interview - 3

This is an interview that appeared on an online Japanese site YOMIURI ONLINE トップへ - circa 2009/2010

http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/yumiyori/20100806-OYT8T00663.htm

It appears to be about Nobu's own compositions.

第25回 辻井伸行さん

将来的に作曲も

東京・銀座の「ヤマハアーティストサービス東京」で

シンガー・ソングライターの松任谷由実さんの対談企画「yumiyoriな話」。今月のゲストはピアニストの辻井伸行さんです。作曲に力を入れて いきたいという辻井さんが、ホストのユーミンさんを質問攻めにする異色の展開。対談終了後には、「春よ、来い」などを演奏、ユーミンさんが感涙にむせぶ場 面もありました。(構成・田中誠)

松任谷(以下M) 家の近所にブーニンさんが住んでらっしゃるんですよ。ピアノの調律の方がうちと一緒で、時々お話をうかがったりするんです。

辻井(以下T) 小さい頃、ブーニンさんが弾く「英雄ポロネーズ」が大好きで、この曲が流れると、ふすまを けってリズムを取っていたそうです。CDに傷が付いたのでほかの人のをかけたら何も反応しなくなって。母が疑問に思って、試しにもう1回ブーニンさんのを かけたら、上機嫌で足をバタバタしたので、「この子は演奏家を聴き分ける力があるのかも」って思ったみたいです。

すごい。絶対音感とかテクニックとかじゃなくて、スピリットをくみ取るというか、ソウルを理解するってい うか。大事なのはそこですよね。辻井さんが、ショパンの生家で「静けさを聴いた」と言ってらして、感じ方がすごいなあって思った。観客の反応も今日のは違 うと分かるんですよね。

国によっても違います。(バン・クライバーン国際ピアノコンクールの)優勝後に行ったドイツでは、「どう いう演奏をするんだろうな」とか、お客さんの思ってることをひしひしと感じました。ヨーロッパはそういう厳しい目で聴いている。皆さん正直ですよね。いい と思った演奏にはいい拍手を送るし、あまり良くないとそれなりだし。

名だたるコンテストで賞を受けると、自動的にツアーが決まって、忙しくなりますよね。まだあまり先のことは考えませんか。

辻井伸行さん

つじい・のぶゆき ピアニスト、作曲家。 1988年、東京都出身。10歳でプロデビュー。2009年の「バン・クライバーン国際ピアノコンクール」で優勝し、時の人となる。「マイ・フェイヴァ リット・ショパン」に続く、ソロアルバム「展覧会の絵」をエイベックスから9月に発売する。

今はコンサートをして、レパートリーを増やして、世界に通用するピアニストになっていきたい。将来的には作曲もしていきたいと考えています。ユーミンさんはいろいろな曲が書けて、本当にうらやましい。

え、急に困っちゃう。

母がユーミンさんの大ファンで、僕も小さい頃から聴いてて、詞と曲の関係がすごくいいなあって。どういう時に曲が思い浮かぶんですか。

うまくいってる時は、できる順序は関係なく、出来上がったものが一つの温度とか映像とか世界になってるかなあと思うんです。でも、ラフマニノフの映画には、作曲することを反対されるシーンがありますね。作曲と演奏は相反するんじゃないですか。

そうですね。でも、即興演奏なんかしてると、自分の作った曲は自分の思うままに表現できるし、それも楽しいんだなって思いますね。

一番描きたい世界はどんなものでしょうね。

外に出るのが大好きで、山の空気を吸ったりとか、鳥の鳴き声を聴いたり、海外旅行に行った時なんかに、イメージが思い浮かぶんです。ユーミンさんはどういうことをイメージして曲を作っているんですか。

私、母親が不良でして。小学生の頃、六本木に飲みに行くお供に連れて行ってくれたんです。夜中に外に出たら、首都高速の下の霧の中に東京タワーが見えたんですよ。都会的な曲を作るのが好きなんですけど、その日の霧の匂(にお)いが浮かんでくることはあります。匂いが歌に集約されると、受け手の記憶に結び付きやすいですよね。それを探って封じ込めようと思っています。

ピアノを弾きながら作るんですか。

まずは鼻歌ですね。小さいレコーダーをバッグの中に入れておいて、メロディーが浮かんだらコソコソっと陰に隠れて歌って、「ここにはAマイナー」と注釈を入れておいたり。人が歩いてると恥ずかしいんだけど。

最初のアルバム(「ひこうき雲」)とか、ショパンの楽譜に色が似ていると母が言っていました。

ショパンは好きですね。クラシックの影響ってあったと思うんです。ロックやポップスは、クラシックのいいとこ取りなんですね。ギターやってみたらどうですか。辻井さんにこんなこと言うのもなんだけど、作曲の話になったので。エレキギターとか弾いてほしいな。

昔からいろいろな楽器に興味を示して、ウクレレも弾いたことがあります。小学2年生まではピアノとバイオリンを両方習っていた時期もありましたし。ギターは、弦を押さえると指が痛くなりそうな気が……。やっぱりピアノの方がいいですね。

いい曲 失恋から

ヨーロッパの観客が厳しいと聞いて、素晴らしいなと思いました。日本人って、目が不自由なのに、ってところに感動するんですよね。

小さい頃から「盲目の天才少年ピアニスト」とか、そんなことばかり書かれて嫌でした。僕は自分を天才だと思ってないし、音楽には障害のあるなしは関係ないと思う。やっぱり一人のピアニストとして認められたい。

よく分かります。ただ、お母様の愛情というのは並大抵ではないと思う。ご両親からも、師事した先生たちからも、すごい量の愛情を受けてるんだなと思います。

いい環境に恵まれて良かったなと思います。両親は自分のやりたいことを何でもやらせてくれるし、「練習し なさい」とか一切言われたことがないし。ピアノをやってらっしゃるお母さんは厳しくて、コンクール会場に行った時に、「こういう家に生まれたら絶対ピアノ やめてたなあ」と思うこともあります。

ステージママになるってことと、愛情を注ぐってこととは違うんですよね。「幸せの天才家族」ですよね。ピアノの天才とか、子育ての天才とかじゃなく、楽しいところには楽しいことが集まってくるという。恋をするとどうなるんでしょうね。曲ができちゃいますね、きっと。

うーん、なかなか出会いが……。ユーミンさんみたいに、いいパートナーとの出会いがあるといいですよね。

来る時はドカンと来ますよ。でも、私の経験からいくとね、失恋する方がいい曲書けますよ。

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