水上 治
一般財団法人国際健康医療研究所理事長
医学博士・米国公衆衛生学博士
2020年08月28日 12:31
福島の再現?
コロナ禍に対するマスコミや自称専門家の対応は、3.11の福島とそっくりです。
我々医療従事者は年に20ミリシーベルト以下の医療被爆と定められ、それで発癌リスクは上がっていません。原発近辺の人でさえ、現実の被爆は1ミリシーベルト/年以下だったのに、マスコミや怪しい非放射線専門家は、癌が多発する、奇形児が生まれるなどと脅しました。
そのために、原発付近の住民は不安に陥り、過剰に疎開し、この数11万人に達し、今も4万人が故郷を離れています。予想されたように、故郷を長く離れた人達は、体調を崩したり、生活習慣病などで多くが苦しみ、多数が疎開地で亡くなりました。福島から疎開した人々への排除は、コロナ患者さんを診ている医療従事者への仕打ちや東京住民への他県の仕打ちとそっくりです。
一般食品の放射線国際基準は、1キログラム当たり1000ベクレル以下としていますが、日本は今も100ベクレル以下です。それが福島や漁業の再生の大きな妨げになっています。政治が科学的な思考ができない人達に引きずられたのです。
被爆被害については、広島や長崎の原爆被害者の緻密で膨大なデータが一番参考になるのに、これが全く語られませんでした。せっかく長崎大医学部の教授が福島医大にやってきて、過剰な不安を鎮めようとしたのに、不安に煽られた住民が、政府の回し元と追い返しました。原爆後は除染もされませんでしたし、黒い雨も降りました。
しかし不思議なことに、今も被爆から生き延びた広島市の住民はトップクラスの長寿です。私は微量被爆による生命活性化現象(ラジウム温泉の原理)の可能性があると考えます。
コロナ禍に対する自称専門家の不安を煽る言動もよく似ています。高齢者が感染恐怖で閉じこもり過ぎ、認知症が増えたり悪化しています。生活習慣病の悪化も報告され始めました。
経済の低下もあり、コロナ鬱が増えています。誰でもが最低限の科学的な思考をきちんと持つように努め、自己治癒力、免疫力、生命力を高めましょう。
2020年08月21日 12:10
グローバリズムの終焉?
この4~6月で、GDP27.8%下落と世は騒いでいますが、輸出減と国内消費の低迷などのためなのは、素人でも理解できます。
では、私とGDPとはどういう関係があるのか、リーマンショックで、なぜ外国のミスが日本の経済に大打撃を与えるのか、納得できません。要するに、グローバル経済には、大きな危険があるのです。グローバル化は、地球を一つの世界とみなし、先進国欧米の価値観が正しいと言う前提で成立していて、日本も隣に倣えと巻き込まれてきました。
医療にも随分前にグローバル化の波が到来しました。欧米式に何でも数字です。各医師の稼ぎが数字で出され(そこには質の吟味がない)、稼ぎが悪い医師がいじめられます。
患者さんの同意書も、例えば手術死の確率0.5%だとか、詳細に数字が並べられ、患者さんを不安に陥れ、契約関係だ、説明責任だと、トラブルを前提にして、細かいことにお互いがエネルギーを使わねば、医療は成立しないことになりました。
医師患者関係が現代ほどギスギスしていることはありません。従来のシンプルな人間関係が懐かしく思い出されます。
ウイルスのグローバル化は誰も歓迎しませんが、価値観のグローバル化、即ち合理主義、理性主義、科学主義、拡張主義などの、これのみが正しいと言う一元的な価値観を無批判に欧米から受け入れるのは、そろそろやめにしませんか。
むしろ、日本のいいところ、即ち、武士道精神に則り、
義:正しさを追求、
勇:停滞している現状を変える勇気、
仁:弱者に対する惻隠の情、
礼:お互いの礼儀、
誠:誠実、
廉:人間の内なる正しさ、清らかさ、潔さ、
智:最新情報を勉強、
名誉:人間であることの誇り、
忠義:組織に忠実、
こういった日本人の美徳を、誇りをもって保持する人間であり続ける、むしろこれらの美徳を世界中に発信していく時代が到来したのです。コロナ禍後、グローバリズムで疲弊して絶望的な世界中が、日本の文化を、実は待ち望んでいます。
