Badfinger

1969年アップルレコードからデビュー。

ポールマッカートニー作曲のCome And Get Itでの華々しいデビューを経て、

パワーポップの教科書的な名曲を沢山残した素晴らしいブリティッシュロックのバンドです。

しかしながら、レコード会社,マネージャー等十分なバックアップを受けられないばかりか,

詐欺に近い様な形で搾り取られ悲劇的な最後を迎えてしまいました。

残念ながら、華々しい伝説を沢山残したロックの歴史において、

騙されて搾取されて散っていったという彼らの姿もリアルな真実。

彼らの残した美しい楽曲を是非聴いてみてほしい。


メンバー:

Pete Ham(Vo., Gu., Key.)

Tom Evans(Vo., Ba.)

Joey Molland(Vo., Gu., Key.)

Mike Gibbins(Vo., Dr.)

Bob Jackson(Vo., Gu., Key.)1974

Joe Tansin(Gu.)1979, 1981


Badfinger / Magic Christian Music(1970)

8/10

記念すべきファーストアルバム。もともとThe Iveysという名前で一度デビューしましたが、

全くヒットせず,バンド名を変えての仕切り直しの一枚。

バンド名もビートルズの曲の歌詞から,デビュー曲もポールマッカートニー作曲と、

ビートルズの影響を色濃く感じさせる一枚です。しかし、既に良質なメロディ,ポップのセンスは爆発。

中期のビートルズが好きな人なら一発でハマるのではないでしょうか。

アルバムの完成度という意味では、以後の作品に比べてまだ粗削りな感はありますが、

美しいメロディにコーラス,聴いていて清々しい70年代初頭の佳作ですね。

Come And Get It ポール作曲のデビュー曲。ポップなメロディとしまった演奏がカッコいい曲で、大ヒットとなりました。

しかしこのAppleの全面的なバックアップでのデビューが後々のゴタゴタに繋がったのも確かかも。

Crimson Ship ポップなメロディに乗るみずみずしい雰囲気が良いですね。

Midnight Sun ピート作曲。まさにパワーポップ。ヘヴィなギターとポップで甘いメロディが堪らない佳曲です。

Rock Of All Ages トム作曲のノリノリのロックンロール。トムのハイトーンボイスがさく裂。中々キマってます。

Carry On Till Tomorrow 個人的にはこの作品一の曲。ピートとトム共作の切ないバラードの名曲。

寂しげなメロディと美しいコーラス。胸を締め付けるようなギターフレーズが強烈です。

Knocking Down Our Home オールディーズな感じの緩やかなナンバー。意外にバラエティに富んだ楽曲も収録。

最後は壮大なバラードMaybe Tomorrowで終わります。トム作曲の渾身のバラード。いつまでも輝いています。


Badfinger / No Dice(1970)

9/10

ギターにジョーイが加入。前作から飛躍的に完成度を高め、なおかつ超必殺曲2曲を収録する名盤。

全体的にテンションも高く、音楽への圧倒的なモチベーションを感じますね。

まだビートルズらしい感じはありますが、それでも楽曲の完成度が凄まじい。

最初に聴くならこのアルバムでしょうか。個人的には次作の方が好きなのですが。

I Can't Take It ピートとトムのストレートなロックンロール。太い演奏とファズの効いたギターがキマってます。

I Don't Mind ジョーイとトムの合作。静かな雰囲気のバラード。この空気感好きだなぁ。熱いボーカルも良い。

Midnight Caller ピートとトムによる美しいバラード。ストレートですが、メロディが素晴らしいのです。

No Matter What パワーポップ史上最高の名曲のひとつでしょう。出だしのぶっといギターの音,

瞬間的に勝負が決します。続くメロディ,展開の美しいこと。。完璧な一曲。

ピートハムという人は本当に素晴らしいメロディメーカーだ。

Without You こちらもロックの歴史に永遠に残るであろう名バラード。彼らはそこまで気に入ってなかったのか,

ライブでは一度も演奏しなかったそうですが、のちにハリーニルソンがカバーし世界的な大ヒットとなる。

Aメロをピートが作り、サビをトムが作ったそうで、いずれのメロディもすさまじいインパクトを残します。

常人では到達しえないメロディセンスでしょう。大仰なハリーのバージョンが有名ですが、ここでの演奏はしっとりと大人し目。

そこが逆に切なさを醸し出していて良いんだよなぁ。。

Better Days トムとジョーイの合作。ブルージーで晴れやかなナンバー。ジョーイのボーカルって落ち着いててクール。

Watford John 4人の合作。多分唯一。ブギ―調の明るいナンバー。楽しいね。前奏が結構TVで使われるような?

