Thin Lizzy

アイルランドの誇る英雄Thin Lizzyです。

70年代中期~活躍したハードロックバンドですが、

まくし立てる様なボーカルと太いベース,哀愁のツインギター,

やたらテクニカルなドラム、これが独特のアイリッシュな

芋っぽいメロディに絶妙に絡みます。

フィルライノットの独特の甘い歌声は優しさ,力強さいずれも兼ね揃え,

魔性の魅力を感じます。1986年にフィルはオーバードーズで死去。

残ったメンバーでたまに活動している様です。


メンバー:

Phill Lynot Vo.&Ba.

Eric Bell Gu. ~1973

Scott Gorham Gu.

Brian Robertson Gu. 1974~1978

Gary Moore Gu. 1974,1978~1979

Snowy White Gu. 1979~1982

John Sykes Gu. 1983

Brian Downey Dr.

Darren Wharton Key. 1981~


Thin Lizzy / Thin Lizzy(1971)

6/10

デビュー作ですが、ハードロック的要素は皆無。

アイルランドのしぶーいブルースバンドといった風情でしょうか。

演奏も非常にシンプルで素朴。

1曲目からポエトリーリーディングみたいな始まり方です。

Honesty Is No Excuseは三拍子のゆったりとしたバラード。

リラックスした空気感が美しいナンバーです。

Ray-Gunはまんまジミヘンです。やはり髪型といいフィルは憧れてたんだろうなぁ。

Look What The Wild Blew Inは印象的なリフが楽しいロックンロールナンバー。

素朴な感じが良いですね~。

Clifton Grange Hotelの押し殺しつつも力強いギターの表現はカッコいい。男臭さが炸裂します。

最期のRemembering Part1は幾分かハードロック的。


Thin Lizzy / Shades of a Blue Orphanage(1972)

7/10

前作の路線を引き継いだ作品。引き続き素朴な世界が展開されます。

アイルランドでは爆発的ヒットになったアルバムと聞いたことがあります。

ドコドコドラムから始まり、イカしたギターフレーズに繋がる1曲目はカッコいいです。7分の大作。

そのあとはファンキーな演奏が展開されます。フィルの太いボーカルが聴きどころ。

Buffalo Galはポップで素朴なナンバー。シングルカットされた様です。

フィルの優しいボーカルが光ります。

Sarahは後にBlack Roseに収録される名曲の同名異曲。こちらは緩やかな空気感が心地よい、

優しいバラード。寝る前に聴きたい癒しの曲です。

Brought Downは緩急使い分けが光るバラード。力強いサビのフレーズが良い。

後半の盛り上がり,ギターソロも素晴らしいです。

Baby Faceはハードロック展開のナンバー。疾走感がカッコいい。

最期の表題曲,ゆったりリラックスして〆ます。う~む渋い世界だ。


Thin Lizzy / Vagabonds of the Western World(1973)

8/10

前作までのブルージーなテイストを残しつつ、

ハードロック的なアプローチを増やした初期の代表的作品です。

前2作とは異なり、突き抜けた感覚があります。音の方も太くなりました。

Mama Nature Said,スライドギターが非常に効果的なブギーナンバー。

ノリが実に良いですね~。フィルのボーカルも充実。

Slow Bluesサビのゆったりした感じが印象的なブルース。

ギターのカッティングがカッコいい渋いバラードパートが素敵。

The Rocker、初期の代表曲。ガレージ的なテイストのあるR&Rナンバーです。名曲。

アルバムバージョンは最後にイカしたギターソロが聴けます。必聴。

しかしこの曲のうねる様なベースラインは堪らんなぁ。

表題曲,まさにタイトル通りの渋いブルースナンバー。コーラスが印象的で、

ギターリフ,ソロとも充実の一曲。素晴らしいです。

Little Girl In Bloomも神秘的で良いバラードです。

フィルの情感溢れるボーカルをシンプルな演奏が良く引き立てています。ギターソロも最高です。

Gonna Creep Up On Youはファンキーでストレートなハードロックナンバー。

単調ですが、ハードロック的なアプローチが決まってますね。

最期A Song For While I'm Away 3拍子のゆったりとしたバラードで〆ます。

本作を最後にギターのエリックが脱退。


Thin Lizzy / Night Life(1974)

