相続
更新:2024年12月
国際結婚の場合、台湾人の外国籍配偶者に相続権があるのか、という質問をよく受けます。もちろん外国籍配偶者も民法上は国民と同様に相続権を有します。以下のQ&Aで相続権の概要をご確認ください。また、2009年の民法の相続編の改正により、相続財産にマイナス部分があるとしても、相続する範囲はプラス財産を限度とすることが明文化されました。以下の改正要点、民法相続編の条文も合わせてご参考ください。
ご参考:日台家族に関する法律ー相続編
債務の相続について
2009年6月10日公布の民法相続編一部改正により、相続する財産につき限定相続が明文化されました。第1148条に第2項「相続人は被相続人の債務につき、相続によって得る遺産に限定して、弁済責任を負う。」、第1148-1条「相続人が相続開始前の2年内に、被相続人から財産の贈与を受けたとき、該財産は自己の得る遺産とみなす。前項の財産が既に移転又は滅失したとき、その価額は贈与時の価値により計算する。」などを追加規定しました。従来の相続は、一旦相続すると債務についても全て責任を負わなければなりませんでしたが、今回の改正で債務は相続したプラスの財産の範囲に限定されるとし、これまでの債務がある場合に生存する相続人がすべて相続放棄をしなければ債務を免れられない状況は解消できるようになりました。
参考:総統府公報のサイトより:民法継承編(PDFファイル)
相続についてQ&A
以下はQ&Aで台湾での相続の取り扱いを概観します。ご参照ください。
Q1:夫が死亡した場合、以下の各例では、法定相続では各相続人の遺産相続の割合はいくらか?
①妻のみ、②妻と2人の子供、③妻と夫の両親と2人の兄弟、④妻と夫の3人の姉妹、⑤妻と夫の祖父母の場合はどうなるのか?
A:以下の相続分は上記の番号に対応したものである。
①妻のみの場合は、100%妻が相続する。
②妻と2人の子供の3人で均等に相続する。
③子供がいないが、夫の両親と兄弟が2人いる場合は、妻と夫の両親に相続権があり、妻が2分の1で両親2人が残りの2分の1を均等に相続する。
④妻が2分の1、姉妹は残りを均等に相続する。
⑤妻と夫の祖父母の場合は、妻が3分の2で、残りを祖父母が均等に相続する。
民法上の遺産相続順位は、配偶者以外に、①直系血親卑親属(子供)、②父母、③兄弟姉妹、④祖父母である(民法第1138条)。実際の相続では、配偶者は①から④までの相続人が現存する場合、相続順位の先の者と一緒に相続しなければならない(民法第1144条)。
Q2:夫の死後、妻と長男が相続人となり、現在住居に使用している家を相続することになった、夫には兄が一人いる。長男は一人子で、その家族と将来も一緒に生活する予定なので、妻の相続分を放棄して、長男がすべて相続する予定であるが相続放棄の手続はどうすればよいのか?
A:民法第1174条の規定に従い、相続放棄をする場合は、相続人である妻が、相続開始時より2ヶ月以内に書面で法院に通知しなければならない。相続放棄は当該相続人の相続財産全部に対してなされなければならない。夫には、兄が一人いるが、妻が相続放棄をした後のその相続分は、妻が一緒に相続する予定であった同一順位の相続人の相続額に算入されるため、夫の兄の相続分ではなく長男の相続分になる。
Q3:相続税は外国人であると税率が高くなるのか?また、相続税(遺産税)の税率は?
A:年間183日以上滞在し、居留証を有していれば、台湾人と同率の税率が適応されるはずである。
Q4:債務額がある場合は、相続に影響するのか?
A:被相続人の債務も相続対象になる。相続する債務の限度額について、上述のとおり民法の改正があり、プラス財産に限られる。但し、遺産税との関係では、その債務額は、遺産総額から控除される(遺産及贈与税法第17条第1項第9号)。
Q5:外国籍配偶者の相続に関する適応法は如何に?
A:渉外民事法律適用法第58条の規定によると、被相続人の死亡時の本国法により相続する。但し、中華民国の法律により、中華民国国民は中華民国における遺産の相続において相続人となることができる。また、同法第59条では、外国人が死亡し、中華民国内に遺産を有する場合で、本国法により遺産相続人がいない場合は、中華民国の法律によりこれを処理する。日本の適用通則法第36条でも、相続については被相続人の本国法に準拠するとしている。
Q6:配偶者が死亡したとき、残された配偶者には剰余財産分配請求権があると聞いているが、遺産はどのように分配されるのか?
A:剰余財産分配請求制度は、夫婦の一方が死亡、離婚、婚姻取消、約定財産制の変更(民法第1010条)をした時に、夫婦の一方が剰余財産の多い方に対して、剰余財産の差額の2分の1を請求することが可能であるという制度(民法第第1030条の1)。配偶者の死亡時にも適用されるが、生存配偶者の剰余財産分配請求権は、その権利を知ってから2年内に行使しなければ、消滅する。また、夫婦法定財産制の消滅(配偶者の死亡)から5年が経過すれば、消滅する。
日台家族に関する法律-相続編の8ページご参照