Believe Me トムのバラード。美しい曲ですね。少しOh! Darlingに似ていますが。切なく甘い歌声が良いです。

We're For The Dark 最後はピートの壮大なバラードで〆ます。しかしこのタイトル彼らの未来を暗示している感も。。


Badfinger / Straight Up(1971)

10/10

最高傑作でしょう。素晴らしく完成度の高いバラエティに富んだ楽曲が散りばめられています。

所謂捨て曲がなく、代表曲をこれでもかと収録しています。ジャケもカッコいい。

兎に角ピートハムの作曲の才能が爆発。ここが彼の最盛期だと思います。

しかし、製作はすでにゴタゴタがスタートしており、最初に録音したものはボツとなり、

更に製作再開後もプロデューサーが交代しての製作。最初はジョージハリソン→トッドラングレンのプロデュースと超豪華ですね。

トッドとメンバーの仲はうまくいかなかったらしいですが。

Take It All ピートの切ないバラードで幕を開けます。ピートの悲壮感すら感じる熱いボーカルが堪りません。名曲。

Baby Blue こちらもパワーポップ史に永遠に名を遺す絶品。ピート作。切なく甘いメロディに乗るピートの力強い歌声と、

Bメロでのトムの甘美な歌声。絡みつくようなギターワークも完璧です。

Money トム作曲のナンバー。既に音楽ビジネスに懐疑的なものを感じていたのか?サイケデリックでカッコいいです。

I'd Die Babe ジョーイ作の渋ーいナンバー。抑えた演奏に乗る切ないメロディ。地味にこれは名曲。秋に聴きたい。

Name Of The Game ピートの名曲バラード。壮大です。ベタベタなメロディですが、そこが彼らの強み。

全然ダサく聞こえないところが素晴らしい。エバーグリーン感あり。

Day After Day こちらもピートの名曲。彼ら最大のヒット曲となりました。こちらも壮大なメロディが堪りません。

ギターをジョージハリソン,キーボードをレオンラッセルが弾いているとか。まさに絶頂期ですね。

Sometimes ジョーイのストレートなロックナンバー。かなりビートルズ(ポール)っぽいのですが、完成度が高い。

It's Over トムの名バラードで終わります。この作品後、彼らはレーベル,マネジメントのゴタゴタに巻き込まれていく。。


Badfinger / Ass(1973)

7/10

経営難になったAppleを離れるべく、悪徳マネージャースタンポリーはワーナーとの交渉を開始。

当然Appleはよく思うはずもなく、ろくなプロモーションも行われずリリースされた作品らしい。

楽曲の方は悪くはないのですが、全体的に華やかさが感じられない。特にピートにおいては深刻で、

わずかに2曲を作曲するのみ。Appleから離れることがかなり辛かったのだろう。

ジャケットもワーナーに見立てたニンジンを物欲しげにみるロバ(Badfinger)という意味深な構図。。

Apple Of My Eye すごく切な気なピートのバラードで幕を開ける。タイトルからわかる通り、

Appleを離れることの悲しみを歌った曲である。のちのことを考えると強烈な悲壮感で迫ってくる曲。

そんな中でジョーイは一人気を吐き,5曲を提供。Get Awayはストレートなブギ―ソング,

逆回転を効果的に使用したIcicles,ジョンレノンを揶揄したThe Winner(すっとぼけた感じが皮肉っぽくて嫌らしい),

もろっくそハードロックなConstitution等バラエティに富んだ楽曲を連発。彼に救われた作品と言えるでしょう。

その中で美しいバラードの名曲When I Sayはトムが自らの結婚を歌う美しい壮大なナンバー。

もしかすると彼のバラード最高作かも知れない逸品です。

ラストTimeless ピートの作曲。これから待ち受ける苦難を思わせる悲壮感に満ちた大作。

兎に角苦しい,つらいといった感じがすごーく伝わってくるダークなナンバーです。カッコいいのですが。。


Badfinger / Badfinger(1974)