7/10

本作よりツインリード体制となりました。スコットゴーハムと

ブライアンロバートソンが加入。しかし、本作はハードロック的な空気感は

ほとんど感じられず、AOR一歩手前のサウンドという謎。

踏ん切りがつかなかったのでしょうか?しかし、良曲多数収録。

She Knowsアコースティカルポップな逸品です。フィルのボーカルが熱いですね。

表題曲はゆったりとしたバラード。大人の世界ですね。ギターカッティングが

ボーカルに良く絡んでストリングスとともに美しさを演出(どこに向かっているんだw?)。

It's Only Money, Sha La Laはハードロックナンバー。後者は疾走感が特に良いですね。

Still In Love With Youではギターにゲイリームーア,ボーカルにフランキーミラーが参加。

気合の入った素晴らしいバラード。名曲中の名曲でしょう。

ゲイリーの泣きのギターソロも素晴らしいぃ。

Showdown渋いですね~。押し殺した感じのブルースでしょうか。女性コーラスが効果的です。

Philomenaは奇妙なハモリのギターフレーズが印象的。アイルランド的な旋律で良いですね。

最期のDear Heartはソウルフルなゆったりとしたバラードで落ち着いて聞けます。

前作と比べて洗練された感じを受けるのは確かで、決して見逃せない作品です。

ジャケは一番好き。アナログ盤を買って部屋に飾りたい位。


Thin Lizzy / Fighting(1975)

8/10

ようやくハードロックを前面に押し出した作品です。

この辺りから彼らの黄金時代がスタートしたのではないでしょうか。

Rosalieはボブシガーのカバー。力強いフィルのボーカルが良いですね。

ギターリフも開放的です。目が覚める様なスタートですね。

For Those Who To Love to Liveはスタートのハモリのギターが美しい

腰に来る感じの渋いナンバー。楽曲の完成度は確実に上がっています。

Suicideシャッフルのリズムです。ブライアンダウニーのドラムテクに脱帽。

ギターも前面に出てきて世界観を演出します。

Wild Oneは哀愁のバラード。ツインリードギターが最高に活かされています。

名曲。フィルの情感溢れるボーカルも素晴らしいです。

Fighting My Way Backこれもカッコいいハードナンバー。

ファンキーなノリが独特で、力強いフィルのボーカルが実に合っています。

最期のBallad Of The Hard Manめっちゃカッコいいです。ストレートなハードロック。

A面にあたる前半は本当に名曲ぞろいですが、個人的にB面が少し弱いかなぁ。

あとジャケが良い感じにダサいですね(笑)勢いのある感じは良く出ていますが。


Thin Lizzy / Jailbreak(1976)

9/10

沢山の必殺曲を満載した名盤。かれらのスタジオ作品最高傑作でしょう。

キャッチーなメロディセンスは飛躍的な成長を遂げています。

Jailbreak、リフの教科書の様な名曲です。ギターは勿論,ドラムが何気なくカッコいいですね。

曲調から囚人たちが脱獄を企てている不穏な空気を感じます。

Breakout!からのサイレンが鳴り響く展開も熱い。

Angel From The Coastはカッティングのギターが決まっている疾走ナンバー。

メロディがとてもキャッチーです。

Romeo And The Lonely Girl。これは隠れた名曲。カッティングギターとポップなメロディ。

哀愁漂うフィルのボーカルも実に良いです。音の太いギターソロも最高。

Warriorsもカッコいいです。ギターリフ!って感じの典型的ハードロックナンバーですが、

吐き捨てる様なフィルのボーカルが渋い。ソロもやっぱり良い。

The Boys Are Back In Townは代表曲。パワーポップの名曲では無いでしょうか。

フィルのボーカルが凄い高度で、歌おうとしても歌えるものではない。

ツインリードギターがしっかり決まってます。超名曲です。

Fight Or Fall落ち着いたバラードも健在。渋さが堪りません。

Cowboy Songも名曲。ここでのハモリギターも実に効果的です。あぁ哀愁。。

最期のEmerald。このヘンテコ哀愁リフはまさにアイリッシュ旋律でしょう。

ヒットしてもアイリッシュ魂を決して忘れない。かっこよすぎます。

しかしこの作品の素晴らしさは一気に覚醒した感すらあります。凄い。


Thin Lizzy / Johnny The Fox(1976)

8/10

前作の流れを推し進めたアルバムで、代表曲こそ少ないですが、完成度はかなり高い作品です。

Rocky、ギターが非常に太くて超カッコいいです。

フィルも血管が切れそうな力強さで歌っています。

Borderlineは温かい空気溢れるバラード。フィルの哀愁漂う歌声が

美しい伴奏に乗ります。隠れた逸品でしょう。

Don't Believe The Wordブギーな曲調が楽しいハードナンバー。

代表曲のひとつですね。渋めのメロディと鋭角的なリフがカッコいいです。

ワウを効果的に使ったソロも良い。2分ちょいですが、名曲です。

Johnny The Fox Meets Jimmy The Weed、ファンキーな演奏が最高。

タメの効きまくったダウニーのドラムも凄い。

語る様なフィルのボーカルもクールでこれもまた名曲です。

Old Frameもマイナー調のゆったりとした空気感ながら、哀愁漂うツインリードが光るポップナンバー。

Massacreは前作のWarriorの系譜ですね。ツインリード~カッティングリフで疾走するイカしたナンバーです。

Sweet MarieはNight Life期の様なおしゃれなバラード。これも良いですね。

少し地味ながら捨て曲は前作同様無いですね。良いアルバムです。


Thin Lizzy / Bad Reputation(1977)

