主訴:左肩痛
《 背景 》
数か月前から左肩の痛みが続き、特に夜間痛や朝方のこわばりが強く、寝返りや着替え動作のたびに痛みで目が覚める状態でした。
整形外科でヒアルロン酸注射を複数回受けたものの改善せず、整骨院での施術も1か月続けましたが効果は限定的でした。以前、右肩の痛みで他院の治療を受けた経験があり、「左肩も同じように治したい」との思いで当院を受診されました。
《 検査と診断 》
エコー検査では、左肩の炎症による異常血管(モヤモヤ血管)が明瞭に確認されました。
右肩と比較すると血流が顕著に多く、炎症の持続が痛みの原因と考えられました。
腱板には一部に小さな損傷(部分断裂)は見られましたが、主な原因ではなく、血管性の炎症が主体と判断しました。
《施術内容》
局所麻酔下で、手首の動脈からカテーテルを挿入し、肩の後面から前面にかけての炎症血管を造影・確認。
炎症部位に一時的に作用する薬剤を投与し、異常血管を減らすカテーテル治療(TAME:Transcatheter Arterial Micro-Embolization)を行いました。
治療時間はおおよそ1時間で、日帰りで実施しました。
(↑エコー検査)左肩の腱板疎部と肩甲下筋腱近くの強い炎症(モヤモヤ)血流を認める
治療後経過
《2週間後》
痛みは約3割軽減
夜間痛はまだあるものの、髪を洗う・服を着替える動作が楽に
患者さんも「前より確実に動かしやすくなった」と実感
追加治療:左肩に少量のステロイド注射
《1か月後》
痛みはさらに6割減少
強い痛みは消え、鈍い痛みのみ残存
肩の後方(小円筋・棘下筋周囲)の圧痛は消失
→ 着替え時の痛みも徐々に軽減し、日常生活の支障は大きく改善
追加治療:左肩に少量のステロイド注射
今後の方針:コンディショニングで可動域を拡大していく
この方のように、肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)で「夜間痛で眠れない」「注射をしても治らない」とお悩みの方は少なくありません。
カテーテル治療により、炎症の原因である異常血管(モヤモヤ血管)を減らすことで痛みを根本から改善できる可能性があります。
保存療法で改善しなかった肩の痛みに対して新たな選択肢となります。