前略御免下されたく侯。
私儀今回エリオット及びハッチ会社と協同して日本字タイプライターを製造致し候につき其の機械の書きし見本相添え御披露申し上げ候。 機械の構造は堅牢にして、用い方はたやすく何人にても二、三時間の実習の後は自由に用い得べし。 今更申すまでもなくタイプライターはヨーロッパ及びアメリカに広く用いられ、其の特色の一、二を挙げれば、 速やかに書き得ること達筆の人も及ぷべからず、明らかに書くこと能書の人も比ぶあたわず、故にこれを読む者の時を省き誤りを除き其の便利なること、 一々挙ぐるを要せず実に文明の進歩に欠くべからざる機械と存じ候。 我等些か感ずるところあり、世に先んじて日本字タイブライターを造り侯へぱ御賛成ありて御友人に御披露下され候へば幸福に存じ侯。 我等はカタカナ・タイプライターも製造仕り侯。猶機械の代価及びそれに関して記したる目録御申越し次第差し上ぐ可く候。
先ずは貴意を得たく斯の如くに御座候也。
一八九九年八月九日 小西信八殿
(原文は、ひらがなタイブライター印字)
小西信八氏(こにし のぶはち) 東京盲唖学校校長
東京高等師範学校(今の文理科大学)同窓会【若戻会)会誌第二〇〇号(明治三十二年十月二十日発行)にて紹介された。