上泉伊勢守(4)

上泉伊勢守が柳生へ行った時のことを、ある書には次の様に書いてある。

上泉伊勢守は虎伯という弟子(疋田文五郎のこと)を召連れて大和に行った。時に柳生氏は上方に於て兵法無類の上手であった。これ幸いと上泉と仕合を望んだ。上泉が、

「さ様でござらば、まず虎伯と立合い召されよ。」

と自分は再三辞退した。

柳生はそこで、虎伯を相手に使ったが、虎伯が、

「それは悪い。」

と三たびまで柳生を打った。

そこで、こんどは是非上泉と仕合を所望したので、上泉も辞退しかねて立合ったが、向うとすぐに、

「その太刀を取りますぞ。」

といって奪い取ってしまった。

そこで、柳生が大いに驚いて、三年まで上泉を止めて置いて、新陰の秘伝を受け継いだ。

(武節雜記)