モップス
1966年に結成された日本のロックンロールのさきがけ集団。
デビュー時は所謂グループサウンズの系譜にありましたが、途中からロックンロール,ハードロック等
様々な要素をどん欲に取り込み,独自の世界を築いた偉大なバンドです。
作曲を手掛けるギタリスト星勝(後にプロデューサーとして大成する),
えげつない強烈な歌声を持つ鈴木ヒロミツの2台巨頭による圧倒的なパフォーマンスも時代を超えて響くものがあります。
日本のロック史上あまり脚光を浴びることが無い彼らですが、間違いなく過小評価されており、
まさに早すぎたバンドの称号がふさわしいでしょう。。
メンバー:
鈴木 ヒロミツ(Vo.)
星 勝(Gu. & Vo.)
三幸 太郎(Ba.)
スズキ 幹治(Dr.)
モップス / Psychedelic Sound In Japan(1968)
8/10
力強いサイケデリックサウンドが展開される1stアルバム。ファズが気持ちいいぜ。
かなり本格的なサウンドが既に聴けます。他のGSバンドとは既に格の違いを見せている。
偉大なる作詞家阿久悠が4曲を提供。オリジナル曲はわずか一曲でありますが、
所謂辺境サイケ的な独特の怪しくて不完全な雰囲気が堪らない作品であります
(欧米の音楽通の間でも結構人気の一枚だと聞いたことがあります)。
「朝まで待てない」歌謡曲調としたメロディに乗るサイケデリック且つ力強い演奏。
阿久悠のストレートな歌詞が心地いい名曲からスタート(本格作詞家デビュー曲だそう)。ほんっとファズが気持ちいい。
「サンフランシスコの夜」最初の語りは何なのだろうwしっとりと歌い上げる感じが良いですね。
「アイ・アム・ジャスト・ア・モップス」唯一のオリジナル曲。ファズがぐにぐに鳴り続ける疾走系ナンバー。
これもなかなか癖があって好きです。
「孤独の叫び」凄い迫力です。流石。グランドファンクにも負けておりません。
「ブラインド・バード」くっそヘヴィーで強烈な歌謡サイケナンバー。阿久悠先生の作詞ながらも、
歌詞に差別用語が入っていることから、長らくアルバムから省かれておりましたが、14年のリマスター盤で復活。必聴です。
Please Kill Me! こんな歌詞を50年も前に書いてた人がいることに感動。。
その他Jefferson Airship,The Doorsの定番曲カバーを収録。中々の迫力に仕上げておりますね。
モップス / Rock 'N' Roll '70(1970)
7/10
前作と打って変わり全面的にロックンロールを打ち出した2nd。この作品からこそが彼らの本領発揮でしょう
(前作の感じも個人的には大好きなのですが)。
まだオリジナリティを確立している感は薄く,粗削りな感じが目立つのですが、そこが逆にこの作品の味でしょう。
鈴木ヒロミツの一歩間違えるとアレな感じの乱暴なボーカルがカッコいいです。
「パーティシペイション(参加)」流麗なキーボードに乗るどっしりとした演奏が印象的なサザン感溢れる名曲。
かなり本格的な感じを漂わせつつ,超歌謡曲メロディが突然現れるところが面白い。
「ロックンロール」ジャリジャリのギターサウンドに乗る疾走感溢れるナンバー(Led Zeppelinそっくりのリフ)
その後、ロックンロールの定番曲のメドレー。既に独自の解釈っぷりが際立っている。
やはり鈴木ヒロミツの荒々しいボーカルは唯一無二だ。理屈とかそんなのを超越したすさまじさ。
「京子」タイトルはもろ日本風なのに楽曲はゴリゴリのロックンロールしかも英語というね。楽しいナンバーで好きです。
「I'm A Man」これも物凄い解釈で渋くてカッコよすぎ。疾走するブルース。思い切ってますね。
