縁を切らない稽古

投稿日: 2014/05/11 20:47:44

ひとつの技を出すその過程には、

『声を発し、気合に変え、さらに気魄に変える、

その間は、呼気を長く、吸気を短く、また呼吸を止め、

相手の間合いに、攻め込み、攻め切り、攻め勝ってから、

技を出し、技を決め、打ち切って、最後に残心する。』という流れがあります。

技の稽古を見ていると、技を出すまでの過程では誰しも気が抜けないように努力するのですが、その前後、たとえば発声をする前に気が抜けていたり、打突後の残心も形だけで、すぐに気が抜けてしまう、というケースが多々あります。

普段の稽古でこういうことを繰り返していると、相手に攻め遅れたり、一本打つごとに気が抜けてしまい、その瞬間を打たれやすくなる、という悪い習慣が身に付いてしまいます。

とくに、試合や地稽古で打突後に攻め込まれ打たれやすい人は、せっかく十分に相手を攻めて打ちにいったつもりが、わざわざ後を打たれるために技を出す、という悪循環を作ってしまっています。

さらに悪いケースは、勝負の要素が絡むと打たれることを恐れながら不十分に打ちに行って足が止まったり、出した技が当たらなかったからと自分であきらめ中途半端に足を止め発声も止めてしまう『がっかり剣道』です。

『がっかり剣道』をやってしまっている人同士の地稽古は、足を使う範囲が非常に狭く、お互い半径1m程度の間しか動いていない、という意味で『1m剣道』とも揶揄されます。

これらの悪癖を取り除くための技の稽古方法は、

遠い間合いからでも、お互いに試合のような気持ちで小さく素早く足をさばいて間合いを作っていく、

元立ちのときもきついが発声することにより気を充実させ、さらに懸かり手の気を充実させる、

懸かり手は、元立ちに気魄で負けないように攻め、打った技はたとえ外れても最後まで立派に打ち切る、

打った後の足さばきは小さく素早く最後まで抜くことなく、相手が後ろから攻めてくることを常に注意し残心をする。

残心で構えるところは一番きついところだが、攻められると一番弱いところになるので、できるだけ大きく息を吸わないよう、前の打突の呼気から続けて気を出し、振り返ったら一歩前に詰める。

出頭技や返し技などの直後は、間合や立ち位置が悪いと、逆に相手から攻められることがあるので、残心後の自分と相手の立ち位置の関係を予測して、常に有利な立ち位置になるよう、間合いを確保しながら残心する。

懸かり手と元立ちが交替するときは、一番気が抜けがちになるので、お互い常に試合だという気持ちで、すかさず足を使い適正な間合いを作る。

このように懸かり手も、元立ちも、お互いに普段から“縁を切らない稽古”を心がけていれば、基本の稽古が充実して強くなれるのです。