8月8日日曜日の昼時だった。佐藤、服部、田中はひもじかった。その時は、いつものマレー系の食事を採りたいとは思わず、何か西洋的な味覚を欲していた。
マラッカでの滞在はふたつのホテルだったが、ひとつ目のホテルの近くにピザ屋があることを思い出して、そこに向かおうとしていた。
その時、前方に大型バスが現れ、狭い道路を全面的にふさいでしまった。このあたりの道路はどこも狭いのだが、このような大きな観光バスも時々現れる。
運転手は切り返しを繰り返して少しずつ前に出るのだが、前方右手には商店があり、そこの低い壁に当たりそうだ。今度は少しさがるのだが、後方左手の民家の屋根に接触している。道路は完全にふさがれてしまい、バイクと車が詰まってきた。運転手は少し動揺しているようにも見えたが、顔色はもともと茶色くてよくわからない。意を決して前に進むのだが、メリメリ!と音を立てて商店の低い壁が崩れていく。商店主は少し文句も言っているが、ヒステリックな様子ではない。以前にも同じような事があったのだろうか?
われわれは、暫くその成りゆきを見守っていた。15分くらい見ていただろうか? 人も通してもらえない。この状況はどうにもなりそうに無かったので、迂回することに決めて、その場を去った。平行している屋台が建ち並ぶ通りを抜け、元の通りに戻ると、既に車が動き出していた。どう考えても、壁や、屋根を破壊して切り抜けたに違いない。
あの大型バスの運転手は、壁の修理代を払ったのだろうか? それとも、おおらかなマラッカの人達は、こういう事も許すのだろうか?(佐藤)