「Jenny Jenny 70」凶悪極まりないボーカルに尽きるぜ。迫力が尋常じゃない。地獄の底から響いてきます。
「ボディ・アンド・ソウル」疾走するオリジナルナンバー。ギターの音が結構生々しくて良いね。星勝のハイトーンも光っています。
全編荒々しいロックンロールが堪能できるという意味ではかなりおすすめの作品。
モップス / 御意見無用(1971)
9 / 10
日本のハードロック史に残る名盤です。前作はカバー曲が多めでしたが、本作は全曲オリジナルで統一。
単なる海外の模倣に留まらない独自の世界観が花開いています。演奏力については、更なる飛躍を感じる。
今の時代に聴いても全く古びない脅威の一枚。1971年リリースというのも凄い。やはり彼らはあまりにも早すぎました。
「御意見無用」モップスの代表曲ですね。ブルーズを基本にしたヘヴィなナンバーながら、
和の打楽器を用いた斬新なリズムと「イイじゃないかイイじゃないか」のコーラスがあまりに独特。
何度も言いますが、鈴木ヒロミツのボーカルの迫力が凄まじい。最高。
「ダウン・ホエア・アイ・ワズ・ボーン」いきなり9分にも渡る壮大なハードロックナンバーが登場。
高い演奏力が際立ちます。タメの効いたリズムから哀愁メロディへの展開がカッコ良すぎ。
ちょっと後半にジミヘンっぽいフレーズが出てくるのはご愛嬌。
「ノーボディ・ケアーズ」哀愁メロのパワーバラードです。徐々に盛り上がるサビが力強くて良いですね。
星勝もボーカリストとして極めて高い表現力。
「月光仮面」彼らの最大のヒット曲なのでしょうか。特撮の主題歌を原曲の原型が完全に崩壊するまでアレンジした
ブルースナンバー。中盤のおふざけが本当にくだらないwそのバッキングで凄いギターソロが鳴っているというかなりのカオスさ
(後年忌野清志郎がLove Jetsでパロディを披露)。かなり斬新です。
「トレイセス・オブ・ラブ」The Whoを彷彿とさせる軽快なメロディが素晴らしいハードロックナンバー。
個人的にこのアルバム一の曲です。ポップなメロディと凶悪なヒロミツの歌声のハーモニーが素晴らしい。
「ノー・ワン・ノウズ・ワット・ゼイ・ワー」こちらも疾走感溢れるハードロックナンバーで素敵。
乾いた感じの録音が非常にマッチしていると感じます。
上記の様なヘヴィな曲だけでなく、「グッド・モーニング、グッド・アフタヌーン、グッド・ナイト」や
「トゥ・マイ・サンズ」といったソフトな曲も収録されており、アルバムとしても飽きさせません。
最後は星勝がしっとり歌い上げるバラード「アローン」で終わります。こちらも感動的なナンバ―。
彼らで一枚と言えばやはりコレ。代表曲満載です。
モップス / 雷舞(1971)
8 /10
唯一のライブアルバム。収録曲が少なく、ほとんどがカバー曲なのがちょっと消化不良ですが、
カバー曲はもはや彼らのオリジナル曲として消化されており、圧倒的なオリジナリティを爆発させる名ライブ盤。
彼らのライブバンドとしての圧倒的な魅力は間違いなく堪能出来るでしょう。
2014年のリマスター版ではボーナストラックが6曲も収録され、非常に満足度が高い。
「抱きしめたい」The Beatlesの代表曲ですが、考えられないアレンジで展開されます。はっきり言ってやばい。
ゴリゴリの超絶ヘヴィハードロックに仕上がっており、原曲はもはや崩壊。
ヒロミツのおどろおどろしい狂暴なボーカルとヘヴィ過ぎる演奏にはひれ伏すしかない。超名演です。
「愛しておくれ」Gimme Some Lovin'ですね。これも超ヘヴィで最高。このライブ盤ほんっと音が良すぎです。
「愛をあげよう」Bee Geesの甘く切ない名曲ですが、これもヘヴィアレンジに。ボーカルの高い表現力が素晴らしい。