9/10

全体的にハード色が後退し、歌で聴かせる感じになったアルバム。名曲・佳曲揃いのアルバムです。

残念ながらブライアンロバートソンは本作の途中で脱退。

彼の在籍時がこのバンドの最盛期であったことは間違いないでしょう。

1曲目Soldier of Fortuneはゆったりとした曲調にツインリードの甘美な調べが乗ります。

フィルのボーカルも情感的で良いですね。

表題曲は打って変わってヘヴィでファンキーな黒々としたナンバー。

うわードラムが最高過ぎるぅ!ヘヴィなギターと太いフィルの歌声、大好きですこの曲。

最期ツインリード含め延々ジャムる展開も堪らん。すべてがツボ。

ところでダウニーって間違いなく天才ドラマーだと思うんですが、余り評価されてない感じがありませんか?

Opium Trailは疾走系の名曲。フィルの哀愁たっぷりのボーカルが男臭くて良い。

Southboundも好きです。ゆったり荒野を彷徨うカウボーイってな感じでしょうか。

Dancing In The Moonlight最高です。ハードロックの垣根をあっさり超えてきます。

印象的なベースリフから始まるブルージーなポップナンバー。サックスが良い味を出してますね。

抑えめの演奏から太い音のギターソロ、これは反則でしょう。名曲中の名曲。

Downtown Sundownは恒例のゆったりバラード。こういう曲を歌ってる時のフィルは本当に良い。

鼻にかかったような甘美な歌声。。堪らないですね。

That Woman's Gonna Break Your Heartは芋っぽいメロディが素敵。ツインリードも決まってます。

完成度の高い作品だけに、ブライアンの脱退が悔やまれますが、黄金期はまだ続きます。


Thin Lizzy / Live And Dangerous(1978)

10/10

もはや説明不要。この世界に存在する数多あるライブ盤の中でも

最高のもののひとつであることは間違いないでしょう。

原曲をはるかに凌駕する全曲の完成度,圧倒的臨場感。

これが最後まで徹頭徹尾貫かれます。いつ聴いても満足出来ます。

選曲もこれまでの集大成といった感じで文句なし。

Emelardの怒涛の演奏を聴け!これはもはや暴力。凄まじいヘヴィネスに

哀愁漂うツインギター。信じられない名演です。

Rosalie~Cowgirl Songはスタジオ盤を圧倒的に凌ぐ勢い。

ハード&ドライビングとはこの曲を言う。

Massacre, Warriorなんかはこちらがあるべきバージョンといった風情だ。疾走感が最高すぎる。

Still In Love With Youも原曲を超えている。圧倒的な哀愁と美しすぎるギターソロ。

フィルのボーカルも素晴らしく情感が漂っていて、リアルな臨場感が凄い。

Cowboy Song~The Boys Are Back In Townのメドレーも最高。

高揚感が凄いですホント。やばい。

兎に角最高過ぎるライブ盤なので、他のアルバムは最悪聴かなくいいからこれだけは聴いてほしい。

難点を言えば、これを聴いてしまうとどのアルバムを聴いてもしょぼく感じてしまうことかな!


Thin Lizzy / Black Rose(1979)

9/10

ゲイリームーアが加入しての9作目。共演はこの一作のみとなりました。

楽曲の完成度は極めて高く、Jailbreakと双璧をなす名盤であることは間違いないでしょう。

サウンドも今までより大分抜けが良くなり、臨場感に溢れています。

Do Anything You Want Toはアイリッシュなメロディが特徴的なナンバー。

ヘヴィーなドラムとストレート極まりないベースに乗る美しいツインリード,

フィルの充実したボーカルが堪りません。

Waiting For An Alibiこれはもうハードロックの超名曲でしょう。太いベースの音から始まり、

分厚いツインリード。堪りません。メロディも非常にポップでフィルのボーカル,

常にぶっといベースがカッコよすぎる。カッコいいギターソロは実はスコットらしい。

フィルが娘に宛てたSarah。超名曲です。シンリジィポップサイドの最高作でしょう。

優しいメロディに甘美なフィルの歌声、必殺のギターソロ(昇天できます)。

涙が流れてしまうような優しさにつつまれています。

Got Give It Up, With Loveと哀愁あふれるハードロックナンバーも素晴らしい。

何といっても最期を飾るRosin Dubh(Black Rose)でしょう。

勇ましい展開からスタートし、アイルランド民謡を交え、

怒涛のギターバトルへ。壮大極まりない名曲です。よくこんな曲思いつくな~。

天才以外の何物でもありません。ゲイリーのギターが凄まじすぎるぜ。。


Thin Lizzy / Chinatown(1980)