私たちは、自信をもって、発信していきます。
2020年08月14日 10:46
自分の頭で考える
私は日本の文化が好きだし、誇りに思っています。しかし、コロナ禍における日本人の言動の一部は、弱点を露呈しています。あるアンケート調査によれば、日本人がマスクをしているのは、周囲がしているからであって、相手にウイルスを伝染させないためと考える人はわずかであるという結果でした。何という非科学的思考か、驚かされます。
この国では同調圧力が強く、「下手に自己主張すると阻害される、メジャーの流れに乗る方が得だ。」と言う判断が自然にされてしまいます。米国留学中は、自己主張しないと馬鹿にされる大学院で、次第に私も自己主張するようになり、帰国後しばらくは病院での人間関係に支障をきたし始めたので、そうだここは日本だと軌道修正して、チーム医療に事なきを得たものです。
何でも自己主張、個人の権利を第一にする欧米文化、個を抑え集団に同調するのを美徳とする日本文化の違いは明らかです。確かにコロナ禍においては、法的規制なしに大半の日本人が自主規制して、一旦感染が収まったのですから、たいしたものです。しかしその背景には、周囲の主流の流れから離れては意地悪されて生きていけないと考える、自分の頭で懸命に考える習慣のない情けない日本人が見え隠れしています。しかも、同調しないとみると卑劣なバッシングです。日本人の美徳は、他社への優しさ、惻隠の情だったはずです。
TVやネットなどで語られている健康情報は、かなり歪んでいます。私が発信する健康情報は、必ずしも日本の権威者が語る情報と違うものが混じっています。それをどうかご自分で考えて、ご理解ご判断いただきたいと願っています。
無視され、笑われ、戦いを挑まれる そして最後は、こちらが勝つ
マハトマ・ガンジー
2020年08月07日 10:17
不要不急、三密が大切である
コロナ禍が数か月にも及ぶと、心身共に疲労感が蓄積してきます。
死因第5位の肺炎が年1万人、インフルンザ3千から1万人、癌38万人などの死者の累積を考えれば、コロナはまだ1千人、死亡者平均80歳で、若い人は罹っても重くなりにくいことが知られています。感染者は増えていますが、重症者や死亡者が少ないままだし、良いこととしては、軽症での発見が増え、重症者の免疫爆発(サイトカインストーム)に対するステロイドなどの治療が進歩しています。
欧米に比べ、致命的な血栓症も少ないのも、死亡者が欧米の1/100の理由の一つです。全体を見る公衆衛生学的な視点が強調されるべきです。高齢者などに注意が必要なのはもちろんですが、正しく恐れることです。これらの理由で、私自身はあまり心配していません。秋にはもっと落ち着くといいなと期待しています。
病院では、通常の受診者の減少と共に、検診の受診者がほぼゼロで、このままでは、治療不十分や発見遅れの生活習慣病の増加、うつや自殺などが増えていきます。
不要不急、三密を避けることの必要性は認めますが、よく考えれば、不要不急、三密が長い人類の歴史を築いてきた礎です。授業も会議も、その前後のちょっとした会話、食事を共にして本音が出てくるなどの交流に意味があります。
家族や友人関係も同じです。人間関係が密になるほど三密になるし、不要不急と言うのも、最小限の生活を維持するだけで、情緒や感情などの世界は、不要不急に分類されてしまいます。個人の主観だけで、周囲を不要不急と断罪してはいけません。
世阿弥の言った「離見の見」を味わってみます。自分から離れて冷静に事物を見ることです。コロナ騒ぎから一歩身を引いて、自分にとって不要不急とは何か、三密とは何か、じっくりと思いを巡らしてみましょう。
2020年07月31日 14:11
粘膜で防御
まだまだ全国的にコロナ感染が続いて、皆さんストレスを感じていることでしょう。
