日本人の生き方が脳を進化させる
マシュー・リーバーマン
14.日本人の生き方が脳を進化させる
近年の研究により、日本人の脳の使い方が特殊であり、脳進化に極めて役立つことが判明してきました。脳科学者でUCLA教授マシュー・リーバーマンは、①つながる②心を読む③調和する、この3つの力が人類発展の鍵、幸せのための力となると主張しています(21世紀の脳科学、人生を豊かにする3つの「脳力」、講談社 2015年)。
ハーバード大学公衆衛生学教授イチロー・カワチによれば、日本人が長生きなのは、お互いのネットワークのためだ(命の格差は止められるか、小学館、2013年)とされています。都市化で隣人との距離が広がったのは、ある意味で損なことです。
脳科学者東京大学教授松本元による、愛は脳を活性化する、という興味深い研究もあります(愛は脳を活性化する、岩波書店、1996年)。
従来は、判断するのには、感情が先に働くと理性的判断がしにくいので、理性が先に動くべきで、感情は後からの方が、正しい判断をしやすい、というのが定説だったのですが、東京大学心理学教授信原幸弘によると、まず相手を心配するなど感情が働いて、次に理性が働くことが分かってきました(情動の哲学入門、勁草書房、2017年)。ということは、右脳型の日本人は、情緒的にまず反応し、次に左脳で理性的に判断するのが自然です。人間の脳がそのようにできているのです。感情が先、次に理性です。
15.右脳が優れていくと、動物脳のコントロールがしやすくなる
過剰に刺激された動物脳が動いていくと、怒りなどの激情が抑えられなくなり、トラブル、犯罪、終には戦争になります。強まった動物脳を鎮静させるための有力な方法は、右脳を強めることです。日本人の親しい人間関係、暖かさが連帯感となって、過剰な動物脳を抑制できるのです。
また、左脳の暴走は、理詰めの思考のあげく、紛争、戦争に導きますので、人のために尽くす右脳民族である日本人が、愛と和の文化で世界平和に役立つことは可能だと信じます。
16.右脳から左脳へ
トヨタのような日本の優秀な企業は、まず顧客の役に立つ製品を創ろう、という右脳の発想から出発しています。まず左脳でいいものをつくれば、当然売れる、という欧米の発想と全く違います。顧客に満足してもらうために、右脳を働かせ、次に左脳を最大限機能させて、世界一のものを創ってきました。左脳と右脳という脳全体が活性化されるので、最良の仕事ができるのです(篠浦伸禎、トヨタの脳の使い方、きれいねっと、2018)。
我々の人生も、まず右脳を満足させる周りの人の役に立つ感謝される仕事をする、恩義を大事にする、次に仕事のために左脳を懸命に働かせるのです。右脳は仲間を作ります。人間関係を円滑にします。仕事が生きがいになります。そして自分の人生のために、志を持ちます。