8/10

スノーウィホワイトが加入。80年代初の作品。

前作ほどではないですが、中々の充実度の作品だと思います。

全体的にかなりポップな出来ではないでしょうか。

We Will Be Strong力強いフィルのボーカルが良いですね。

スノーウィに変わってもツインリードの美しさは健在です。

表題曲は変わったギターリフが面白いポップなナンバー。

Sugar Bluesはタイトル通りハイテンポなブルース。太いベースと

腰に来る感じのリズムが楽しいですね。怒涛のギターソロもカッコいい。

Killer On The Looseは疾走系のナンバーでヘヴィなギターが良いです。

フィルの力強いボーカルも暴力的な感じが良く出ていますネ。

バラードDidn't Iは美しいツインギターの音の洪水が堪能できます。

最期のHey Youは静かに始まり、中盤に凄まじく盛り上がる完成度の高いミドルナンバー。

これも中々に捨てがたいアルバムですね~。


Thin Lizzy / Renegade(1981)

8/10

キーボードにダレンワートンを迎え、製作された11作目。

一番人気のないアルバムだと思います。かなりNWOBHMムーブメントに

感化されている感じがありますね。

でも個人的にはこのアルバム結構好きです。

Angel Of Deathはやたらにヘビーなナンバー。フィルがドラッグのせいか,

大分喉がきつそうなのですが、この曲は暴力的なので、逆にそれが合ってるかと。

キーボードも効果的に使われ、メタルナンバーとして完成度がかなり高いと思います。

表題曲,これはメタルの垣根を飛び出してきていますね。どちらかというと、

New Waveとかそっちへのアプローチな感じすらある。

キーボード中心の落ち着いたバラードですが、

途中の疾走部分とか一筋縄には行かない展開がカッコいい。

Leave This Townは腰に来る感じのブギーナンバー。前作の流れにある曲ですね。

Hollywood(Down On Your Luck)これは完全にメタルですね~。

ヘヴィなリフがカッコいいです。サビで少しメロウになる展開に時代を感じますが、良い曲だと思います。

Mexican Bloodは70年代に戻ったような優しい展開のナンバー。今となっては癒しですね。

本作後スノーウィが脱退。


Thin Lizzy / Thunder And Lightning(1983)

9/10

結果的にラストアルバムとなった作品。20代前半のジョンサイクスがギタリストに迎られました。

その結果、ヘヴィメタル全開のエネルギッシュな一枚となりました。

残念ながら、今までこのバンドが持っていた芋っぽい感じと言いますか,素朴な空気というか、

そういったものが一切感じられません。

ですが、アルバムとしては素晴らしい曲の連続で、極めて高い完成度の名盤となっています。

表題曲は超爆走系ヘヴィーメタルナンバー。フィルは早口でひたすらまくしたてます。

理屈抜きでカッコいい曲です。ジョン・ダレンとも超早弾きを披露。もはや完全に別のバンドの感すら。

This Is The Oneもカッコいい。ミドルテンポなナンバーですが、メロウな曲調に哀愁があり。

The Sun Goes Down。これは名曲です。落ち着いた雰囲気のバラードですが、

鬼気迫る壮大なオーラを感じます。スコットのギターソロも絶品です。

The Holy Warも良いですね。フィルのベースを基調にツインリードがハモりまくります。

Cold Sweatも疾走系メタルナンバー。作曲にジョンが関与しています。

Baby Please Don't Goも素晴らしい。壮大な展開はもはやメタル以外の何物でもないですが、

サビでのフレーズ繰り返しには訴えかけてくるものがあります。メロディが良いです。

最期はやたら明るいBad Habitsでお終い。

大々的な路線変更ではありますが、ヘヴィーメタルを愛する人はこの作品が一番おすすめ。


Thin Lizzy / Life(1983)

8/10

彼らの解散前最期のライブを収録した集大成的ライブ盤。

選曲は各時代から演奏されており、ベスト的で言うことなし。

演奏の方はやはりLive And Dangerousと比べると勢いが感じられませんが、

それでも演奏はがっつり噛み合っており、素晴らしいと思います。

後期の曲のライブバージョンが楽しめるのも嬉しい。

各時代のギタリストが勢ぞろいして参加しているのも最高ですね。

最期のThe RockerではEric Bellはじめ全員がステージ上に集合。

ギターの音がぐっちゃぐっちゃになってる感がありますが、

それでも感動的です。リマスターを待望する作品であります。