アキレス腱炎とは
アキレス腱炎は、アキレス腱に炎症が起こることで痛みや腫れを引き起こす疾患です。
特にスポーツを行う若年層や、中高年の運動愛好者に多く見られます。
アキレス腱への過度な負荷、急激な運動量の増加、不適切な靴の使用などが主な原因とされています。
アキレス腱炎は一般的に以下の2つのタイプに分けられます。
腱周囲炎
腱の周囲に炎症が生じるタイプ
腱内部炎(腱症)
腱そのものに炎症や微小損傷が起きるタイプ
症状
・アキレス腱の痛み(特に朝や運動開始時に強い)
・腫れや硬さ
・腱を触れると圧痛がある
・腱が厚く感じられることがある
一般的な治療法
アキレス腱炎は主に保存療法で管理され、以下の方法が推奨されています。
休息と負荷管理
運動や過剰な負荷を避け、腱を休ませることが重要
運動を再開する際には、負荷を徐々に増やすことが推奨される
物理療法
・ストレッチ
ふくらはぎの筋肉やアキレス腱の柔軟性を高めるためのストレッチが効果的
・偏心運動療法
特にエビデンスが高く、アキレス腱炎に有効な運動療法とされている(Alfredson et al., 2003)
・温熱療法やアイシング
炎症や痛みを軽減
薬物療法
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
痛みと炎症を抑える
装具の使用
ヒールリフト(靴の中敷き)やテーピングを腱の負担を軽減するために利用
血管内塞栓療法
(動注治療・カテーテル治療)
保存的治療でも痛みが引かない方には動注治療またはカテーテル治療により、炎症性新生血管を減らし痛みを減らすことが期待できます。
※外来で問診・診察・エコー検査を行い重症度を判定し、動注治療またはカテーテル治療どちらが効果的か説明します
治療経過
治療の経過は患者の状態や治療方法により異なりますが、保存療法での改善には6〜12週間程度を要することが一般的です。
しかし、保存療法で効果が得られない場合には、血管内治療がお役に立てる可能性があります。
参考文献
Alfredson H, Pietilä T, Jonsson P, Lorentzon R. Heavy-load eccentric calf muscle training for the treatment of chronic Achilles tendinosis. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2003;11(5):327-333. doi:10.1007/s00167-003-0417-z.
Maffulli N, Longo UG, Denaro V. Novel approaches for the management of tendinopathy. J Bone Joint Surg Am. 2004;86(5):899-908.
日本整形外科学会. アキレス腱疾患診療ガイドライン. 日本整形外科学会, 2021.