8/10

ワーナーに移籍しての最初の作品。心機一転タイトルをバッドフィンガーとしますが、

残念ながら、前作とリリース時期がかぶったり,ワーナーの支援を十分得られなかったりと、

さんざんなバックアップ体制から全く売れなかったそうです。

内容の方は佳曲を多数収録しているのですが、全体的にまとまりに欠ける感じです。

それでもバラエティに富んだ楽曲の数々はアップル時代と明らかに違ったアプローチを目指していることが分かり、

決して後ろ向きな感じは無いですね。

I Miss You ピート作の静かで荘厳なバラード。メランコリックさではNo.1ではないでしょうか。

Shine On 清々しい雰囲気のポップナンバー。ピートとトムの合作です。相変わらずのメロディの良さをみせる佳作。

Love Is Easy ジョーイのポップナンバー。録音が何か変。ライブだとヘヴィでカッコいいのですが、

やたらと音が細い感じ。曲自体はご機嫌な感じで好きです。

Why Don't We Talk トムの情熱的なソウルバラード。この作品,今までと一線を画す雰囲気の曲も多々見られますね。

Matted Spam なんて全力でソウルだもん。ピート作曲の妥協なきナンバー。中々きまってます。

Where Do We Go From Here トム作の浮遊感あふれるポップナンバー。メロディが切なくて好きです。

Lonely You ピート作の渾身のバラード。いつものですが、やはり素晴らしいメロディ。名曲です。

Give It Up ジョーイの最高傑作ではないでしょうか(I'd Die Babeも捨てがたいが)。

ダークな雰囲気に満ちたパワーバラードです。切ないAメロから悲壮感漂うサビ。壮大な一曲です。

最後のAndy Norris ストレートな疾走系R&R。なんとジョーイと夫人の作曲。明るく痛快に終わります。


Badfinger / Wish You Were Here(1974)

10/10

オリジナルメンバー4人での最後の作品。すなわちピート存命中の最後の作品です。

本作リリース後,経緯はわかりませんが、ワーナーはBadfingerを相手に訴訟を起こし

(マネージャーのあくどいやり方が原因なのは明白),前作と一緒に即店頭から撤去された悲劇の作品。

よって全く売れず。しかしながら、内容は間違いなく大傑作。一曲も捨て曲は無く、テンションの高いナンバーが続く。

この後悲劇の最後を迎えるバンドの作品とは全く思えません。それだけにすごく残念ですね。。

Just A Chance ピート作の生き生きとしたロックンロールナンバー。ぶっとい演奏が堪りません。勢いに溢れている。

Your So Fine トムも明るいポップナンバーで応えます。ギターのみずみずしいタメが堪らない逸品です。

Got to Get Out Here ジョーイの美しいバラード。キーボードが荘厳な雰囲気の落ち着いたナンバー。

No One Knows 骨太でありながらポップな素晴らしい名曲。ピートの優しくも希望に溢れた歌声が清々しい。

ギターソロで福井ミカ女史が日本語の語りを披露。これが意外にハマっている(ジャケにもミカ女史が)。

誰も知らないときに輝いている。。まさにピートそのものの様な歌。美しい。本物の神秘を感じます。

Dennis ダークなナンバーでピート作。転調に次ぐ転調を繰り返す複雑な曲ですが、メロディのポップさで

難解に聞こえることはありません。すさまじい名曲。この作品でのピート,怖いくらいに神がかっていると思うのは俺だけか。

In The Mean Time - Some Other Time メドレー形式の大作。トムとジョーイの共作。

少しディスコテックな雰囲気も漂う壮大な名曲です。ピートだけでなく、ほかのメンバーも大きな成長を遂げている。

訥々と歌われるバラードLove Timeはジョーイ作。優しい空気が漂うこちらも素晴らしい曲です。

続くトムのKing Of The Load(T)も優しい雰囲気が美しい。なんだかフィナーレに向けて進んでいく感じが凄く濃い。。

そして最後の超名曲Meanwhile Back At The Ranch-Should I Smoke へ。。ピートとジョーイの合作のメドレーです。

まるで最後の大団円。凄みのある一曲です。壮大。。

作品の充実とは反し、彼らの内実はもはやボロボロで、ピートを除くメンバーはマネージャーの搾取を糾弾し始めます。

しかしピートは、純粋な人だったのでしょう。マネージャーを信じ続け,1975年のある晩,トムと口論の末、言い負かされ、

マネージャーの不正に気付きます。そして誕生日の3日前自宅で首を吊って自らの命を絶ってしまった。享年27歳。

純粋な人は芸術の世界でも生き残れないのだとしたら。。こんなに悲しいことは無いのですが、

どんな世界でも生きて行くというのは大変なことなのですね。


Badfinger / Airwaves(1979)

