陸中海岸での出逢い
昭和55年5月、「山田」の地名に魅かれて行った
Rikuchu-Kaigan Coast Iwate Prefecture, Japan.
CREATE:04/09/21 12:45 Update:2019/12/10
思い出のローカル線 信沢あつし
Memories of railroad A.Nobusan
昭和55年5月、「山田」の地名に魅かれて行った
Rikuchu-Kaigan Coast Iwate Prefecture, Japan.
CREATE:04/09/21 12:45 Update:2019/12/10
思い出のローカル線 信沢あつし
Memories of railroad A.Nobusan
釜石から陸中大橋まで行ったりもしたが、その日は海岸や漁港なども散策した。まずは海岸を探して行くと桜で満開の小山が見えてきた。ポコンと島のように少し海に張り出した桜の山の手前を観光船が行く。そのあとをミャー・ミャーと鳥の群れがついて来る。ウミネコのようだ。
海のない群馬生まれの群馬育ちであるから、海辺の全てが新鮮だった。漁港の中を歩く。干物、しらす干しなどなど…漁港では当たり前の光景なのだろうが、面白がって写真を撮った。
旅館の宿泊客は私だけのはずであったが、戻ってくると先客がいるようであった。昔ながらの旅館だから洗面所やお風呂は共同である。
「○○ちゃ~ん。○○ちゃんでしょ!」
荷物を置いてトイレに行き、洗面所で手を洗っているとお風呂場から女性の声が聞こえてきた。私と友達と間違えたらしい。ちょっと気になったが返事をすることもなく、さっさと部屋に戻る。
しばらくして夕食になると、隣りの部屋から女性二人の声が聞こえてきた。旅館のおばちゃんも、この晩は隣りの部屋を入れて3人だけだとなどと話してきた。
「あんたなら安心だから、あの娘たちと一緒に行ってくれないか。ちょっとあの娘たちにも話してみるから…」
と、おばちゃんは戸を開けっ放しで、私に着いてきなさいといった感じで隣りの部屋へ。
「あんたたちだけでは心配だから、隣りのお客さんにも…」
部屋に入ると、早速説明を始め、私に気がつくと、2人に私を紹介してくれた。
何でも、旅館のおばちゃんの息子さんと同級生という2人が、彼女等にこの旅館を紹介して、飲みに誘ったのだそうだが、おばちゃんは知らない2人だったので、心配だから私もということを思いついたようだ。
そんなわけで、初めて会った2人と挨拶的に少々の会話を交わす。洗面所にいたなぞの人物は私であることも教えてあげた。しかし、あのときは私も応え様がなかったし。
駅から近いであろう小さな居酒屋の末席にちょこんと私は座っていた。目の前のコンロの上には小さなツブガイがコロコロと並べられていて、それを枝豆かのように地元の2人は摘みながら飲みだした。2人はおばさんが心配するようなタイプではなく、私にもツブガイやビールを勧めてくれて、旅館で会ったばかりの2人も、自分の弟のように扱ってくれた。
初めて会った人に囲まれて過ごしたものの、疲れていた性もあるのだろう、不思議なほどに解けこんで楽しんだ。
翌朝は意外なほどに目覚めは良く、体調も良かった。そして朝食の時におばちゃんからまた「今日も一緒に行って欲しい」とお願いされた。
女の子たちは…と心配したが「その方が楽しい」と同行することとなった。
そう言ってもらえれば、気楽なもので、旅館の前で記念撮影をしたりして、地元の二人組みを待ったのであった。
しかし、面白いことになったものだ。
CREATE: 2004/09/21 12:45
「山田」という地名に魅かれて行った「陸中山田」。駅のホーム脇の看板を見て予約した旅館は大槌駅だった。旅館を予約して午後は陸中大橋に向かったが、列車の待ち時間で町を歩いていると「キビだんご」という声が聞こえてきた。その声を頼りに走って行くと、焼き芋屋のように軽トラでキビだんごを売っていた。
「この黒いのはなんですか?」と聞くと、「知らないのか?」といった顔をされ、黒ゴマだと教えてもらった。列車に乗ると、正面におじいさんと、お孫さんが座った。だんごを3本も食べきらないから、私は黒ゴマを選んで、2本を2人にあげた。おじさんは少し怪訝そうな顔をしたが、仲良く3人でおだんごを食べたのだった。
2019/12/10 信沢あつし