肩関節周囲炎(五十肩)とは
肩関節周囲炎(通称:五十肩)は、肩関節の周囲にある組織(腱板、滑液包、関節包など)に炎症が生じ、痛みや可動域制限を引き起こす疾患です。
主に40~60代の中高年に発症し、特に原因が明確ではない特発性と、外傷や手術後に生じる続発性に分けられます。
主な症状
痛み
安静時、運動時、夜間に増強することが多い
関節のこわばり
特に肩関節の外旋や挙上が制限される
生活への影響
「服の着脱」や「髪を結ぶ」などの日常生活動作(ADL)が困難になる
一般的な治療法
《保存療法》
保存療法が第一選択とされ、多くの患者さんはこれで症状が軽減しますが、1〜3年かかることもあります
薬物療法
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
痛みと炎症を抑える
・ステロイド注射
関節内または滑液包内に投与し、炎症を迅速に軽減
理学療法
・温熱療法
温めることで血流を改善し、筋肉の緊張を和らげる
・運動療法
関節可動域を維持・改善するためのストレッチやリハビリで、初期は他動運動が中心、痛みが軽減してきたら自動運動を追加する
生活指導
・痛みが強い時期には安静を促し、過剰な負担を避ける
・日常生活で肩の過剰使用を避ける姿勢指導
《手術療法》
保存療法で改善しない場合、関節鏡視下手術による滑液包切除や関節包の癒着剥離が選択肢となりますが、手術は最終手段とされます
血管内治療(カテーテル治療)
血管内治療は、近年注目されている五十肩の治療法です。
肩関節周囲炎に伴う炎症性メディエーターの抑制や正常血流改善を目的に、カテーテル治療が有効であることが様々な論文で報告されてきています。
この方法は数週間で痛みの軽減を実感することが期待されるため、従来の保存療法で効果が限定的な方や早く痛みを減らしたい方、夜間痛で眠れない方に適しています。
※外来で問診・診察し、エコーで『もやもや血管』を確認します
※場合によってはMRI検査が必要なこともあります
経過と予後
肩関節周囲炎の多くは適切な保存療法により自然軽快するとされています
・発症から6か月以内に改善がみられることが多い
・一部の患者では慢性化し1年以上症状が続くことがある
血管内治療を含む新しい治療法を適切に取り入れることで、より迅速な改善が期待できます
参考文献
日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会. 五十肩診療ガイドライン2020. 南江堂, 2020.
Neviaser RJ, et al. Adhesive capsulitis of the shoulder. J Am Acad Orthop Surg. 2011;19(9):536-542.
American Academy of Orthopaedic Surgeons. Management of Shoulder Pain: Clinical Practice Guideline. 2022.
Ko JH, et al. Current evidence for adhesive capsulitis treatment: A review. Clin Orthop Surg. 2021;13(3):356-364.