お客様ニーズが見える ID-POS分析。
顧客PFVのPFVは、Purchase Feature Value(購買特徴量)の略です。
顧客ランクが持つ売り手都合の恣意性(いわゆる商品視点)を廃し、顧客の購買実態という買い手側の都合(いわゆる顧客視点)から見た、より自然で、ペルソナに近い顧客セグメントとして考案されました。
各PFVセグメントには小売業さまにて名称をつけていただいておりますが、運用上の理由から、導入時に設定したデフォルト名(仮称)のままになっているケースも見受けられます。
そのため、PFVの名称をそのまま鵜呑みにするだけで無く、みなさま自身の顧客理解を反映した、より良い提案に繋げて頂くために、ここでは、PFVセグメントの名称を独自に解釈するために必要な操作方法を解説させていただきます。
BiZOOPeで利用可能な顧客セグメント(「年代」「ランク」「PFV」)には、以下の共通ルールがあります。
計算頻度: 全ての顧客セグメントは、月曜日から日曜日を1週として、週1回計算されます。
集計単位: 「ランク」および「PFV」については、先週から13週前までの13週間を集計単位として計算されます。
定義の統一: 「ランク」「PFV」は、顧客のお店の利用をベースに計算されています。(部門ごと、カテゴリーごとのランクやPFVは存在しません。)
これは、意思決定上の混乱を避け、何よりもお店と顧客の関わりを重視するためです。
時系列管理: 全ての顧客セグメントは週ごとに時系列で管理され、データ保持期間内は保持されます。
適用基準: 分析では、期間指定されたTo側の日付に一番近い締まった週の顧客セグメントが適用されます。
「その他」の発生: 顧客セグメントの計算時(集計期間)と、分析時の指定期間にズレがあった場合に加え、セグメントの計算後に該当期間の購買データが後からシステムに投入されたケースでも、「その他」が発生し集計されます。
ここではまず、基本的な「顧客PFV参照」の閲覧方法を示しながら、PFVセグメントの名称や定義について解説していきます。
メニュー画面下部、左から二番目(図の赤丸)が「顧客PFV参照」ボタンです。こちらをクリックして開きます。
次の図が「顧客PFV参照」の1ページ目です(画面解像度やブラウザの拡縮によって表示は異なります)。 この画面で表示されているのは、開いたタイミングの最直近で計算されたPFV情報であり、グラフ中のプロットポイント(点)は、全て一人ひとりの顧客を表しています。
ID-POSにおける売上方程式は「売上 = ID数 ✕ ID回数 ✕ 客点数 ✕ 点単価」です。顧客(ID数)をペルソナに分割(セグメント)するには、各々の購買実態を示す「ID回数」「客点数」「点単価」でセグメントすることが最も自然です。
グラフは、本来この「ID回数」「客点数」「点単価」の三本の軸を持った三次元グラフとなりますが、可読性向上と分析の焦点化のため、その内の二次元を切り出して表示しています。
上のグラフは、売上方程式中の点数の内訳である「ID回数 ✕ 客点数」を切り出しています。
また、下のグラフは客単価の内訳である「客点数 ✕ 点単価」を切り出しています。(残りの軸の組み合わせである「ID回数 ✕ 点単価」には、現状意味が見出だせていないため、非掲載としています。)
図のロングテールなグラフをご覧いただければ分かる通り、本来顧客という存在は、ランクが規定するような四角いグリッドの中に収まる存在ではありません。
形成手法: そのため、PFVセグメントはクラスター分析(非階層型)によって形成しています。
クラスター数: 意思決定上の混乱を避けるため、各指標の「高低」を仮定し、「ID回数の高低 × 客点数の高低 × 点単価の高低 = 2 ✕ 2 ✕ 2 = 8クラスター」としています。
セグメント数: 顧客PFVにおける基本の顧客セグメント数は、分析時の「その他」を除けば8セグメントとなります。
色分け: 図のグラフ中のプロットポイントの色分けは、この8セグメントごとの色分けとなります。(重なってしまい色が確認できないセグメントが出る場合もあります。)
