研究紹介

(自然環境専攻教員

久保 麦野

環境学研究系 自然環境学専攻 生物圏機能学分野(久保研究室) 講師

骨から迫る動物の生態と進化

当研究室で主に研究対象としているのは 動物の骨 です。

骨のかたちには、その動物がたどってきた進化の道筋が刻まれています。様々な動物の骨を比較することで、骨のかたちと生態がどのように関係して進化してきたかを明らかにできます。

現生動物で、骨と生態の関係が明らかになれば、それを絶滅した動物の化石に当てはめることで、絶滅動物の生態を復元することもできます。当時の環境を推定することにもつながります。

ニホンジカを使った比較研究

主にニホンジカを対象に、生態が明らかになっている各地域集団の比較を通じて、生態と形態の関係を明らかにする研究に取り組んでいます。ニホンジカでは特に食べ物と顎や歯のかたちの関係を詳しく調べてきました。 

ニホンジカは北は北海道から南は沖縄の慶良間諸島まで生息していますが、多様な生息環境に応じて、体の大きさや足の長さ、頭や顎・歯のかたち、食べているものなど様々な特徴が異なっています。したがって、ニホンジカは生態と形態の関係を調べる上でとても良い研究対象なのです。

先駆的な形態評価方法で、今までに捉えられなかったものを見る

かたちを比較するうえで、最も伝統的な方法はノギスと呼ばれる計測器具で長さを測る方法です。

当研究室では伝統的な手法に加え、工業用マイクロX線CT装置を利用した形態評価や、フォトグラメトリー法(多数の写真から3Dモデルを構築する方法)などにも取り組んでいます。

左の写真は、マイクロCTを用いて三次元構築した、日本産のコウモリの骨盤の3Dモデルです。一番左のオオコウモリでも3cmほど、右側のコウモリの骨盤は1cmほどしかありません。肉眼で計測が難しいような小さな標本でも、スケールをそろえて簡単に比較することができます。

共焦点顕微鏡を使った、歯の微細な摩耗痕の解析

今、当研究室で最も力を入れているのが共焦点レーザー顕微鏡を用いた、歯の微細摩耗痕の定量的評価と、その古生態復元への応用研究です。

歯の表面には、食べ物を食べるときにミクロレベルの傷が残されます。その傷は食べ物の特徴を反映しているので、逆に傷の特徴から、その動物が生前に食べていたものを推定することができます。

この手法はまだ世界的に研究拠点が少なく、アジアでは当研究室が唯一の拠点です。哺乳類だけでなく、恐竜などの中生代爬虫類にも適用を試みています。