コーラスワークもかなりイイと思います。ディストーション気味のヒロミツのボーカルはやはり最高としか。
「月光仮面」やはりライブだと映えますねこの曲は。中盤のおふざけがやたらに長くて楽しそうw
客席からは笑いが巻き起こります。
「年老いた娼婦の唄う詩」はノーボディ・ケアの別タイトル版。唯一のオリジナル曲です。
当然ながらスタジオ版を超越するド迫力の演奏で迫って来ます。最高ですね。願わくばこのライブ盤の完全版を。。
モップス / 雨/モップス'72(1972)
9/10
ここから歌詞が日本語中心にシフトします。過去の発表済み曲が多数収録されていますが、
いずれも日本語ver.として再録されています。少し内向的でダークな雰囲気も漂っていたり。
これも欠かせない名盤だと思います。ハードロックの範疇から完全に飛躍を見せています。
「雨」外部ライターの提供曲。イントロは彼ららしいヘヴィーな展開を見せますが、以降はしっとりとした,
美しいアコースティックバラードに。新機軸を開こうとしているのが分かります。
メロトロン?なんかも入ってて,まさに雨の日に聴きたい逸品。
「あざやかな時代」フォークミュージックの雰囲気ですね。この路線は次作で花開くことになりますが、
こちらもメロディの美しさが光る素晴らしいナンバー。静と動の表現が早くも円熟の域に達している。
「月光仮面」もういいよwって感じですが、バージョン違いだったりします。中盤のおふざけのセリフも異なる。
「夕暮れ」アローンの日本語ver.です。やはり日本語の方がしっくりくる様な。
「迷子列車」こちらはパーティシペーションの日本語版。個人的には英語版の方が好き。
こちらは歌い方とか録音が洗練されている感じです。
「御意見無用」代表曲ですが、こちらも日本語で収録。どちらも甲乙つけがたい。当然日本語はマッチしてます。
「サンドバッグの木」しっとりと聴かせるサザンバラード風の逸品。タメの効いたギターが素敵。
情感豊かなボーカルが素晴らしいですね。歌詞も哲学的な雰囲気。
「ふるえ」個人的にこのアルバムで一番好き。果てしなく暗ーいサイケデリック風味のバラードです。
ヒロミツの不気味なボーカルに星勝の美しいフェイクが堪能できる渋い一曲です。
中盤のブルーズ展開は流石としか言いようが無い。
「なむまいだあ(河内音頭)」御意見無用の第二弾といった感じですが、よりメロディはベッタベタの和風に。
ブルーズと和メロって愛称良いんですね。これも楽しいナンバーで大好きです。
72年という時代を考えるとあまりに時代の先を行きすぎているのがわかります。正当な再評価が求められる一枚。
モップス / モップスと16人の仲間(1972)
9/10
当時隆盛を誇っていたフォーク・ニューミュージック勢をソングライティングチームとして迎えた,
兎に角豪華賢覧な一枚といった感じ。しっかり自分たちのサウンドに落とし込んでいるところは流石。
一方で作曲家の個性も全開であり、曲によっては聞いた瞬間誰の曲か分かったりするのが楽しい一枚。
「たどり着いたらいつも雨降り」吉田拓郎のナンバー。もはやモップスの代表曲ですね。
サザン風味溢れるカッコいいハードロックに仕上がっています。
ヒロミツのボーカルもしっとりと盛り上げるところは力強く歌われ,高い表現力に圧倒されます。
「大江戸冒険譚」加藤和彦のナンバー。モロサディスティックミカバンドですね。
T.REXオマージュの様な曲調でマークボランをパロったボーカルも登場。軽快さが良いですね。
「いつか」大好きですこの曲。ブレット&バターの人だっけか?三拍子の切ないナンバー。
「マイホーム」われらがキヨシローも参加しています。思いっきり初期のRC節全開で異質感が強烈。