近年の研究で分かってきた意外なことは、コロナ肺炎で治った人の1/3程度は抗体を持っていないことです。麻疹にしても風疹にしても、そのウイルスに適応した抗体を創って治すことが殆どですから、意外です。ウイルス感染の常識を破る事実をどう解釈したらいいのでしょうか。
今注目されているのは、ウイルスが、結膜・鼻粘膜・咽頭粘膜・気管支粘膜に侵入した時に、誰もが持っている自然免疫によって撃退されると、抗体を創らないで治るということです。即ち、強固な粘膜ほど、物理的科学的バリアーをつくって、ウイルスを侵入させにくくします。そして、直ちに白血球の一種マクロファージやナチュラルキラー細部などがそこに集まって、ウイルスを撃退します。内部への侵入を許さずに撃退できれば、完治します。風邪のひき初めに、のどのイガイガを感じているうちに、数時間でいつのまにか治ってしまう、あれです。日本が欧米に比べコロナ肺炎の死者が1/100程度の理由として、今一番有力な説は、BCG接種が自然免疫を強めているらしいことです。
このように、何とか粘膜でウイルスをブロック出来たらいいですね。粘膜を強化する方法はいくつかありますが、大切なのは、ビタミンAをたっぷり摂ることです。というのは、ビタミンAは粘膜のバリアー機能をしっかりさせるのに必須だからです。わが国の近年のビタミンA摂取量は、残念ながら不足気味です。今コロナに備えるためにも、ビタミンAそのものを魚介類などから摂り、体でビタミンCに変換されるベータカロチンを含む緑黄色野菜をたっぷりと摂りましょう。私の場合は、確かに緑黄色野菜を意識して摂るようになってから、風邪をほとんどひかなくなりました。
粘膜水際作戦で、コロナの侵入を阻止して、罹患を防ぎましょう。
2020年07月17日 14:02
感染確率を語れ
ジョルジョ・アガンベンというイタリアの哲学者は、コロナ感染拡大の最中の3月に、怒りを込めて言いました。「死者が葬儀の権利を持たない。」 誰でも、愛する人に見守られて逝きたいはずです。死者は息をせず、ウイルスを排出しませんから、着替えて、皮膚を消毒すれば、普通に葬式ができます。わが国でも、骨になって帰宅した人がいます。状態に応じた感染確率が、専門家によって語られていません。
コロナウイルス感染が成立するためには、たっぷりのウイルス量が必要で、あるデータだと100万個以上といいます。咳によってウイルス1万個が空中に飛び散っても、直ちに霧散しますので、傍の机の表面のウイルス量は1平方センチ当たり、ほんの数個で、それが手について口に入る確率を専門家が語るべきです。感染患者のいる病院と、スーパーなど一般社会とは、ウイルスに遭遇する確率が全く違います。家や学校で机の上を絶えず消毒する必要はありません。感染者の多い東京だって、人口にくらべまだまだ少ないので、ウイルスが街に蔓延しているわけではありません。
ウイルスは遺伝子そのもので、細胞に入らないと増殖できず、次第に活性を失います。外気では、飛沫は直ちに空気中で霧散し、隣人を感染せしめる量には到底達しません。ですから、外でマスクが必要であるという科学的証明はありません。ジョギング中のマスクは酸素不足を招き危険です(中国ではN95と言う高性能マスクでジョギングし3名死亡と報道されました)。海水浴やサーフィンなどでは、風は強いし、感染が成立するいかなる根拠があるのでしょうか。私はインフルエンザや麻疹でも、外で人を感染せしめた事例を知りません。ごく小さな確率で交通事故に遭うと言っても、誰もあまり心配しないでしょう。
今回、ウイルス感染防御学の専門家が日本にほとんどいないことが露呈しました。我々医師は患者の前で、様々なリスクを瞬時に数字で考えます(医学部では、確立統計学が必修です)。専門家は定量的な感染リスクを語り、人々の過剰な恐怖を減らすべきです。
2020年07月10日 10:39
科学はすべて仮説と知るべし
この半年で新型コロナウイルスに関する医学論文が2万を越えましたが、今世界トップの医学雑誌(NEJMとランセット)に掲載された2論文が不正らしいと分かり、問題になっています。