次の図が「顧客PFV参照」の2ページ目です(画面解像度やブラウザの拡縮によって表示は異なります)。この画面は、PFVセグメントの具体的な構成比と実績を確認する役割を果たします。
図の上部の円グラフは、各PFVセグメントのID数構成比を示しています。前図のプロットグラフ(2−2)では見かけ上多数派に見えた黄色やピンクのセグメントが、実際には少数派であることなどが認識できます。
PFVの目的: 顧客PFVが目的とするところは、顧客をモノのように「均等に分ける」ことでも、「誰が大事で、誰が大事ではないか分ける」ことでもありません。顧客理解のため、顧客という存在の「在り方」を分けることですので、このような不均等な分割となりますこと、ご了承願います。
図の下部が、小売業さまの管理者権限を持つ方が、セグメント名をメンテナンスする画面です(セグメント名は一企業につき1つだけ設定可能)。一般ユーザーさまには閲覧のみが許可されています。
デフォルト名の問題: セグメント名がサイバーリンクスが導入時に付けたデフォルトのままとなっている小売業さまもあります。そのため、その意味を解釈することにあまり意味はありません。なぜなら、それはおそらく提案先のバイヤーさんも知らない言葉だからです。
提案への活用: 図のセグメント名(サイバーリンクスが最近になって付け始めたデフォルト名)のように、提案先のバイヤーさんにも理解できる名称を、ご自分なりに解釈して提案書に反映していただく方が無難です。
各セグメントが、平均しておおよそどのような買い物をしているかがKPIとして示されています。
課題と対応: 惜しいことにID回数(売上方程式の重要な要素)が表示されていません。お手数をお掛けしますが、もしご自身でPFVの名称を考え、提案書に反映させようとするならば、この先は「顧客セグメント ✕ KPI」でご覧いただくこととなります。(ご要望をいただければ、エンハンスにて「顧客PFV一覧」にID回数を加えさせていただきます。)
各PFVセグメントの持つ購買傾向(数値の内訳)を理解するためには、メニュー画面の左から三番目の「顧客セグメント ✕ KPI」(お猿さんが海を見ている絵)を使用します。
PFVの解釈は、「現在の顧客」に対する「未来の提案」を行う為のものです。よって期間については、直近を指定するのが基本となります。
集計期間の基本: 顧客PFVが13週間で集計されていることから、その内訳を見るという用途においては、顧客PFVの定義期間と一致する13週で集計するのが正解です。
「その他」の最小化: 些細なことですが、「その他」セグメントをなるべく表示したくない場合は、計算ロジックに合わせ月曜日から日曜日を意識して集計期間を指定してみてください。
(留意点) それでも、顧客PFVがある時点で固定化されたものであるのに対し、購買履歴データは後追いで追加されることもあるため(再計算は行われません)、「その他」の発生は不可避です。
顧客PFVは、顧客の購買実態を示すセグメントですが、ここまでは簡単のため「お店の利用」と書いてきました。しかし厳密には、顧客は複数の店舗を掛け持ち利用するため、顧客PFVは「企業(屋号)と顧客の接点の在り方」を示しています。
顧客PFVがこの企業全体としての接点の在り方をベースに計算されていることから、その内訳を見るという用途においては、以下の指定が基本となります。
商品分類: 全分類での集計が基本です。
店舗: 顧客の「企業(屋号)との接点全体」を正しく捉えるため、全店舗での集計が基本となります。
オプションは、分析に必要なKPIを選択する部分です。ここでは、PFVの定義軸である「ID回数」「客点数」「点単価」を確実に選択します。
顧客セグメント: まず、顧客セグメントとして「PFV」を選択することを忘れないようにしてください。
評価項目:
ID回数: 顧客がどのくらいの頻度でお店を利用しているかを示します。
点単価と客点数: 一度の買い物で平均していくらくらいのものを、何点程度カゴに入れているかを示します。
