7月23日、マルチメディア大学の講義を終え、佐藤、服部、田中、中沢、やなぎだはサイバージャヤのレストランでランチをしていた。中村は事情があり、ホテルで黙々と仕事をしていた。
食事をしながら、久しぶりに会うシュウワイと楽しく談笑している我々の側で、久貝さんだけが落ち着かぬ様子で誰かと電話をしていた。
食事を終えホテルへ戻るバスの中、久貝さんが、「非常に申し上げ難いのですが、皆さんにお知らせしなくてはならない事があります…。」と切り出してきた。
先ほどの楽しいランチの余韻に浸り、爽やかなマレーシアの青空に心奪われていた一行は、「はて?」といった感じで、切なそうな表情の久貝さんを見つめた。
久貝さん:「実は予約担当者のミスで、今日まで宿泊する予定のホテルが、今日チェックアウトすることになってしまいました。」
一同:「!?」
久貝さん:「し、しかし、交渉で、満室状態の所、なんとか部屋だけは確保しました、が、一度、今の部屋を出ていただき、別の部屋へ移動していただくことになります。」
一同:「!?」
久貝さん:「申し訳ありませんが、それも大急ぎでお願いします!ホテルに到着したら15分くらいで〜!!。
一同:「!?」
久貝さん:「さ、さらに、悪いお知らせですが、移動先の部屋には窓がありません。」
一同:「ぇえっ〜!?」「な、なんだって!?」「そんな!」「うそっ〜!」
久貝さんの通達に表情が一変する。
ちょっと不備なところがあっても、眺めの良さがそれを帳消しにしてくれていたシティテルエクスプレスホテル…。
窓が無い部屋ってどんな感じだろう?今晩、ホテルからの夜景を撮影しようと思っていたのに…。まさか全員同室で雑魚寝という状態になるのでは…。
移動宣告を受けた一同の眼には、もう美しい車窓からの風景は映らず、クリエイターの想像力(妄想力)による、「窓の無い部屋」だけが浮かび上がってくるのだった。
ホテルに戻ると、何も知らず作業をしていた中村も巻き込まれ、散らかし放題の部屋の荷物を鞄に詰め込む作業がスタート。普段、マレーシアの室内は冷房がガンガン効いていて寒いくらいなのだが、この時ばかりは、額に汗しながらの荷造りだった。
とにかく、大慌てで部屋を片付け、ロビーでルームキーを久貝さんへ渡すと、そこにはホテルのマネージャーらしき男性が、我々に何か説明したそうに立っていた。急なトラブルを詫びようとしているのか、それとも、窓のない部屋を案内しようと思っているのか…。
久貝さんが代表し、その男性へ説明を聞きに行った。
彼の説明を聞きながら、久貝さんは驚きと戸惑いの表情を浮かべ、口に手をあて動揺を抑えようとしていた。
「何があったのか?」一同が固唾をのんで見守った。
久貝さん:「実は、部屋を移動しなくてもオーケーということになりまして…、そのまま元の部屋をお使いくださいと言われました。」
一同:「・・・・・」
どうやら、最初に連絡を取っていたホテルの担当者と、後で判断を下したマネージャーの見解が食い違っていたため、こんな展開になってしまったようだ。
マレーシアでは、同じ職場やプロジェクトに属しながらも、担当者間で情報が共有されていなかったり、全体を把握する人が不在だったりで、右往左往させられるということがよくあった。(日本のお役所関係でも似たような状況あったりするけど。)
ちょっと驚いたが、とりあえず窓無しの部屋は回避でき、皆、その晩も美しいKLの夜景を楽しむことがだきた。また一つ、楽しい思い出できたなぁ…。
久貝さん、お疲れ様でした。
シティテルエクスプレスホテルからの夜景。新しいビル群と古い下街の風景が望める。