Felt

所謂ネオアコースティックというジャンルのバンドでは、このFeltが至高でしょう。

ボーカルのローレンスのつぶやきみたいな無気力ボーカルに

やたらに弾きまくるモーリスのギターorマーティンのキーボード。

かなり独特の世界観ですが、これが途方もなく美しく、ハマると中々抜け出せません。

アルバムの収録時間が超短いのも特徴(笑)。色々神秘的ですね。

しかし彼らの作品はすぐ廃盤になったり、再発されたりで忙しいですね。

再発のタイミングを逃さず何とか聴いてほしいバンドです。


メンバー:

Lawrence(Vo. & Gu.)

Gary Ainge(Dr.)

Maurice Deebank(Gu.)1981~1985

Martin Duffy(Key.)

Nick Gillbert(Ba.)1981~1982

Mick Lloyd(Ba.)1982~1984

Marco Thomas(Ba.)1985~1988

Mick Bund(Ba.)1988



Felt / Crumbling the Antiseptic Beauty(1981)

9/10

ぶつぶつ呟くお経の様なボーカルにペチペチアルペジオを鳴らす弱弱しいギター,

ポコポコドコドコ言ってるだけの不安定なドラム。。

あまりにも自分の世界って感じで。。逆に最高なのです。

いや、本当に美しいんですよ。これはこれで既に完成された世界観なのではないでしょうか。

全く古さを感じません。名盤です。

Evergreen Dazed、1曲目からギターインストです。

単純なコード進行に乗るどこか危なっかしい主旋律ギター。

今にも崩壊しそうな危うい美しさが堪りません。

Fortune、比較的ポップなマイナー調のナンバー。これも美しいですね。

Birdman, Cathedralとぬるーっと同展開の曲が続き、

突然疾走感のあるI Worship The Sun。この曲の奇妙なガレージ感がカッコいいです。

ギターリフも印象的です。ボーカルは相変わらずヘロヘロですが。

最期のTempleroyも散々だらだら演奏して最後に申し訳程度に出てくる不気味な多重ボーカルが

良い感じにやばいですね。最高。


Felt / The Splendour of Fear(1984)

10/10

個人的にはFeltのアルバムで一番愛聴している一枚。

ほとんどインストゥルメンタルなのですが、兎に角全編ギターの美しさが尋常じゃないです。

また、前作に比べ、音が幾分かシャキッとして聴きやすくなりました。

兎に角世界観が統一され、完璧に近いと思います。

聴くだけで割とどっかに飛べる感じの逸品ですね。

The World Is As Soft As Laceはもう美しいタイトル通りの世界観で、

透明感あふれまくりのギターにローレンスのお化けみたいな歌声が乗ります。

奥深くから響いてくるコーラスも美しく、とてつもない名曲です。凄い世界。

8分近いThe Optimist And The Poetはゆったりとした曲調にのるギター。

これでもかってほどにひたすらモーリスのギターを堪能できます。

Mexican Bandits素晴らしい。飛べます。このアルバムで一番好きです。

やってることはおそらくシンプルなのだけど、これだけ聴かせられるのは何故なのか!?

The Stagnant Poolは2曲あるボーカル曲のうちの一曲ですが、

暗い暗い暗い!絶望しか感じないですね。しかしこの果てしない暗さが逆に美しい

(関係ないですけどThe CureのPornographyもそんなアルバムでした)。

ラストA Preacher In New England。ディレイの聴きまくったモーリスのギターのみで

ゆったり美しい旋律を聴かせます。

流れ,音,楽曲,世界観とすべてが完璧な傑作!


