桑畑のなかのインクライン
昭和50年4月 秩父「武州中川」の三峰石灰
Incline in the mulberry field. 500 mm narrow gauge railroad.
CREATE:1:10 97/02/21 Update:2019/11/26
思い出のローカル線 信沢あつし
Memories of railroad A.Nobusan
Incline in the mulberry field. 500 mm narrow gauge railroad.
CREATE:1:10 97/02/21 Update:2019/11/26
思い出のローカル線 信沢あつし
Memories of railroad A.Nobusan
高校時代だと思うが、秩父鉄道で三つ峰口まで何度か行った。その途中で、何時も気になる駅があった。「武州中川」であった。石灰を積み込むホームがあり、ホームにはレールが埋まるように敷いてありトロッコが置いてあった。
3度目ぐらいであろうか、「武州中川」で途中下車をした。駅舎は貨物ホームと反対側にあり、駅舎を出るとぐるりと回って、踏み切りを渡り、貨物ホームの裏に出た。
貨物ホームを覗きたかったが、裏からは覗く事も出来なかった。裏手を歩いてホームの反対までいくと、さっきまで桑畑が続いているだけだと思っていた所に、2本の線路が突然現れた。良く見ると所々にトロッコが止まっていた。ホームを出た線路は、よれよれのポイントで2本となり、桑畑の中をまっすぐに複線のまま伸びていた。彼方には工場のようなものがあった。
線路にはワイヤーが張られ、緩い傾斜地ではあるが、インクラインとなっていた。複線をたどっていくと何時の間にか工場の中にいた。線路はまたポイントで一つになり、工場の建物の中に続いていた。ここには大きなプーリーとモーターがあった。
こんなもの動くのかと思っていたら、事務所から数人の人たちが出てきてスイッチを入れた。するとプーリーが動き、ワイヤーが動き、桑畑の中のトロッコがいっせいに動き出した。何台かのトロッコには作業員が乗っていた。
細いレール、ジョイントのボルトも1本でそれもちゃんと締めていないような線路をヨタヨタと走るトロッコ。機関車も無く、シュルシュルとワイヤーの音。とんでもない鉄道があったものだ。
珍しいので色々と見せてもらったが、「前橋から来た。」と言ったら、駅前に「石沢という店があるだろ。…イシザワと書いてとコクザワと読む…」と相手の話がはずみ過ぎて、楽しかったが、まだまだ見たかったところが見られずに帰ってきた覚えがある。
でも、それもまた思いでである。
当時はトロッコと云えば、KATO WORKSを想像していたのだが、レールの間に延びたワイヤーには、正直、ちょっとがっかりした。
2019/11/26 信沢あつし