7月25日。
イポー(Ipoh)から車で40〜50分。クアラカンサー(Kuala Kangsar)という街を訪れた。ここは、18世紀よりペラ州のスルタン居住地となり、王族ゆかりの建物などが残る。ペラ川沿いにある高台には、金色の玉ねぎ形ドームが美しいウブディアモスク(Masjid Ubudiah)、黄色と黒のパターンが印象的な木造建築の王室博物館(Istana Kenangan)、白く優雅な宮殿(Istana Iskandariah)など、壮麗なイスラム建築が連なる。
そうした、ロイヤルな雰囲気が漂う高台を上り始めた辺りに、彫刻家ラジャ・シャリマン(Raja Shariman)氏のアトリエがある。彼は、廃材らしき重厚な鉄片を用い、鎧を身につけた兵士ような作品を制作する。鮮やかな緑が美し庭とは対照的に、鉄を熱して加工する工房は褐色で、炎の色だけがギラギラ輝いている。火で熱した鉄をハンマーで力一杯叩きながら形を作り上げていくのだ。1年中暑いマレーシアで、鉄と格闘し続けるパワフルなアーティスト…、凡人にはできないなあと感じた。彼の家系が王家(スルタン)の血筋を引くというのも納得してしまう。