迫力あるハードロックサウンドに仕上がっており、ヒロミツの強烈なボーカルはこの曲にピッタリ。最高。
「母さん真っ青」は星勝によるナンバー。曲調は本格的なサザンロックに仕上がっています。
歌詞がストーリーじみていて面白いですね。
「くるまとんぼ・アンドロメダ」六文銭によるナンバー。抑えた演奏が渋くて良いですね。
このアルバム全体的に編曲が最高すぎる。モップスのバンドとしての極めて高い完成度を感じます。
杉田二郎による「あるがままに」優しいポップナンバーです。今までになかった曲調。メロディが美しい。
「ねえ、ちょいとそこゆくお嬢さん」エンケンも参加。何故かハワイアンのヘンテコナンバーw楽しいです。
泉谷しげるの「当世少女気質」いいなぁ。渋くてまさに沁みるという表現がぴったりの逸品。
ヒロミツがしっとりと歌い上げます。
「窓を開けろ」井上陽水によるナンバー。かなり社会派な雰囲気の歌詞がカッコいいですね。サウンドはGS風。
「輪廻」かまやつひろしも参加。最後を飾るにふさわしいしっとりとした壮大なバラードです。
実質この作品が最後のオリジナルアルバムとなってしまいましたが、最後としては華やかで良い終わり方でしょうか。
モップス / モップス1969-1973(1973)
8/10
ベスト盤なのですが、当時発表されたシングル曲はあんまり入ってなくて、
良い曲を集めたという感じが素晴らしいベスト盤。アルバム未収録のナンバーがほんとんどな為、必聴です。
「晴れ 時々 にわか雨」73年のシングル曲ですが、フォークロック然としたポップなナンバー。
ヒロミツのやさしくしわがれた歌声が凄くマッチしていますね。阿久悠先生が再び登場。
「傘がない」井上陽水の代表曲ですね。ヘヴィな演奏がくらーい楽曲の世界に凄くマッチしています。
ますます元ネタに近づいてしまっている感はありますが。
「永久運動」ちょっとこの曲カッコ良すぎてやばいです。ダークなハードロックナンバー。
あまりに複雑な展開と,完成度やばすぎ。静と動が畳みかけるように攻め込んできます。必聴!
「消えない思い」「朝まで待てない」再録バージョンを収録。GS風サウンドとは異なったまとまった演奏を堪能できます。
個人的にはサイケデリックで怪しい原曲の方が好きなのですが、このバージョンも捨てがたいです。
特に後者はヒロミツの力強いボーカルを堪能できますし。
「歌いたい魂」ジャニスばりの星勝の熱いシャウトが聴けるナンバー。熱いです。
「すずきひろみつの気楽に行こう」ゆるーいナンバーですね。楽天的な感じが良いですね。バックのスティールギターが心憎い。
「御意見無用」これも従来と異なるバージョン。再録なのでしょうか?音がかっちりしている印象。
「何処へ」これは完全に歌謡曲そのもの。こんな曲もやってたんだなぁという感じ。
モップス / EXIT(1974)
4/10
ラストアルバムですが、完全に企画盤の域を出ない代物。
ほとんどの曲が過去のライブの音源だったりするのですが、それすらコラージュされまくりで,
まともに楽しむことはもはや不可能。。したいことはわかるのですが、あまりにもリスナー置いてけぼりなトホホな一枚。
しかし!このアルバム,「わらの言葉」というすさまじい名曲が入っているのです!
この一曲の為だけに存在しているような作品ですが、このナンバーは本当に素晴らしい。
10分におよぶプログレッシブなナンバーで怒涛の展開と圧倒的な表現力は彼らが行き着いた極地でしょう。
まるでピンクフロイドの様ですらありますが、圧倒的なボーカルの熱量と演奏はそれを超えているとすら思える凄まじい名曲。
この曲を聴くためだけに買って頂きたい一枚。
他には19分にも及ぶモップス・ヒストリーもなかなか面白いですが楽曲としては?という感じ。