ループ線の体験
昭和55年5月 釜石線 陸中大橋駅
思い出のローカル線 信沢あつし
CREATE:99/08/31 02:40 Update:2019/12/08
Memories of railroad A.Nobusan
思い出のローカル線 信沢あつし
CREATE:99/08/31 02:40 Update:2019/12/08
Memories of railroad A.Nobusan
宮古ではまだSLが走っているらしい。そんな話しも聞いていた。5月の連休を使って、陸中海岸を見に行こう。そうだ、昭和55年の5月のことだった。5日、「5555」の日は、会社の先輩の結婚式だった。
いつものことで、あまり考えずにカメラバックと時刻表を持って両毛線に乗る。小山から水戸に、そして終電と夜行を乗り継いで盛岡に。そして朝一の電車で宮古に向かう。
山の中を列車は走る。宮古が近づいても、いつまでも山だった。川の上を見慣れない鳥が飛んでいた。どうも、かもめか、うみねこのようだった。こんな山の中になぜと思っていると宮古に着いた。山は突然終わり、海辺の町となっていた。
宮古から何処へ行こうか。路線図を見ると「陸中山田」という駅が目に付いた。山田という地名にひかれて行った。駅に着き一つの旅館の看板が目に付いた。そのまま旅館に電話をし、今晩の予約を入れる。宿さえ決まれば、気が楽だ。次の列車までの待ち時間、その辺りをうろうろしてから、釜石を経由して、陸中大橋まで行った。
途中列車の中から、鉱山の専用線は無いのか、キョロキョロする。一ヶ所「あっ!」と思うところがあったが、今回は時間が無い。とにかく大橋まで行く。山に突き当たったところに、駅があった。ホームの先はすぐにトンネルだった。改札を出ると人気の無い殺風景な町だった。ぶらりぶらりと歩きながら、ホームの先に消えた列車の出口を探した。
しばらくすると、山の上にディーゼルカーの音が響き、その方向を見上げると先ほど乗って来た列車が現れ、山をぐるりと回るように消えていった。
今度は、帰りに乗る列車を撮影する。トンネルに入ってから、駅に出てくるまで、時間はありそうだが、あまり駅から離れてしまっては、列車に間に合わない。近場で撮影場所を探す。
山の向こうからディーゼルエンジンの音が聞こえ、しばらくすると列車が現れた。数枚の写真を撮ると、急いで駅に向かう。ホームに着いてもしばらく時間があった。構内のDLを撮ってから、トンネルを見つめていると、先ほど撮影した列車が今度は正面から現れてきた。まるで鉄道模型を見ているような、なんとも言えない、楽しさだった。
この時の一番の目的は陸中大橋で鉱山鉄道の跡を探すことだった。これはただ、時間があったので下見的に訪れ、翌日再び訪れるのを楽しみにしていた。ところがである。旅館に着くと、同じ旅館に泊まっていた大阪のお姉さんたちと地元のお兄さんたちと飲みに出て、翌日は彼らのドライブに付き合ったのであった。
もっと釜石や陸中大橋を歩きたかったが、それはそれで楽しい人生を与えてもらったと思っている。
2019/12/08 信沢あつし