本稿で提示した陳列総数や論理奥行き個数は、システムに送信されるデータをベースとしている。しかし現実の実装において、入力されるデータが「非会員を含めた全POSデータ」なのか、それとも「会員データ(ID-POS)のみ」なのかは、BiZOOPeを利用するユーザー企業によってまちまちである。これは、本システムがデータ処理量に応じた従量課金制を採用しているため、コストを抑える目的で会員データのみを送信する企業も少なくないからだ。
そこで本システムでは、まずは会員比率に応じて全体のスケールを現実の物理店舗のボリュームへと補正するための「全体の在庫係数(デフォルト=1.0)」をユーザー側で任意に設定できる仕様とする予定である。
重要なのはその先である。現実のスケールに合わせた上で、予測不能な異常需要(μ+2σの波)のリスクをどう吸収するか。全商品に一律で安全在庫を積めば、再び過剰在庫と前出し作業の泥沼(自家生産)に陥ってしまう。 そこでBiZOOPeでは、「代替のネットワーク」をシステム仕様として直接実装するため、レコメンドの階層に応じた「リスクの傾斜配分」を全体の在庫係数に乗じて行う予定である。
1stレコメンド(目的範囲全体、かつ選択範囲を代表する商品):1.4倍(+2σ相当) カテゴリー全体に押し寄せる非会員の変動や最大の波を受け止める「第一の巨大な盾」として機能させる。
2ndレコメンド(選択範囲のみを代表する商品):1.2倍(+1σ相当) 特定のニーズ内で発生する波を受け止める「中規模の盾」として機能させる。
3rdレコメンド(※)、およびレコメンド無し:1.0倍(係数補正なし) これらは最低品揃えとして多様性を担保しつつ、無駄な在庫を持たない。基礎バッファのみで、最終的な「受け皿(網の目)」として機能させる。 (※3rdレコメンド:選択範囲中の人気No.1ではないが、採用順による単純累計でカテゴリーの総利用者数になるまでの商品。1st・2ndの累計では総利用者数を網羅できない場合のみ発生する擬似的な最低品揃えを指す)
さらに、計算上の算出値が極端に小さい補完商品におけるオペレーション上の致命的な欠陥を防ぐため、システム仕様として「最低陳列量(総陳列在庫数)の下限は2個とする」という原則を設ける予定である。 もし総陳列在庫数が「1」であれば、1個売れた瞬間に売り場は完全な欠品となり、現場は「1個売れるたびにバックヤードから1個補充する」という終わりのない多頻度補充を強いられる。下限を「2」とすることで、1個売れても棚にはもう1個残り、次の定時補充まで欠品を免れる猶予(オペレーションの平準化)が生まれる。買い手の認知(フェイシング表面積)を邪魔することなく、売り手の作業リズムを守るための、これもまた重要な仕え様である。
ユーザーのコスト都合(従量課金)というシステム的制約を全体の在庫係数でクリアしつつ、役割に応じた「盾の厚みの傾斜」と「最低2個という物理バッファ」を掛け合わせる。これによって初めて、過剰な前出し作業を現場に強いることなく、売り場全体としての機会損失を美しく防ぐ「群のポートフォリオ」が、具体的な計算式(仕様)として完成するのである。