2015年度 第2回NSP 太幡直也氏(愛知学院大学総合政策学部)

投稿日: Jul 22, 2015 11:53:0 AM

日時・場所

7月18日(土)15時〜17時

名古屋大学教育学部 1F 大会議室

発表者

太幡直也氏(愛知学院大学総合政策学部)

題目

情報プライバシーが未知の他者への自己情報公開に与える影響

発表

インターネット上では、望まない他者から繰り返し連絡を受けるなどの迷惑行為の被害を避けるために、未知の他者への自己情報の公開の仕方を考慮する必要がある。未知の他者への自己情報公開を規定する要因を検討すると、不用意な自己情報公開を抑止するための知見が得られると期待される。

発表者は、インターネット上での自己情報公開を規定する要因の一つとして、情報プライバシー(自己情報を他者に伝達しようと思う程度)に着目し、研究を行ってきた。今回の発表では、実験参加者に未知の他者とチャットを行う前に自分のプロフィールを作成するように求め、プロフィールに含まれる自己情報を多面的に測定した、実験室実験の結果を報告する。

開催報告

インターネットの利用により、未知の他者との社会的ネットワーク構築は以前よりもはるかに容易に行われるようになった。インターネット上・対面を問わず、社会的ネットワーク構築のためには自己情報の公開が必要となるが、特にインターネット上では自己情報公開が過剰となる場合があり、また情報公開の仕方によっては他者からの迷惑行為の被害に遭いやすくなる危険性があることも指摘されている。発表者の太幡氏は、インターネット上で関わる未知の他者への自己情報公開を規定する要因について、実験的な手法を用いて先駆的な研究を行っている。

当日の発表では、未知の他者とインターネット上でチャットを行う場面において、相手との関係が今後も続くという予期(関係予期)が高い場合には、自己情報の公開がなされやすくなることが報告された。また、情報プライバシー(自己情報を他者から統制し、知られないようにする程度)が自己情報公開に及ぼす影響は、関係予期が高い場合には関係予期が低い場合よりも小さくなることも示された。これらの知見は、個人情報公開に対する関係予期の効果を明らかにしたものであり、未知の他者に対する過剰な情報公開を予防するための方略について検討する際に、従来から指摘されてきた情報プライバシー以外に着目すべき要因を新たに示したという点で意義深いものである。

質疑応答では、価値ある情報を戦略的に公開することが有益となるような場合と本研究の知見との整合性や、情報プライバシーを守ることに対する理由づけが個人の持つプライバシーの判断基準に及ぼす影響を検討することの重要性について、活発な議論が行われた。

参加者:26名

文責:名古屋大学大学院教育発達科学研究科 五十嵐研究室 博士後期課程 佐名龍太