、アウトソーシングしても構いません。これから生まれる複利を考えれば、安いものです。 個人の工夫(これも上司が大好きな言葉ですw)に任せるのではなく、「ユニットのインフラ」として、雑務を個人から物理的に排除してしまう事で、「人間、機嫌良く働いている時が一番生産性が高い」状態を実現するのです。
3.バッファを共有する
雑務を排除すると、ユニット全体に一気に「空き時間」が生まれます。 これを「個人のサボり時間」「ヒマそうだから旅費精算位やらせよう」と、新たな雑務で埋めてはいけません。これは「ユニット全体のバッファ(余力)」として機能するものです。
機能の一部を切り出して来る事で、機械のように管理し易い単一機能にしたとは言え、「営業」という業務だけでも充分複雑なものですし、機械と違って「不確定性」を持つ人間というリソースですから、誰かが不調でマイナスを出す日もあるでしょう。その時は、バッファの余力を使ってユニット内でカバーし合えばいい(相互補完)。 全員が好調なら、その余力を使って、新しい提案戦略や、売り場での実験といった「属人化の極致(未来への投資であり、創作活動)」に時間を使えばいい(複利運用)。
管理者は、個人の顔色を伺う必要はありません。「ユニットごとの出力(成果)」と「バッファの残量(健全性)」だけを、監視すれば良いのです。
これで、冒頭の部長への回答が用意できました。 もし、次の評価面談で「属人化を廃して下さい」と言われたら、胸を張ってこう答えようと思います。
「はい、部長のおっしゃる通りです。 私のチームでは、メンバーに貼り付いている価値を生まない仕事の『属人化(雑務)』は、徹底的に排除しようと思っています。 定義上、この排除こそが標準化です。ついてはご相談なんですが、実はその価値を生まない仕事の殆どが、私由来では無く、会社由来のものだという事が分かったんです。そのリストがこれなんですが。。。是非ともこの排除にご協力頂けませんでしょうか?
……まあ、そこまで言うと角が立つので(笑)、心の中でそう呟きながら、上辺だけでも涼しい顔して成果(ホームラン)を出してやりますよ。部長も働く仲間ですしね 🎶
男なら(もちろん女性も)、簡単にコピペ出来るような仕事、簡単にコピペできるような人材で終わる人生なんて、真っ平御免でしょ?