離婚

更新:2021年8月

人生の中で離婚に触れずに生きられる時代ではなくなったようです。社会の変化にともない、当会に寄せられる相談には離婚に関するものが少しずつ増えています。当会の目的は台湾に生活する外国人の居留環境の改善であり、離婚はその本意ではありません。またプライベートな問題である離婚は、相談対象でもありません。ただし、離婚について正しい知識を得ることは、当事者にとって大切なことです。ここでは、特に国際離婚を考える際のポイントを取り上げます。

ご参考:離婚に関する民法の規定

ご参考:日台家族に関する法律-離婚編

離婚を考えるときのポイント

国際離婚においては、夫婦それぞれの国の法制度や習慣により、離婚手続が同国人どうしの離婚と比べると、はるかに煩雑になり、時間が掛かります。また、どちらの国の方式で離婚を行うことが有利かなど、離婚手続を始める前に考慮すべき事項がいろいろあります。そして、最終的にはそれぞれの国で離婚手続をしなければなりません。以下は台湾での国際離婚について、離婚する前に考慮すべきポイントを挙げています。

協議離婚の場合

台湾での離婚手続きは、協議離婚か裁判離婚かで異なります。多くの場合が、夫婦間の合意による協議離婚です。協議離婚書を作成し、証人2人に署名してもらい、それを持参して直接夫婦二人で戸政事務所に行き、離婚登録を行えば離婚は成立します。協議離婚書の内容は、両者の離婚合意の趣旨、子どもの親権、財産の分配、養育費、慰謝料、その支払い方法などです。もちろん、協議離婚であっても夫婦間で話合いができない状況や、意見の対立などあった場合は、離婚後に問題が生じない為にも、弁護士など法律の専門家に相談されることをお勧めします。

子どもの親権

子どもの親権は「絶対に台湾人の父親が取る」と聞きますが、実際はどうなんでしょうか?という質問を良く受けます。

子どもの親権については、現在父親、母親の双方とも主張することができます。ただ、話合いがつかない場合は、裁判所に親権を申立てる(調停)ことができます。調停では、子どもの成長に有利な環境はどちらであるかを判断する為に、夫と妻からだけでなく、専門の担当官が一定年齢に達した子どもからも意見を聞きます。それが決定に影響し、絶対に父親だけが親権があるわけではありません。また日本にはない離婚後も両親の両方に親権(監護権)があるという共同親権の考え方があります。

裁判離婚の場合

協議離婚ができない状況の場合、裁判で離婚を決定することもできます。但し、裁判離婚には法律に規定された理由がなければなりません(台湾の民法第1052条を参照)。また理由によっては、裁判の提起までの期間が限られているものがあるので(台湾の民法第1053条の不倫など)、注意が必要です。

また、国際離婚の裁判離婚の場合、夫婦の常居地が裁判管轄地となります。別居中の夫婦の場合は、それぞれの常居地、または関係地が裁判管轄地になるので、注意が必要です。これによって、日本と台湾のどちらで裁判すべきかなどの問題が生じます。また裁判管轄地の他に裁判でどこの法律に従うかの準拠法の問題や、裁判で出た判決の執行が可能かなどの問題があります。

参考資料

台湾と日本の離婚裁判制度について

離婚に関する講演摘要


家庭内暴力による離婚の場合

家庭内暴力を理由に離婚する場合、家庭内暴力があったことを証明しなければなりません。そのためにそれを証明する証拠が大変重要になります。家庭内暴力には暴行や傷害など実際に身体に損害が及ぶ身体的暴力と、言葉により相手の価値観や尊厳を傷つけるなどの精神的暴力があります。

前者は暴力の程度が極度になると命に危険が及ぶこともありますので、危険を感じた場合は、そのままにしておかないで、家庭内暴力防止センター(113番)や警察(110番)に連絡してください。また実際に暴力を受けて医療機関で治療した場合は、その診断証明書を必ず取得して下さい。後者の精神的暴力については、目に見えない為、証明が大変困難です。繰り返し行われる相手の執拗な嫌がらせの言葉や罵声、物を投げたり叩いたりする音を録音して証明することができます。また物を投げて壊れたような場合などは、破損物を写真に撮ることも大切です。電話録音の場合は発信音から電話を切るまでの間をすべて録音した方が後の裁判では証拠能力が高いとのことです。離婚はまだ考えないが、家庭内暴力について悩んでいる場合もセンターでは相談に応じてくれます。

家庭内暴力を理由に離婚裁判を提起する場合、前述のような証拠が重要なポイントになります。それを更に確実に証明するために、過去半年以内に「保護令」(保護命令)の決定を受けていると有利になります。「保護令」は申立てにより裁判所に相手方の暴力の事実を証明して、隔離するなどの命令を下してもらいます。精神的暴力も対象です。被害者に対して「保護令」が命じられると、加害者の行動が制限されることになります。期間は6ヶ月です。「保護令」が破られた場合は、犯罪となる可能性があります。また保護令の取得で離婚裁判の決定や親権の取得が有利になります。