一つは抗マラリア剤の有効性が確認されないばかりか、死亡リスクが高まる可能性を示唆しましたが、内容に矛盾があります。
もう一つはある種の降圧剤の服用が、この感染症の重症化リスクを高めないという内容でしたが、データの信憑性に疑義がもたれました。
両研究を統括したハーバード大のマンディブ・メフラ教授が謝罪し、両論文を撤回しました。データ収集と分析は、両方とも米国のサージスフィア社が担っていましたが、無名の企業で全く実績もありませんでした。
コロナ禍が広がり、研究者に焦りがあること、新しくて役立つ情報が欲しい現場の気持ちは理解できますが、拙速はいけません。医学論文の捏造は人の生死に直結しますから、江戸時代なら打ち首でしょう。
科学論文の捏造は長年大きな問題になっています。研究現場では、データは変えようと思えばいくらでも可能です。薬の臨床試験の資金源は、どうしても製薬会社になりますから、研究者はいつも襟を正していなければなりません。
近年の日本人はあまりに科学を信じ過ぎています。最新医学情報にも、かなり間違いが混じっています。実は、科学的に絶対に正しいと証明することは、不可能なのです。科学は全て仮説です。麻酔薬がなぜ効くか、まだわかっていません。医学的に今正しいとされていることも、明日覆るかもしれません。私は医学を学び実践してきましたから、科学を否定するものでは全くありませんが、過信は避けるべきです。
科学の発達は人に恩恵を与えてきましたが、今や人を翻弄しています。科学は人生に意味を与える力はなく、必ずしも人を幸せにはしません。科学主義、人間中心主義による自然への侵食が、コロナ禍の背景にあることは、何度も言ってきました。
自然物である人間は、都市と言う人工物から時々離れて、美しい日本の山や海に入り込み、コロナ後の自分の生き様に思いをいたす、今は絶好の機会です。
2020年07月03日 11:52
薬疹から謙虚に学ぶ
恥を忍んで告白します。半月程前、実は虫歯のために飲んだ鎮痛剤による発疹に、今も苦しんでいます。服用後数時間で、左足大腿部に多数の赤い発疹が出現しました。一瞬何が起きているか、理解不能でした。弱めの薬だし、飲み慣れていて、今まで何も副作用がなかったことで、油断していました。内科医は、薬物のプロだから、少なくとも自分に起こしてはいけないはずでした。
たかが薬疹ではありますが、私にとっては実に不快な日々で、何となくだるいし、胃腸の調子も悪く、突然発作的に痒くなり、熟睡を妨げられ、気鬱になります。習慣化していた有酸素運動や筋トレもやる気になれず、日々体力が落ちていきます。長年堅持してきた健康維持の生活サイクルが、一瞬で崩れてしまいました。一度の風邪薬の服用で、全身に発疹が出て死にかけ、失明したあるバイオリニストを思い出し、もう一服のまなくてよかったと、胸を撫でおろしています。
自然物である人間が人工物を体内に入れた時、異物反応としての一種のアレルギー現象を起こします。毒として体が認識したら、まず肝臓へ運ばれ、解毒されますが、不十分なら、皮膚から排泄されます。それが発疹です。異物は、細胞レベルでは極めて複雑な未知の病的現象を必ず起こしていると考えるべきで、いのちの調和を乱しているのです。
徒然草で吉田兼好は、「友とするにわろき者に、病なく身つよき人」をあげています。健康に恵まれている私も、時に病気になった方が、友としていいのでしょう。
人間は自然の一部であり、人為的な介入は危険を伴うことを痛感しました。人工物を体内に入れるときは細心の注意を払うべきです。漢方薬は自然物ですが、アレルギーや肝機能障害などは患者さんに診ていますし、食べ物も自然物ですが、アレルギーは起こりえます。サプリメントがどんなに自然物でも、稀にアレルギーが起こりうることには、細心の注意が必要です。人間が自然の一部であることは絶えず銘記してください。繰り返しますが、コロナ禍は自然の侵食から来ています。
数日後には私は完治して、今回学んだことを生かして、更に思慮深く生きていますので、ご心配なく。
2020年06月26日 10:08
コロナに軽く罹ってしまおう!
