日時
2025年10月11日(土)15:00-17:00
場所
名古屋大学教育学部2F E・F演習室
開催報告
2025年度第2回の名古屋社会心理学研究会では、名古屋大学の上田皐介氏により、自己呈示の内在化による自己概念の変化について、新たな視点を加えた複数の研究結果と、そこから得られた知見についてご発表いただいた。
自己呈示の内在化に関する先行研究においては、自己概念のベースラインが測定されていない点や、自己呈示後にのみ自己概念の測定が行われている点、自己呈示した特性以外の変化が検討されていない点など、複数の共通した限界がみられる。
こうした限界を踏まえ、新たなパラダイムを用いた上田氏の研究では、自己概念が望ましい特性 (e.g., 外向性) の自己呈示によって変化し、その生起メカニズムとして自己欺瞞が考えられること、自己呈示そのものを行わずとも、自己呈示のための記憶想起を行っただけで自己概念の変化が生じることなどが示された。
また、望ましい特性に関する自己呈示を行った際、実際に自己呈示に用いられたもの以外の特性 (e.g., 調和性) においても、望ましい方向への変化が生じるという、興味深い現象が報告された。上田氏はこの現象が生じるメカニズムについても検討を行っており、望ましい自己呈示を行った際に喚起された状態自尊感情が関連している可能性があること、外向性だけでなく他の特性 (e.g., 勤勉性) について自己呈示した場合においても、同様の現象が生じることなどが示された。
フロアからは、今回の研究で測定されたパーソナリティに限らない、自己概念全体への自己呈示の内在化の一般化可能性や、自己概念のフレキシビリティに関する文化差が存在する可能性、自己呈示によって自己概念に変化が生じた場合に、行動レベルにおいて、あるいは適応上の観点からどのような変化が生じるのか、といった生態学的妥当性に関する質問などがなされ、活発な議論が展開された。