「家庭暴力防治中心」では、予約を入れれば、ソーシャルワーカーに相談できます。ケースによっては法律相談などのために弁護士との面会や保護施設の準備などの協力をしてくれます。避難のためのシェルターへの手配もしてくれます。

家庭暴力防治中心(家庭内暴力防止センター):各地に設置されています。

家庭内暴力事件及び性侵害事件に関するホットライン:113

衛生福利部:家暴防治


離婚手続きをしないまま子どもを連れて日本に帰国する場合

借金、家庭内暴力、仕事をしない、浮気、病気、意見の不一致、親戚との不和、子どもへの虐待など様々な理由により結婚生活が継続できず、里帰りなどを理由にそのまま子どもとともに日本に帰国する場合。それが、話し合いの始まりなのか、別居の始まりなのかは夫婦の対応によって異なります。注意して頂きたいのは子どもに対しては離婚により親権が決定されるまではまだ両親のどちらにも権利・。後日の離婚裁判などで問題として指摘される可能性が残ります。また、長期の別居が続き、話し合いがうまくいかない場合など、台湾に残った配偶者から同居の請求の裁判が提起される可能性があります。正当な理由なく別居し、裁判で敗訴してもなお別居を続けた場合には、裁判離婚理由となり、相手方が離婚裁判を提起した場合、相手方に有利になります。

また、再婚をしようとした場合、別居が長く続いていて、夫婦それぞれ両国で生活していたとしても、戸籍上はまだ夫婦ですので、離婚手続きを行わない限り、再婚すると重婚罪に問われます。

また、子どもを連れ出して家を出たが、直ぐには帰国しなかった場合など、相手方から親権を理由に子どもの出国禁止の申立てが行われる(離婚裁判の提起が前提)場合がありますので、帰国のタイミングなど注意が必要です。

永久居留証の取得と離婚

離婚すると、外僑居留証の配偶者身分(依親)では滞在できません。永久居留証取得者は問題がありません。離婚後も台湾で生活する場合には、離婚後居留身分の変更(就業ビザ、学生ビザなど)が必要になります。もちろん離婚時点で永久居留証の申請資格がある場合、2年以内であれば申請は可能ですが、たとえ居留証の有効期間が残っていても、申請資格は一般外国人となり財産証明など自己の名義で証明しなければなりません。ただ家庭内暴力を理由に離婚裁判をしている場合などは、居留証の延長が認められます。また、離婚後台湾で仕事をする場合、永久居留証取得者は仕事のために自己申請の工作許可証の取得だけで仕事が自由にできます。しかし離婚後永久居留証と工作許可証がない場合は、一般外国人として新たに就業ビザの申請が必要です。それは会社が申請するもので、当該会社でのみ仕事が認められるビザです。従って、離婚後も台湾に継続居留するには、永久居留証、帰化、就業ビザのいずれかへの変更が必要です。

夫婦財産の分割

離婚時には夫婦財産をどのように分配するかも問題となります。特に裁判所に申立てて分別財産制や共同財産制にしていない場合は、法定財産制で処理します(台湾ではほとんどの夫婦は何も取り決めておらず、法律に従う法定夫婦財産制です)。すなわち、まず結婚前に既に所有していた財産は各自が回復します。残りのうち各自自分名義の財産からそれぞれの負債を減じて、残りを加えて二等分し、各自の財産を比較して不足分は相手方からもらうというものです。これはあくまでも法律上主張することができますが、協議離婚の場合では、お互い譲歩するケースが多々あります。

夫婦財産制Q&A


台湾と日本の両国での離婚届の提出

国際結婚の場合、離婚届けの提出は台湾及び日本の両国で行わなければなりません。台湾の離婚登記は、協議離婚の場合は必ず夫婦二人で戸政事務所の窓口に行き、協議離婚書とともに離婚届を提出します。その後日本で離婚届けを提出する場合は、台湾の離婚登記済みの戸籍謄本を添付して、日本の離婚届を提出します。


日本の離婚届けの偽造

離婚裁判が長期化している場合、相手方が勝手に離婚届を提出する可能性がありますので、注意が必要です。

日本離婚届不受理制度

外務省:戸籍:国籍関係届の届出について:離婚届

法律扶助基金会

離婚、家庭内暴力、カード債務などの問題で弁護士に相談したい、又は委託したいが、報酬を支払う能力がない場合、無料または少額の報酬で弁護士を委託することができるよう扶助をしてくれます。法律扶助基金会所属のボランティア弁護士は各地にいますので、直接連絡する外、ソーシャルワーカー、家庭内暴力防治センター、シェルター、裁判所、社会局などを通じて紹介してもらい、法的アドバイスを得ることができます。財産証明書、戸籍謄本などの提出が必要です。所得によりますが、一人3件までの案件が無料で委託できます。日本語のできる弁護士の有無は不明。

全國法扶專線02-412-8518