更新:2024年12月
台湾における就業(仕事)について
最近は、法律の改正が進み外国人、特に台湾の国民の外国籍配偶者に対する労働環境が改善されてきた結果、国際結婚で来台すると同時に仕事に就く外国籍配偶者が増えています。ここでは、特に台湾人と結婚した外国籍配偶者が仕事をする場合の注意点を説明します。なお、台湾の労働に関する主務官庁は、2014年2月17日付けで労工委員会から労働部(勞動部)になりました。
会社派遣の駐在など一般外国人の「専業人材」の就業手続きについては、以下の労働部の「勞動力發展署」の「外國人在臺工作服務網」および「外国人労働者向け労働ガイド」をご参照ください。
台湾では国民と結婚した外国籍配偶者は合法居留で、外僑居留証を取得していれば、別に就労許可(工作許可)を取得する必要はありません。
就業服務法第48条第1項によると、以下の場合には工作許可が不要です。
1、政府関連の学術研究機関が外国人を顧問または研究に招聘するとき。
2、中華民国国内に戸籍を有する国民の外国籍配偶者、かつ居留を許可されているとき。
3、公立または私立大学で講座、学術研究を行うことが教育部に認可されたとき。
外僑居留証取得者:中華民国国民の外国籍配偶者は、依親資格の外僑居留証(配偶者ビザの身分、以下居留証という)を持っていれば、現在仕事をするために工作許可証の取得は必要ありません。また、特別な資格が必要な職種以外は、仕事の兼業は原則として制限を受けません。目下、外国籍配偶者の居留証上に「持證人工作不須申請工作許可」(当該証明書の所持者は仕事につき工作許可の申請は必要ない)という文字が記載されています。ただ、居留期間に離婚し、又は台湾の配偶者が死亡した場合や、外国籍配偶者の元々の居留許可が主務官庁によって法に基づき 取消された、又は廃止されたときは、その工作許可が同時に喪失します。但し、原居留許可がその効力を失うまでは仕事をすることができます。従って、国民の配偶者身分でなくなった場合は、居留証の有効期間が到来すると、そのままでは仕事ができなくなるので、本人の居留ビザ資格の変更を行い、即ち就業ビザへの変更後に工作許可証(会社が申請する)を新たに取得する必要があります。
永久居留証取得者:永久居留証を取得している外国人は、特殊身分外国人として個人申請の工作許可証の取得ができます。ただ、労働部によると、国民の外国籍配偶者で永久居留証を取得している者は、なお配偶者の身分であることより、別に工作許可証の取得は不要です。また離婚や死別などで、国民の配偶者身分でなくなった場合には、永久居留証取得者はそのまま継続して台湾に居留できますが、仕事については、別に工作許可証を申請して取得する必要がありますので、ご注意下さい。また、労働部によると、以前配偶者の居留証で個人申請の工作許可証を取得した場合でも、永久居留証取得後に配偶者と離別した場合は、以前と居留資格が異なるので、再度工作許可証の申請が必要とのことです。工作許可証を取得すれば、仕事の兼業は問われません。
【注】
①離婚した場合は、たとえ仕事をしていたとしても配偶者居留証の資格が取り消されるので、そのままでは仕事を継続することができません。新たに就業ビザに切替えるか、離婚前に永久居留証を取得するかしなければ仕事を継続することができなくなります。その就業ビザに切り替えずに配偶者居留証のまま継続する場合は、摘発されると強制送還され、再入国が禁止される場合がありますので、ご注意ください。
②国民の外国籍配偶者で永久居留証取得者の場合、結婚継続期間中は、原則として就職時に工作許可証の提出は不要です。但し、雇用先では永久居留証上の記載からだけでは国民の配偶者であることを確認することが出来ません。また管轄官庁への届出の為に工作許可証の提出を求められる場合があります。永久居留証取得者は「外國人工作許可申請書(個人)」(AF-042)の申請取得または戸籍謄本により証明することができます。
工作許可を申請する必要がない場合:①政府および政府に所属する学術研究機関により、顧問または研究者として招聘雇用された場合。②中華民国に戸籍を有する国民と結婚し、居留を許可された場合。③公立または設立を認可された私立の学校により、短期講座、学術研究を実施するために招聘雇用され、且つそれが教育部によって認可された場合。④ワーキングホリデー許可を得ている場合。
工作許可証の個人申請:永久居留証取得者の工作許可証は個人申請でき申請先は以下のとおりです。申請書は労働部のウェブサイトからダウンロードできます。申請は郵送ででき、手数料は100元(郵便振替で支払ってから、その領収証を同封する)で、申請から工作許可証の取得までに1~2週間かかります。
労働部労働力発展署(勞動部労働力發展署:電話代表02-8995-6000(問い合わせは「外国人士白領工作許可」担当
勞動力発展署:下載專區:外國人工作許可申請書(個人)
送付先:100台北市中正區中華路一段39號10樓 跨國勞動力事務中心(申請聘僱外籍勞工工作許可)收
外国人居留証明書:合法居留の外国籍配偶者で永久居留証を取得しているが、労工局や仕事先から配偶者身分での就労許可に関する証明の提出が必要であると要求された場合は、工作許可証のほかに各地の移民署に申請すれば「外国人居留証明書」が取得できます。それには国民の配偶者の記載があります。手数料100元。