新型コロナからは完全に逃げ切れず、世界中どこに行ってもゼロリスクでなく、ローリスクです。先般東京での抗体保有率が0.10%と発表されましたが、意外と少ない印象です。
現実的にどうしたらいいか。見えない敵と絶対接触しない保証はないので、むしろ軽く罹って抗体を創っておく(集団免疫)のがいいのです。
それは危険だと反対されそうですが、幸いわが国の死亡率は極めてゼロに近いのです。その理由として、同じ新型コロナウイルスでも悪性度の高いL型と悪性度の少ないS型があり、わが国は主にS型です。S型に罹って抗体を持つと、L型にも罹りにくく、軽く済むことも分かってきました。
それ以外にも、日本人の遺伝子構造がコロナ感染に有利である可能性、BCG注射の影響なども研究され始めました。軽くコロナに罹ることができれば、抗体がどのくらいの期間、体内で機能するかは未知数です(数か月は持つでしょう)、当面の発病から免れられるはずです。
この半年ですでに新型コロナ関係で2万もの論文が出ています。興味深いのは、ウイルスを攻撃するTリンパ球・NKリンパ球、抗体を創るBリンパ球などの機能の弱い人が、感染後重症化しやすいことです。
やはり、日頃から良好な免疫機能を保持することをお勧めします。NK細胞などリンパ球が、新しいウイルスに対して反応が弱い人がいることも事実です。常識的ですが、健康的なライフスタイル、タバコを吸わず、大酒飲まず、軽い運動、食餌でビタミンA・C・D・E、亜鉛やセレンなどをきちんと摂っておくことが大切です。
すぐ思い出す実験があります。昔ミュンヘン大学の衛生学の祖ペッテンコーファー(森鴎外の師)は、当時主流のコッホのコレラ菌説に反対し、自ら大量のコレラ菌を飲んでみせたが、下痢はしたものの、コレラにならなかった実験です。すなわち感染が成立するのには、病原体の質と量、本人の免疫機能などが関係すると言うことです。
コロナを吸い込んでも、発病しないで体内で抗体を創る試みは、集団免疫として見直されるべきです。
2020年06月19日 13:47
ウイルスとの共生しかない
ウイルスについての誤解が蔓延しています。見えない敵に怯えすぎていないでしょうか。
ウイルスは無から生じたものではなく、人類の歴史とともに、元々あったものです。しかも、大半は無害で、むしろいいこともしているのです。新型コロナウイルスもコウモリが持っていたもので、長年人にとっては、単なる風邪のウイルスだったものが、突然変異をして毒性が強くなりました。ウイルス学的には、日常普通に起きていることです。
専門家によれば、人間の1個の細胞当たり10個以上ウイルスが共生しています。人体の細胞は37兆個前後、腸内細菌細胞は100兆個とも1000兆個と言も言われますので、人は一人当たり少なくとも1000兆個くらいのウイルスを持っていると計算されます。信じられない数字ですが、共生すればよい、と言うよりも、すでに共生していることを認めるしかありません。
なぜ人にウイルスが存在するのでしょうか。遺伝子は親から子への垂直関係で情報を伝えますが、ウイルスは感染させることで、そのRNAやDNAを水平に伝搬する機能を持っています。
実は、生命を維持したり、改善するために、ウイルスは生体に遺伝子を運びます。胎児は母体にとって免疫学的に異物ですが、胎児を特殊な膜が守っています。この膜の形成に重要なシンシチンというたんぱく質が、ウイルス由来の遺伝子によることが分かってきました。
長い人類の歴史の中で、どんなウイルスとも人類は何とか共生してきました。新型コロナもいずれは共生に入ります。多くの人が知らぬ間に感染し、抗体を作って自然治癒します。新型コロナは常在する感冒ウイルスとなるでしょう。
人間がウイルスを制御できると思ったら、傲慢です。私は医師として、抗ウイルス剤やワクチン等の開発使用を否定しません。しかし、抗生剤の乱用が耐性菌を創ったように、目先ばかり考えていると、ウイルスの生態系を侵すことになりえます。
我々は現実を直視し、ウイルスとの共生を認めるしかありません。私たちの内外はウイルスだらけで、絶対に逃げ切れないのですから。