これら3つ(ID回数、点単価、客点数)の指定がマストです。
セグメントサイズの把握: セグメントサイズの把握のために、「ID数」を指定に入れておけば、売上方程式の根源指標全てを網羅したことになります。
特段の意図がない限り、最低限この4つの指標にチェックが入っていることを確認し、「分析」ボタンをクリックしてください。
分析結果は、各PFVを一つのペルソナと見立てた時の、13週間中の来店回数と一回の買い物のカゴの中身を数値で表示しています。
これらの指標は、以下の二つの目的のために活用されます。
顧客理解(ペルソナの理解): 来店回数やカゴの中身といった購買行動の具体的な数値は、そのセグメントがどのような「在り方」の顧客なのかを理解するために用いられます。
経済合理性の計測: ID数(セグメントサイズ)は、そのような利用を行っているセグメントの顧客規模を示すため、提案の規模や資源投下の判断といった経済合理性を計るために用いられます。
基本的には、これらを用いて、現在のPFV名に対応するあなた自身のPFV名を、あなた自身の顧客理解の下、推論していただくこととなります。(AIに推論を助けてもらうのも一つの手です。)
顧客理解を業務上の成果に結びつけるためには、当然、売り手視点から顧客PFVを解釈する(売り手にとって都合の良い顧客とそうでない顧客を分ける)ことはご法度です。
ここは、あくまでも買い手でもあるあなたの視点に立ち返り、各PFVの在り方を「困り事のあらわれ」あるいは「価値観のあらわれ」として捉えていただくのがコツとなります。
より単純な「ランク」で例えれば、売り手視点ではロイヤル顧客は「良い顧客」や「自店を好んでいる顧客」、非ロイヤル顧客は「悪い顧客」や「育成が必要な顧客」という認識になります。この認識からは、「ロイヤル顧客に報いる」「非ロイヤル顧客を育てる」といった、差別化に欠けたあいまいで表層的な政策しか生まれません。
しかし、買い手視点に立つと、ロイヤル的な購買行動の裏には、単に「この店が好き!」という人たちばかりでなく、「子供が食べ盛りで家計が厳しい」「移動手段が限られ、他に選択肢がない」といった事情により(本意では無いが)「ロイヤルたらざるを得ない」人たちも存在することが容易に想像できる筈です。
同様に、非ロイヤルな購買行動の裏にも、「遠いから/高いから」といった人たちがいる一方で、「少量しか消費できない」「薬粧店としては好きだが、食品を買うことに抵抗がある」といった、(好きではあるが)「ロイヤルたり得ない」人たちの存在も容易に想像できる筈です。
「PFVの中に困り事や、本意でない思いが一切含まれていないだろうか?」と考えてみることです。
なぜなら、困り事の解消こそが、みんな大好きソリューション!強力な政策に繋がるからです。
「子供が食べ盛りで家計が厳しい」人たちにどうしたら喜んでもらえるだろうか?どんなお手伝いができるだろうか?
「移動手段が限られ、他に選択肢がない」人たちに、その単一の選択肢こそがベストだと思ってもらえるようなソリューションは?
「少量しか消費できない」人たちに、無駄を出さずにお得に消費してもらうには?
「食品を買うことに抵抗がある」人たちの心のハードルを下げ、気持ちよくお得を享受してもらうには?
困り事は山積なのに、みんな最終消費者に「プラス一品買わせる」とか「ちょっといいものを買わせる」とか「30代に〇〇を買わせる」ようなことしか提案していないでしょう(商品視点)。
顧客PFVは、ソリューションの種である顧客理解のために存在します。
顧客PFVを是非、あなたの競争力の為にお役立て下さい。
興味のある方は以下のページも併せてご覧下さい。
「顧客は育たない!」顧客セグメント✕顧客セグメントのご紹介
年代と組み合わせる事で、顧客PFVのペルソナをより深くご理解いただけます。
「巨人・大鵬・玉子焼き」商品視点から顧客視点への訳
今、なぜ商品視点から顧客視点へと変わらなければいけないのか、その訳を平易な文章で解説しています。