Felt / The Strange Idols Pattern and Other Short Stories(1984)

9/10

前作とはまたガラッと雰囲気が変わりました。かなりビート感溢れる一枚。

ゲイリー氏はハイハットの存在にようやく気付いた様です。

最初は前作の幽玄な雰囲気が大好きだった自分にとって苦手な作品でした

(だって曲はイケイケなのにボーカルがいつも通りだから)。

でも聴いてるうちに病みつきになった一枚。モーリスのギターがもの凄く開放的で美しいのです。

Roman Litterはキメのドラムが面白い曲。Spanish Houseも弾きまくりギターが気持ちいいし、

Sunlight Bathed The Golden Glowはいつになくポップで軽快。

いずれも絡みつく様で軽快なギターが気持ちいい。

Vasco Da Gamaはゆったりとしたリズムに奇妙なリフ・浮遊感が堪りませんね。

Crystal Ballこれは呟く様なローレンスのボーカルが特に神秘的でいいです。

最期のWhirlpool Vision Of Shameめっちゃカッコいいです。渋いメロディと熱いギター。

いつまでも聴いてられるなぁ。

インストも何曲かありますが、いずれも優美なヨーロッパを想起させる名演です。


Felt / Ignite the Seven Cannons(1985)

9/10

本作よりキーボードにマーティンダフィが加入。モーリスのギターと激しいバトルを繰り広げます。

楽曲の方はかつてないほどの充実度で、一般的に本作がFeltの最高傑作でしょう。

前作のシンプルなサウンドとはまた打って変わって重厚で幻想的な世界が広がっています。

ここで一度このバンドは完成されましたね。以降は成熟したような気がします。

やはり必殺曲Primitive Paintersでしょう。あまりに美しい世界が展開されます。

ここではマーティンのキーボード,モーリスのギターも最高の次元で一体化しています。

エリザベスフレイザーの天使の様なコーラスが美しく、白銀の世界に一瞬で飛べます。

My Darkest Light Will Shineも氷結感が感じられる崇高な一曲。こちらも名曲でしょう。

インストナンバーTextile Ranchは交互に展開されるキーボード,ギターの白熱のバトルが熱い。

疾走系のThe Day The Rain Came Downもカッコいいです。

彼らには珍しく11曲も入ってるし、捨て曲無しとは言いませんが、最初に聴く作品としてもおすすめですね。


Felt / Let the Snakes Crinkle Their Heads to Death (1986)

7/10

前作を最後にモーリスが脱退。ここからはマーティンのキーボード中心の音作りとなり、

前作までと全く違うサウンド志向となって行きます。

幻想的な感じは今後ほとんどなりをひそめます。代わりに楽曲の幅が広がっていったと思います。

本作は全曲インストゥルメンタルとリハビリ的な一枚でしょうか。ひじょーにリラックスしています。

フルアルバムにして20分切りというのも快挙です(笑)。

でも色々な雰囲気の短いインストがちりばめられているこの感じは何だか宝石箱の様で

中々捨てがたいものがありますね。

Voyage To Illuminationなんかはキーボードの浮遊感が良いSci-Fiな佳曲。

結構マニアックな路線のアルバムですが、嫌いにはなれない不思議な一枚。


Felt / Forever Breathes The Lonely Word(1986)

9/10

新生フェルト再始動って感じの一枚。クリエイション時代の最高作でしょう。

ジャケも1stと似ているし、再始動の意気込みの様なものを感じる充実度です。

テンション高めで、全体的に明るい雰囲気の一枚と言えるでしょう。

ひたすらにアッパーなRain Of Crystal Spirersは多幸感溢れるナンバーです。

ローレンスも珍しく声を張って歌っててなんだか楽しそう。名曲ですね。

Down But Not Yet Outは弾きまくりキーボードが凄い。モーリスのやってたことを

キーボードでやってる感じですね~。

September Ladyはかつてないほどポップで穏やかなナンバー。美しい旋律にのるキーボードの

透き通ったサウンドが美しさを演出しています。

All The People I Like And Those That Are Dead。なんつータイトルだ。The Smithsみたい。

曲調はそこまで暗くないんだけどこういう曲が入ってるのがFeltらしい。

捨て曲はありませんね。最初に聴く作品としても非常に聴きやすいのでおすすめです。


Felt / Poem Of The River(1987)

