慢性前立腺炎とは
慢性前立腺炎は、男性の前立腺に慢性的な炎症や痛みが生じる疾患です。
一般的に6か月以上続く骨盤痛や排尿障害を伴い、40歳未満の男性に多く見られる一方で、あらゆる年齢層で発症します。
慢性前立腺炎は、臨床的に次の2つに分類されます。
慢性細菌性前立腺炎
細菌感染が原因で炎症が生じる
慢性非細菌性前立腺炎(慢性骨盤痛症候群)
原因が明確ではなく、免疫反応やストレスなど多因子が関与
症状
慢性前立腺炎の症状は多岐にわたり、患者ごとに異なります。
主な症状には以下が挙げられます。
・会陰部、下腹部、鼠径部、陰嚢、腰部などに感じる鈍い痛みや違和感
・頻尿や排尿時の痛み、排尿困難などの排尿障害
・性機能障害(勃起不全、射精時痛)
・長時間の座位で悪化する不快感
一般的な治療法
慢性前立腺炎は、その原因と症状に応じて多岐にわたる治療が行われます。
薬物療法
・抗菌薬
細菌性前立腺炎の場合、キノロン系抗菌薬が一般的に使用
・抗炎症薬(NSAIDs)
痛みや炎症を緩和するために使用
・α遮断薬
排尿障害を軽減し、前立腺と膀胱の筋肉をリラックス
・神経調節薬
慢性骨盤痛に対してプレガバリンなどの神経調節薬が効果的
物理療法
・前立腺マッサージ
前立腺液の排出を促し、症状の軽減を図る
・温熱療法
骨盤底筋の緊張を緩和し、血流を改善
生活習慣の改善
・ストレス管理や適切な運動
・座位の時間を減らし、骨盤への圧迫を回避
心理療法
・慢性前立腺炎に伴う不安やストレスを軽減するために、認知行動療法やカウンセリングが有効
血管内治療(カテーテル治療)
慢性非細菌性前立腺炎は炎症と痛みに関与している場合があり、カテーテル治療が炎症を減らして症状を緩和する治療法として注目されています。
※外来で問診を行います
※術前に別施設での造影MRI検査にて炎症の所在を確認します
治療経過
慢性前立腺炎は多因子性の疾患であるため完全な治癒が難しい場合もありますが、適切な治療と生活習慣の改善により症状の軽減が期待できます。
治療には数か月から1年以上かかることがあり、血管内治療が痛みを軽減されるために効果的である場合があります。
参考文献
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