2020年06月12日 10:09
有機的組織
新型コロナが未知の病原体であるとはいえ、台湾など一部の称賛されている国に比べると、我が国の対応はミスが多かったことを、誰もが感じています。致死率が欧米諸国よりも極めて少なかったのは幸いでしたが、やり方によってはもっと少なかったはずです。
国立感染症研究所は細菌やウイルスの基礎医学の研究機関であり、臨床研究機関ではありません。厚労省にしても、保健所にしても、臨床経験の乏しい少数の医師のみで、彼らに任せ過ぎのために、対応が後手後手に回ったのは明白です。しかし誰も責任を取りません。
WHOや米CDCの対応の甘さが目につきますが、リーダーが感染症部門の予算や人材を大幅に削ったことが主因です。リーダーには先見の明が必要です。
当財団はまだ新しい組織です。人々にもっと健康になっていただくための活動を開始していますが、さらに良い組織をつくるためにどうしたらいいか、私は常に考えています。
従来のほとんどの組織がそうであったように、トップダウンはもう時代遅れです。それは現場の情報が伝わりにくいからです。むしろこれからは、ボトムアップが必須です。今回のコロナ禍でわかった様に、現場を正確に把握していないトップが、的確な決断が出来るはずがありません。コロナ以後進化できない組織は、淘汰されるでしょう。
人間という存在は、自然界の一部であり、自然という環境が、酸素や食物など、人間の細胞一個一個に入り込んでいます。そして同時に、二酸化酸素や排泄物などを介して、環境に溶け込んでいます。
当財団は細胞の集合体です。皆さんは1個の細胞として、我々と密に交流し、それぞれの個性を尊重し合い、有機的な一体となって熟成発酵し、高品質の産物を外界に発信していきます。
私は健康医療の専門家としての情報は発信していきますが、どう健康になったかという各人からのフィードバックも必須です。組織の命運を握っているのは皆さんです。そうです、財団は皆さんのものなのです。
当財団は、皆さんと共に、医療の本道、人をより健康にするために、進化し続けます。
2020年06月05日 10:35
医療の「不要不急」とは?
コロナ禍で、病院は件並外来患者が減って、8割が赤字に転落しました。もともと病院経営はギリギリで、今年は全ての病院が赤字でしょう。診療所も相当苦しいです。医療の「不要不急」について、考えさせられます。
欧米の病院を訪れても、日本のような混雑は見たことがありません。欧米に比べると、日本の患者の年間病院受診回数は月1回以上で、約2倍です。有名病院では今も3時間待ちの3分診療と揶揄されます。
欧米では、生活習慣病は全て予約診療で、あまり待たされずに、30分や60分ゆっくりと医師と相談できます。医師だって、3分診療は不本意なのです。欧米では、使い慣れた降圧剤などは、基本的に3か月程度の長期の薬の処方箋を出します。何かあったらすぐ連絡する、夜や週末などはER(緊急室)を受診する、と言う習慣が徹底されていますから、患者側に不満はありません。
日本の病院は、昔は生活習慣病でも2週間、今でも大抵4週間の薬の処方ですから、よけい外来が混むのです。再診料が安いので、数をこなさなくてはならない保険点数上の問題もあります。長期処方したり、生活習慣の指導をしたら、きちんと収入が入るようにしたらいいと、私は考えます。
OTCとは、オーバー・ザ・カウンター、すなわち、薬局で薬剤師に相談して、医師の処方箋なしに気軽に買える薬のことです。痛み止めや抗アレルギー薬、風邪薬などちょっとした病気には、これで十分間に合わせることが出来ます。これをセルフ・メディケーションといいます。
今回のコロナ禍で、セルフ・メディケーションでしのいだ人も多数いることでしょう。実は薬学部が6年制になったのは、政府の医療費抑制策の一つとして、セルフ・メディケーションを盛んにしようと言う作戦のためです。薬剤師が患者のセルフ・メディケーションをサポートできるように、それまでより更に2年教育を伸ばしたのです。薬剤師が丁寧に相談に応じるので、まごまごしていると、病院や医院は倒産します。
