研究紹介

生命科学系・学生

山口 晴香(やまぐち はるか)

新領域創成科学研究 先端生命科学専攻 同位体生態学研究室 博士課程
(生命科学系)

研究の部屋     14〜15時 担当

・研究の内容

私は縄文時代や弥生時代の人々がどのような食べ物を食べていたか(「食性」)について研究しています。昔の人の食性の復元には、遺跡から発掘される食べ物を調べたり、文献が残っている時代であればそれを調査したり、同じような環境で現在暮らしている人にインタビューするなど、色々な方法がありますが、私は昔の人の骨や歯の同位体分析という手法を取っています。私たちの骨や歯の同位体比は、摂取した食べ物のそれを反映していることが先行研究で明らかにされています。

食べ物が組織の同位体比に反映される仕組み

同位体分析では骨や歯の象牙質からコラーゲンを抽出したり、歯のエナメル質を採取したりして、それらの炭素や窒素、酸素の安定同位体比を質量分析装置で測定しています。例えば、植物は光合成の種類によって異なる炭素同位体比を示します。修士までの研究では、縄文時代の終わりから弥生時代の中ごろの人の歯を分析し、重い炭素の安定同位体が比較的に多いことを示す値が得られたことから、現在の関東地方や長野県の内陸にあたる地域に住んでいた人々が重い炭素の安定同位体を多く含む雑穀(アワやキビなど)を食べていた可能性が高いということがわかりました。

中国のスーパーで売っていたアワ

博士課程の研究では、縄文時代や弥生時代の人々が食べていたものが年齢や季節によってどう変わっていったのか(もしくは同じだったのか)を調べるための技術を開発しています。歯は「形成後、基本的には代謝による成分の置換が起こらない」という性質をもっているため、それを活かした分析方法を開発中です。具体的には、歯の成長線に沿って微小な試料を連続的に採取し、それを同位体分析することで成長とともに食性がどう変わったかが分かると考えています。

歯の断面の顕微鏡写真。横方向に走っている濃い青の縞々が成長線

・中高生のみなさんへ

私が中高生の頃は多方面に興味はあったものの、何がしたいか全く決まっておらず、色々と悩んでいました。文理選択も、理科の科目選択も、どの選択肢も魅力的で決められず途方に暮れたりしていました。大学生になってから、現在行っている研究もそうですが、簡単に「文系」や「理系」に分けられない非常に面白い研究分野がたくさんあることを知り、今に至ります。既にこういったイベントに参加して情報収集しているみなさんは本当にすごいです。14〜15時に研究について知りたい人向けの部屋にいる予定ですが、研究のことに限らず気軽になんでも質問してくださると嬉しいです。

・これまでの経歴

2013年   愛知県私立南山中学・高校卒業
                    東京大学(理科二類)入学
2015年   東京大学 理学部 生物学科 進学
2017年   東京大学 理学部 生物学科 卒業
    東京大学 新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻 修士課程 入学
2019年   東京大学 新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻 修士課程 修了
                    東京大学 新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻 博士課程  進学(日本学術振興会 特別研究員)
2020年  日本学術振興会 若手研究者海外挑戦プログラム採用 英国・ケンブリッジ大学にて3ヶ月間 研究留学
2021年  現在

・リンク

所属研究室(米田研究室)がある東京大学総合研究博物館の放射性炭素年代測定室  ホームページ
http://c14.um.u-tokyo.ac.jp/

↓東京大学総合研究博物館公式YouTubeチャンネル 放射性炭素年代測定室の紹介ビデオ↓