7月28日はペナン散策の2日目だった。シャロンの先導で、バリク・ブラウという古い街並みを歩いていると、シャロンが小さな店の前でニコニコしている。その店は銀細工職人のおじさんがいる店だった。シャロンは以前ここで銀のペンダントを買っていて、我々にこのおじさんを見せたかったようだ。
古いショウケースにはおじさんが作った見事な銀細工がびっしりと並べてある。それが、同行していた日・マ双方の女性たちを等しく捉えた。おじさんは上機嫌でいろいろと見せてくれている。そのうち自分の事が載っている新聞を取り出してきた。日本の雑誌と中国語の新聞だった。
このおじさんはこの場所で銀細工ひとすじの人生を送っているのだった。背後の棚には若い頃の写真も飾ってある。まるで別人だったが面影はあった。
おじさんはズンズンと上機嫌になって、デモンストレーションまで始めてしまった。引き出しから小さなパーツを取り出して、見事に曲げていく。凄い技を持ったおじさんだ。
ふとおじさんが使っている木製の椅子を見ると、歪に削れている。長年の尻圧でそうなったらしい。恐るべき集中力と尻圧。
我々はその技に見とれていたが、女性たちは完成品にも吸い寄せられるように見入っていた。手前から二人目の女性はナショナル・アート・ギャラリーのクーン。この目が全てを物語っていた。
この街の散策がこの店での買い物で終わったのは言うまでもない。(佐藤)