7/10

ピートの死後,解散していたバッドフィンガーをトムとジョーイが再始動させた一作目。

メンバーが流動的な感じだったりと出だしからゴタゴタが始まっている感がありますが、

作品の方は中々の佳曲ぞろいな内容に仕上がっています。ただし、全体的な統一感はあまり無く、

全体的な覇気に欠ける感じがちょっと痛いかな。アメリカンなサウンドに風変りしている感じもあります。

Look Out California ストレートなロックンロール。アメリカンな感じですね。音がちょっと細いのが気になるが、

トムらしいストレートさが気持ち良いです。

Lost Inside Your Love 名曲その一。トムの美しいメロディが光るバラードです。切ないメロディが素晴らしい。

続くジョーイのLove Is Gonna Come At Last もポップで切ないメロディが光る名曲その二です。

やはりこのアルバムではこの2曲が光っているかなぁ。

Sympathy これはジョータンジン氏(ギターで加入,すぐ辞めた)のナンバーで、モロディスコな感じが良い。夜って感じ。

あとは最後のSail Away これはいつものバッドフィンガーといった感じのトムの美しいバラード。

再始動にもかかわらず,本作も全く売れず。時代を考えると確かにあまりに70年代的過ぎる気もするなぁ。


Badfinger / Say No More(1981)

9/10

トム・ジョーイ体制の2ndにしてバッドフィンガー最後の作品。

兎に角アッパーでご機嫌な空気の溢れる素晴らしい一枚。パワーポップの教科書と言っていいほどに,

甘いメロディに乗るカッコいい演奏が堪能できます。まさに隠れた名盤ですね。

元祖パワーポップバンドの最後の作品にふさわしい内容なのではないでしょうか。

I Got You ジョーイ作のとにかくノリノリなロックンロール。ひたすらに楽しい!ナンバーです。

Come On こちらはトム作のブギ―ナンバー。こちらもご機嫌。リズムが堪りません。

Hold On 本作の最高傑作でしょう。トムとジョーの共作。甘く切ないメロディが堪らないです。

お洒落なキーボードも良く決まっています。

Because I Love You ジョーイの名曲。イギリスのThe Recordsとかあっちの雰囲気。甘いメロディと疾走。堪らん。

Rock 'N' Roll Contract トムのナンバー。ロックビジネスへの不信をぶちまけます。元々はHead First(後述)期の曲ですが、

爆走仕様にリニューアルされています。ひたすらアッパーでカッコいいです。

Three Time Loser こちらもトムのお洒落な雰囲気のポップナンバー。キーボードが良いなぁ。切ないメロディが兎に角最高。

Too Hung Up On You トムの情熱的なバラード。熱いボーカルが堪りません。メロディも感動的。

最後はジョーイのNo More 不思議とダークな曲調。何だか不穏ですね。

アルバムの方は内容の充実にもかかわらず,全く売れず。

そして、リリース後Without Youの著作権をめぐってトムとジョーイは泥沼の訴訟に突入。

そしてトムは1983年にピートと同じく首を吊って自らの命を絶ってしまいました。

音楽ビジネスに心底嫌気がさしたこともあったのでしょうが,ピートを間接的に死に追いやってしまったことをずっと悔やんでいたそうです。

あまりに悲劇的な最後、、バッドフィンガーの歴史はこうして閉じられてしまいました。


Badfinger / Head First(2000)

9/10

1975年に録音されていたが、ワーナーとの泥沼の訴訟からリリースをさし止められていた一枚。

25年の時を経て、正式にリリースの運びとなっています。

音楽ビジネスに嫌気のさしたピートは74年に一旦Badfingerを脱退。その後戻ってきますが、

今度はジョーイが脱退してしまいます。代わりにボブ・ジャクソンを加入させて録音。

内容の方はリリースされなかったことが残念で仕方がない凄まじい充実っぷり。

ちゃんと発売されていればWish You Were Hereと並ぶ名盤と称されていたことでしょう。

Lay Me Down ピートのご機嫌なロックンロール。充実した歌唱に力強い演奏。

ポップなメロディとブリティッシュロックの素晴らしい部分が詰め込まれた傑作です。

トムのHey, Mr. Manager これはもうスタンポリーへの当てつけですね。鼻にかけた様な歌い方が嫌味な感じ。

トムとボブのPassed First ダークな雰囲気のバラード。これも美しいメロディとコーラスが光るナンバー。

Rock 'N' Roll Contract のオリジナルはこちら。やはり原曲の方が鬼気迫る迫力があります。

テンポこそ遅いですが、一音一音に怒りがこもっている感じがする。

Moonshine これも美しいバラード。ピート以外の3人による共作。いつもの美しいバッドフィンガーです。

ジョーイのBack Again ギター弾き語りのメランコリーなナンバー。声が何故かガラガラで悲壮感漂います。

Turn Around ボブのヘヴィな渋いブルースナンバー。当たり前だけど今までなかった感じ。

Disc2にはデモ音源を多数収録しておりお得です。

元々ライオンの口の中にメンバーが吸い込まれていくジャケにしたかったとか。彼らの悲痛な状況が浮かびます。

悲劇で終わってしまったバンドですが、彼らの遺した素晴らしい楽曲は細々と聞き継がれて行くでしょう。