これからは、セルフ・メディケーションの時代です。大きな病気が医療を必要とするのは間違いありませんが、自分で判断できる、軽い病気なら、まずセルフ・メディケーションで様子を見ていいし、それも医療費抑制に役に立ちます。医師任せではなく、自分の健康は自分で守る時代に突入しました。
2020年05月29日 13:47
つい最近まで、医師たちは、感染症はもう克服された、今は生活習慣病の時代だ、と説いていました。
病院の外来は、癌も含め生活習慣病の人でごった返しています。戦後の抗生物質の発達により、結核はたいてい治る病気になりましたし、肺炎で亡くなる人も減りました。
実は日本の医学部には感染症講座がほとんどなく、専門医も数えるほどしかいません。それは医学会が感染症を軽視し、医学生にとって感染症はやりがいある疾患とは思えなかったからでしょう。今回のクルーズ船騒動も、岩田健太郎医師(神戸大学)のような歴戦のプロが指揮していたら、間違いなく感染症者は減っていました。
コロナ禍によって、ウイルス感染症が、今後医療上の大問題であることが、誰でも痛いほどわかりました。的確な抗ウイルス剤が乏しく、もし薬ができたとしても ウイルスは 遺伝子を変化させ、だんだん効かなくなります。有効な抗ウイルス剤は、ヘルペスとインフルエンザにしかない現状を受け入れなければなりません。抗生物質や抗菌剤の乱用により、細菌は薬を効きにくくするように変異し生き延びる(薬物耐性)現象が加速しています。
現代は耐性菌が増え、わが国では年に8000人が耐性菌で薬が効かない感染症で亡くなっていると推察されています。
コロナの約10倍です。
今までは耐性菌に対しては新しい抗菌剤で対処できましたが、いろいろな理由で、近年は抗菌剤の開発がほぼストップしています。
実は耐性菌は世界的に大問題になってきているのです。感染リスクをゼロにできない以上、むしろ免疫機能を上げる、平たく言えばいのちを上げる日々を送る方が、どんな病原体に襲われるかわからない現代において、有効な生き方であると確信しています。
私が目指す健康とは、風邪もひかない、ひいてもすぐ治るような高水準の健康状態です。どうしたらいいか、今後継続的に発信していきます。
人類史上、強い人が生き延びてきました。あなたも、強い人になれるのです。
2020年05月22日 09:40
自然に還るとは
人間は自然の中に生まれ、自然から食物など恵みを得、他の生命体と仲良くし、最後は自然に還っていきます。人間は自然という生態系の中で生きてきた自然物です。しかし近代人は、何世紀にもわたって、自然から距離を置き、自然を破壊し利用して、文明を発展させてきました。その結果、今や世界の陸地の75%がひどく改変され、湿地の85%以上が消失し、種の絶滅速度が増しています。人間の仕打ちに、自然はもう悲鳴を上げています。
ウイルスは遺伝子そのものなので、生命体に寄生してのみ生存可能です。近年のウイルス感染症は、自然破壊によって野生動物との接触を加速したことが原因です。今回のコロナ禍も、自然を侮ったための自然からの逆襲です。自然の一部として、人間はもっと謙虚になるべきです。
医聖と呼ばれる2500年前のギリシアのヒポクラテスは、薬草による自然医療を行っていました。以来薬物が発明される100年ほど前まで、ヨーロッパの医療は薬草使用が中心でした。わが国でも同様で、人体と言う自然物を自然界の一部として捉え、自然から離れると病気になる、自然に調和させることが健康の秘訣であると信じていました。昔は、風邪には生姜湯を飲まされたり、リンゴをすって食べさせてもらったり、たっぷり母に甘えられる(?)のが何よりの薬でした。今もヨーロッパの病院では、風邪には薬は処方されません。
自然の中に癒しの源が無数に存在します。それはドクダミだったり、伝統食だったり、森林浴だったり、温泉浴だったり、座禅かもしれません。そうです、自然と言う癒しシステムに育まれて、人間は生き抜いてきたのです。私は半世紀どうしたらより健康になれるか研究し、そうだ、人間が自然に還ることが必須であると気づきました。自然から離れるほど病気になり、自然にどっぷりつかるほど健康になれます。
