2015年度 第4回NSP 脇本竜太郎氏(明治大学情報コミュニケーション学部)

投稿日: Dec 19, 2015 1:10:45 AM

日時

2015年12月12日(土)15:00-17:00

場所

名古屋大学教育学部2F 第3講義室

発表者

脇本 竜太郎 氏(明治大学情報コミュニケーション学部)

タイトル

不倫は因果である:不倫および不倫の意図が因果応報的推論に及ぼす影響

概要

「普段の行いが悪いから痛い目を見るんだ」といった因果応報的な推論(immanent justice reasoning)は,かつて認知的未成熟さから生じるものと考えられ,主に発達の文脈で研究が行われていました。しかし,2000年代以降はそのような発達的な説明が見直され,公正さの追求という観点から検討されるようになっています。今回は,不倫している人物が事故(交通事故・食中毒事故)に遭遇するというシナリオを用いて,先行研究の結果が追試されるか,また実際に不倫はしておらず意図のみを持っていた場合でも因果応報的推論が生じるかについて検討した研究について報告します。なお,IGRS先生からしつこく「今回の研究はアクションリサーチですか?」と訊かれるのですが,そのようなことはございません。

開催報告

因果応報論的推論とは、個人の体験する出来事を論理的に必ずしも関連のない行動に対する罰や褒美として考えることである。初期の研究では、因果応報論的推論は認知的に未成熟な子どもにおいて行われると考えられていたが、近年の研究において認知的に成熟した成人においても行われることが明らかとなっている。脇本氏は、実際の行動ではなく、行動の意図のみによっても因果応報論的推論が生じるのかについて、実験的手法を用いて検討した。

当日の発表では、不倫における因果応報的推論を題材として、脇本氏の実施した3つの研究が紹介された。予備実験では、日本人成人においても因果応報論的推論が生じることが示された。研究1では、認知欲求の低い個人は、行為者の意図のみに反応して因果応報論的推論を行う一方、認知欲求の高い個人にはそうした傾向がみられなかった。研究2では、自己効力感の低い個人は、行為者の意図のみに反応して因果応報論的推論を行う一方、自己効力感の高い個人にはそうした傾向はみられなかった。また、認知欲求や自己効力感の高低にかかわらず、行動に対する因果応報論的が行われやすいことが一貫して示された。以上の結果より、成人においても行動に対して因果応報論的推論を行うことに加え、意識的なプロセスによって因果応報論的推論が修正される可能性が示された。

質疑応答では、出来事のポジティブさ、ネガティブさが因果応報論的推論に与える影響、推論を行う人物の当事者性による違いの可能性、他の理由づけが存在した場合にも因果応報論的推論が選択されるのかといった点について、活発な議論が行われた。

参加者:45名

※この回は、東海心理学会との共催でした。

(文責:名古屋大学大学院教育発達科学研究科 五十嵐研究室 博士前期課程 樽井この美)