2023年度 第1回NSP 

高松 礼奈氏(愛知学院大学)

日時

2023年5月20日(土)15:00-17:00

場所

名古屋大学教育学部2F E・F演習室

発表者

高松 礼奈氏(愛知学院大学)

Researchmap 

発表タイトル

教示フレーミングが道徳的な配慮の範囲に与える影響について:Inclusion-Exclusion(I-E)課題を用いた検討

要旨

     教示フレーミング「XXを対象に含めるか、含めないか(Inclusion条件)」「XXを対象から除外するか、除外しないか(Exclusion条件)」によって、対象となる人や物の数が変動する。この研究は、ステレオタイプ内容モデルをもとにクラスタ化した集団3カテゴリによって、教示フレーミングの効果に違いがみられるか検討することを目的とした。そこで、日本語でI-E課題のオンライン版をjsPsychで作成し、2(教示フレーミング:Inclusion・Exclusion)× 3(集団カテゴリ:内集団・中間集団・外集団)被験者内デザイン実験を行った(N = 102)。結果、Exclusion条件はInclusion条件と比較し、配慮の対象となる集団が多かった。また、Exclusion条件の方が反応時間が有意に長く、認知負荷の高いことが示された。さらに、教示フレーミングと集団カテゴリの交互作用が有意で、中間集団と外集団では、教示の違いによる判断の揺らぎがみられが、内集団ではみられなかった。以上の結果について、集団アイデンティティの違いによる道徳判断のバイアスを考察する。

開催報告

      2023年度第1回の名古屋社会心理学研究会 (NSP) では、高松礼奈氏に話題提供いただいた。高松氏はこれまで感情やモラリティをテーマとしたさまざまな研究を行っている。この発表では、Inclusion-Exclusion (I-E) マインドセットによる判断のゆらぎに着目し、教示フレーミング (Inclusion条件 vs. Exclusion条件) と集団カテゴリ(内集団、アンビバレント集団、外集団)が、道徳的な気遣いの範囲に与える影響について検討した。実験の結果、Exclusion条件では、アンビバレント集団と外集団を道徳的な気遣いの対象と知覚しやすく、教示フレーミングによって気遣いの対象の幅が変化することが示された。

     フロアとのディスカッションでは、予備調査でクラスタリングした集団の操作的定義、集団カテゴリに対する個人の認識の相違、対象が集団の場合の教示フレーミングの効果がマインドセットであるか否かに関する議論など、さまざまな観点から活発な議論が行われた。


文責:名古屋大学教育発達科学研究科 博士前期課程 青木麻里子

参加者:35名