より健康になりたいのなら、今自分が自然に還るのはどういうことなのか、空を見、緑を見、星を見ながら、少しずつ実践することをお勧めします。必ず、より健康になれます。
2020年05月15日 11:24
分析から全体へ
コロナ禍に関し、西洋医療の元祖欧米諸国の惨憺たる有様に、なぜなのか考えさせられています。西洋医療は分析医療であり、ウイルスのRNAを解析し、抗ウイルス剤やワクチンを用いて、ピンポイントで敵を攻めると言う発想なので、製造や検証に時間がかかり、副作用の危険もあります。
ウイルス感染症の歴史の中で、人類が根絶できたのは、ただ一つ天然痘のみです。現実には我々はウイルスと賢く共存していくしかありません。やはりコロナ感染に関しても、罹っても重症化しないような免疫機能が、一番大切です。
日本の様なBCG接種国のコロナ感染症の死亡率が極めて少ないことが注目されています。BCGは膀胱がんにも使われているように、全身の免疫機能全体を底上げしますから、コロナ感染症の経過を良くしていることは、十分考えられます。
コロナ禍で中国の収束が早いと伝えられる大きな理由として、数千年の歴史を誇る漢方薬の使用が挙げられています。すでにコロナ感染症の6万人以上が服用し、9割のQOL(生活の質)改善が見られたと報告されています。省ごとに国立の中医薬科大学を持ち、医師資格を持つ中医(漢方医)が処方し、専門の薬剤師が処方する漢方薬を服用すると、よい経過を辿りやすいのは当然です。デジタル情報で診断したら、誰でも同じ治療法となる西洋医療と違い、東洋医療は、人間丸ごとを診る個別化医療ですから、むしろこちらの方が最新とも言えます。
私の医療のスタンスは、患者さんの詳細なデータを解析したうえで、電子カルテだけを見るのでなく、互いの信頼性を構築する会話とていねいな診察を大切にすることです。分析にばかり走るといのちから遠ざかり、不安を持った人間全体丸ごとを見るとき、いのちの本質を洞察できるのです。
最新情報に基づいた分析医療を大切にしながら、人間全体を健康にする医療を、私は目指しています。
2020年05月08日 15:22
歴史から学ぶ
今回から毎週ブログを連載することになり、張り切っています。当財団は健康医療の研究機関であり、健康医療とは、誰もがより健康になり幸せになることを目指す医療です。私が健康医療の専門家として今考えていることを、続々と発信していきます。
まず歴史から疫病を学ぶ必要があります。手元にある富士川游著「日本疾病史」を見ると、6世紀から日本は天然痘、麻疹、赤痢、流感など、疫病に苦しんできたことが分かります。622年聖徳太子が疫病で妃や母と共に倒れたために、回復の祈りを込めて国宝の釈迦三尊像が創られました。日本人は疫病になすすべなく、神仏に祈ることぐらいしかできませんでした。そして闘えない疫病を受け入れ、何とか共存しようと、精一杯折り合いをつけて生き抜いてきたのです。日本の美術や和歌、音楽や祭りなどにこの気持ちが込められています。京都の祇園祭も疫病神からの守りが祈願され、美しさが希求されています。暗ければ暗いほど光を求め、過去の日本人は疫病に対しても、見事に心のケアをしてきたのです。
この本の解説に、尊敬する小児科医の松田道雄がこう書いています。「読者は、私たち日本人の祖先が、戦乱や天災とならんで、住民の生活をおびやかした疫病と、どんなに絶望的な抵抗をくりかえしてきたかを感じることができる。日本の文化は、この苦悩を通じてつくりあげてこられたのである。」
日本の文化は、弱者の辛い心情をも受け入れて練られてきた、極めて分厚い文化です。そこに本居宣長が言う「もののあわれ」があります。
コロナ禍は我々にとって大いなる試練ですが、私は「この危機をむだにするな!」と強調したいのです。英語で言うと、Never waste a good crisis ! です。
私は日本人です。歴史から学んでいるので、疫病には全く動揺していません。この逆境を素直に受け入れ、今こそエネルギーを蓄え、次の活路を必ず見つけ、コロナ後の新たな世界を、皆さんと一緒に創っていきましょう!