9/10

前作の流れを汲む一枚ですが、よりリラックスした曲が多いのが特徴か。

こちらも前作に負けない名盤でしょう。

Declaration新しい試みですね。ヘヴィめなサウンドがカッコいいブルージーなナンバー。

Silver Planeはゆったりとしたポップナンバーですが、

歌詞にローレンスの静かな覚悟が感じられて素敵です。メロディも美しい。

Stained Glass Windows In The Skyのギターの調べは昇天レベルの美しさ。絶頂です。

ローレンスもかなり素晴らしいフレーズを弾きますね。

まさにタイトル通りの世界が目に浮かぶ様です。

最期のDark Red Birds。凄く優しい旋律で心が温まります。

ローレンスのボーカルも心なしか温かみを感じます。

最期がこの素晴らしい逸品なので、何度も聴いてしまう作品ですね。ジャケも実に良い。


Felt / The Pictorial Jackson Review(1988)

8/10

前作よりテンション高めの一枚。楽曲の幅も非常に広がっており、

佳曲を多数収録しています。カントリー的なテイストが目立っている感じがします。

Apple Boutiqueはカントリーテイスト溢れるアップテンポのナンバー。

ローレンスのボーカルの表現力は確実に向上しておりますね。

Ivory Pastもオシャレなソウル風サウンドが実に決まっております。

Bitter Endこれは名曲です。アグレッシブな展開が実にカッコいい。

Don't Die On My Doorstepもゆるーい曲調にすっとぼけた感じのローレンスのボーカルが独特。

彼ら以外に作りえない世界ですね。

B面は全てマーティンのピアノインストゥルメンタル。完全にジャズそのものですね。

Sending Lady Loadは12分にも及ぶ壮大なナンバーです。

全体的な完成度は前作前々作より落ちますが、これもFeltらしさ溢れるナイスな一枚。


Felt / Train Above the City(1988)

6/10

なんとローレンス不参加の9th。これはもうマーティンのソロとしか言いようがない。

しかもロックの要素はほぼなく、完全にジャズですねこれは。。

何故フェルト名義での発売となったのかは謎で、

フェルトファンが求める世界観とは全く別物。

紙ジャケ版はこいつだけ廃盤になる頻度が高く、入手は結構困難。

内容的には正直微妙ですが、レアなアルバムなので、ファンは中古で見かけたら即ゲット推奨。


Felt / Me and a Monkey on the Moon(1989)

8/10

フェルトのラストアルバム。豪華ゲストを迎えて製作された本作ですが、

かつてないほどやさしさに満ち溢れたアルバムという感じがします。

なんというかあまりFeltらしくない(笑)。

嫌いでは無いのですが、同じような曲調の曲が続くので、

通しで聴くとちいと集中力が必要となります。

I Can't Make Love To You Anymore。優しい旋律に温かさすら感じるローレンスのボーカル。

美しいナンバーです。スティールギターなんか入っちゃったりしてます。

Mobile Shackはビート感溢れるナンバーでギターカッティングがカッコいい。

New Day Dawningは少し暗い感じのナンバー。不穏な感じのリフは彼ららしさを若干残している。

何とも最期の作品らしい一枚。再結成は絶対しないでしょう。何となく。


Felt / Bubblegum Perfume(1990)

8/10

Feltは天邪鬼なバンドなので、アルバム未収録のシングル曲が沢山あります。

クリエイション時代のシングル曲はこのアルバムで大半を聴くことが出来、

非常におすすめのコンピレーションです。

I Will Die With My Head In Flamesは彼ら史上最もスピード感あふれる

疾走ナンバー。完成度も高く、名曲と言っていい一曲。

最期のシングルSpace Bluesの浮遊する感覚は堪らないですネ。

後にPrimal Screamもカバーしました。

The Final Resting Of The Arkはマイナー調のバラードで、

後半の怒涛のサックスとローランドのローテンションな歌声の絡みが何とも言えない

哀愁を醸し出します。大人の世界ですね。

Tuesday's Secretはハイテンションなナンバーでバンジョー的なギターフレーズが印象的。

Be Stillはビーチボーイズのカバー。至上の美しさ・浮遊感を感じます。最高。

Female Starも徹底的にローファイなサウンドが何だかクセになる。

Ballad Of The Bandはクリエイション移籍後の一発目のシングルですが、

目が覚める様な鮮やかなサウンドとテンション。続けていこうとする意気込みを感じる名曲です。

クリエイション期はこのコンピレーションを是非。

チェリーレッド期はAbsolute Classic Masterpiece(1枚組のやつ)が良いでしょう。