内政部移民署:外國人居留證明申請
労働契約の締結:会社から提示された雇用契約書の記載事項、特に仕事の内容、労働時間(残業の有無)、休暇、給与、手当て等は必ず確認が必要です。
全民健康保険への加入:台湾は国民の健康保険につき強制保険制度を採用しています。一旦会社に就職すると、健康保険は自己名義で加入することになります。就職した会社が健康保険加入手続きをしてくれますが、その際、家族のうち子供について、本人と一緒に健康保険に加入することができます。外国籍配偶者である本人の給与が夫または妻より低い場合は、健康保険料が安くなるメリットがあります。
労働保険(労工保険)への加入:就職時に会社側が手続きし、保険料は給与から控除されます。労工保険とは、日本の失業保険や労災保険に当たり、育児休暇手当てなども含まれます。保険料は所得比率で計算します。失業保険と育児休暇手当ては2009年5月より国民の外国籍配偶者、香港‧マカオ‧中国大陸籍の配偶者にまで拡大され、給付対象となりましたが、加入満1年以上でなければなりません。また、労工保険には年金部分(「勞工保險老年給付満60歳以上で受給可)があります。外国人にも適用されます。
【注】育児休暇手当(育嬰津貼)について:育児休暇手当を申請する場合は、 ①子女が満3才前であること、② 性別工作平等法の規定 により育児休暇(「育嬰留職停薪」最高二年間)を取っていることが必要です。育児休暇手当(育嬰津貼)は、平均給与の60%が子女1人当たり父母それぞれ6ヶ月、合計12ヶ月給付されます。給付基準についての詳細は次のサイトをご参照下さい。
労働部労工保険局(勞動部勞工保險局)
総局:台北市中正区羅斯福路1段4号 02-23961266 (代) 各地に労保局服務弁事処があります。
その他参考記事:『台湾の労工保険~聞かれたことはあると思いますが、ご利用されましたか?~』
所得税の源泉徴収:給与所得の場合、通常は所得税が給与から源泉徴収されます。その時の所得税率につき、年間183日以上居住の「居住者」は、台湾の国民と同一の税率になります(所得税率は累進課税方式を採用しています)。年間183日以下居住の「非居住者」の場合、一律20%の税率になります。但し、会社により源泉徴収しない場合や、税率20%で源泉される場合があります。会社側が国民の一般税率を適用してくれないとき、1年間の居住日数を示して変更するよう求めることができますが、どうしても税率の変更が困難な場合、5月の税務申告の際に還付請求できます。夫婦の税務申告は原則として合併申告です。
財務部台北市国税局(日本語の説明):外国人の総合所得税について
就業規則(工作規則):従業員30名以上の会社は、服務規律、労働時間、賃金、休暇(産休、育児休暇等)セクシャルハラスメントの禁止(性別工作平等法により規定が義務付けられている)等について、労働基準法以上の基準により定め、労使双方が合意し、主務機関に届出しなければなりません。適用事業所に勤務する場合には、就業規則の有無やその内容について確認する必要があります。
定年退職金:労働者定年退職金条例(勞工退休金条例)により2007年7月1日より実施されている定年退職金新制は、2014年1月17日より国民の外国籍配偶者、2018年5月17日より永久居留証の外国人に対しても適用が開始されました。これは労働者が転職時に、雇主が定年退職金として毎月月給の6%以上を拠出して積みたてている労働者の定年退職金個人専用口座を転職先に移行して継続することができる制度です。外国人は新制適用開始前は、旧制と呼ばれる労働基準法に基づく定年退職金制度が適用されるだけで、この制度では同一事業所に一定期間勤務しなければ定年退職金が支給されませんでした(労働基準法第53条:依願退職の場合、①勤務15年以上で年齢が満55歳未満、②勤務25年以上、③勤務10年以上で年齢が60歳のいずれかの場合)。国民の外国籍配偶者は定年退職金新制の適用への移行に際して、旧制適用対象者が引続き旧制を選択する旨を2014年7月16日までに会社側に書面で表明していない限り、2014年1月17日以降は定年退職金新制が適用されます。
給与振込口座の開設:会社から指示され、指定銀行に口座を開設します。
翻訳会社と契約して定期的に仕事をする場合:事前に契約を交わす場合、契約内容をよく確認する必要があります。報酬につき、税務申告するには、扣繳憑單が必要です。特に所得税が源泉徴収されている場合は、税務申告すれば還付請求の対象になります。
家庭教師の場合:授業料や支払日につき、後で問題が生じないように、開始前に必ず取り決めましょう。
学校や補習班で日本語教師などの仕事に就く場合:雇用契約を締結する前に、居留証、日本の大学の卒業証明書(卒業証書原本)の提示を求められます。補習班の場合は、健康診断証明書も必要です。
【参考】 現行の政府の定める最低賃金は2024年1月1日より、毎月27,470元、一時間当たり183元です。政府機関に提出する財産証明などでは、毎月の収入がこの最低賃金の2倍あるかを証明する必要が少なくありません。また、外國専業人員(白領)で就業する場合の最低賃金 は、2024年現在「專門性技術性工作」で月額47,971元です